日本共産党

2004年12月7日(火)「しんぶん赤旗」

陸自幹部が改憲案

中谷 元防衛庁長官 依頼で作成

自民憲法調査会に提示


 自民党憲法調査会の「改正草案」起草委員長を務める中谷元・元防衛庁長官が、陸上自衛隊幕僚監部の幹部に改憲草案づくりを依頼、幹部側が十月二十日すぎに中谷氏に提出し、同二十二日の党憲法調査会に資料として示されていたことが、六日までにわかりました。国の基本である憲法の改定案づくりに自衛隊「制服組」を関与させたことは、憲法秩序にかかわる大問題であり、政府・自民党の責任がきびしく問われます。

国防義務、軍刑法など盛る

 改憲草案は、「軍隊の設置」や海外での武力行使を可能にする「集団的自衛権の行使」、国民の「国防義務」などを盛り込んでおり、自民党憲法調査会が十一月十七日に示した「憲法改正大綱(たたき台)」と内容が重なります。

 中谷氏が依頼していたのは、陸上自衛隊幕僚監部防衛部防衛課所属の二等陸佐。中谷氏に提案された改憲草案は、「憲法改正(安全保障関連)」と「憲法草案」(2面に全文)の二種類。「憲法改正」では、盛り込むべき事項の必要不可欠なものとして、▽侵略戦争の否認▽(自衛隊・自衛軍・国防軍)設置の明確な規定▽総理大臣の最高指揮権及び文民統制▽個別的自衛権及び集団的自衛権、並びに国連の集団的措置(集団安全保障)に基づく武力行使の容認▽国家緊急事態に関する規定――の五項目をあげています。さらに盛り込むのが望ましい規定として、国民の国防義務、軍刑法の制定、軍事裁判所の設置の三項目をあげています。

 「憲法草案」は、この八項目を八条十三項にわたって条文化。さらに、草案が実現すれば、集団的自衛権の行使で「『後方地域』あるいは『非戦闘地域』にかかわらず、米軍等への後方支援が可能」とし、「有志連合軍に参加し戦闘行動(アフガン、イラク等)」などに参戦できるとしています。

 また、「国連平和執行部隊に参加し、制裁措置等を実施(ソマリア等)」や「多国籍軍に参加し戦闘行動(湾岸多国籍軍等)」などに参加できるようになると記しています。

 中谷氏は、本紙の問い合わせに「私的に憲法改正について勉強をしているので、安全保障面でどのような点が(改正点として)挙げられるのか、また案文のイメージがどのようなものか親しい友人である陸幕幹部に相談して、まとめてもらった。党憲法調査会では私の個人的な意見としてのべた」と語っています。


市田書記局長が厳しく批判

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記者会見する市田書記局長=6日、国会内

 日本共産党の市田忠義書記局長は六日、国会内で記者会見し、中谷元・元防衛庁長官が陸上自衛隊幹部に改憲草案の作成を依頼した問題で、「中谷氏は、元防衛庁長官であると同時に、自民党の憲法改正案起草委員長だ。与党の改憲案づくりに現職自衛官を巻き込もうとしていること自体、自民党がどのような改憲を狙っているのかを雄弁に物語っている」と批判しました。

 市田氏は、陸自幹部の示した改憲案について、集団的自衛権の行使容認、軍隊の設置、国家緊急事態の布告、特別裁判所(軍事法廷)、国民の国防義務などが明記されていることを挙げ、「一言でいうと憲法九条の改悪を不動の前提にした上で、軍事当局者がより“使い勝手”が良いものに仕立て上げるためのものであることは明白だ」とのべました。

 その上で、「内容上の問題とあわせ、やり方自体も問題だ」として、「今度の問題は、自衛隊法が定めている自衛官の『政治的中立義務』に違反し、憲法九九条が厳しく求めている公務員の『憲法尊重擁護義務』違反の疑いが濃いものだ」と批判しました。

 また、細田博之官房長官が、この問題を「あくまでも個人間の依頼」と弁明したことについて、「単に個人間の問題ではない。学者・研究者に意見をきくということではなく、元防衛庁長官が現職の陸自幹部に依頼したものだ。事実を厳正に究明すべきだ」とのべました。



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