日本共産党

2004年11月29日(月)「しんぶん赤旗」

社会リポート

三井物産 排ガス装置データねつ造

甘かった東京都の検査


写真

三井物産製PM減少装置(全日本トラック協会パンフから)

 三井物産が首都圏一都三県の基準値を満たさないディーゼル車排ガス粒子状物質減少装置(DPF)を不正に販売していたことが明るみに出ましたが、偽データを見逃していた都のチェック体制もあらためて問われています。遠藤寿人記者

記録に立ち会わず

 東京都などは粒子状物質(PM)の基準値を満たさないディーゼル車の運行禁止を昨年十月から実施しています。基準値を満たすためにはDPFなどの減少装置を取り付ける必要があります。

販売台数1位

 三井物産が販売するDPFは100%子会社「ピュアース」(東京)が製造の「SOW―301B」。一台百万円前後で、これまで二万一千台を販売しシェアは一位を占めています。

 三井物産は二度にわたって虚偽の試験データを都に報告していました。

 二〇〇二年二月の装置指定申請と、同年七月の形状変更申請時です。その後、都職員が立ち会った〇三年一月の性能試験でも測定データを意図的に読みかえて、基準値をクリアしたように見せていました。

 しかし、実際にこの装置は、規制で決めたPM捕集率の七割から八割の捕集でした。

 データねつ造は、三井物産が「ピュアース」社を内部監査する過程で、三井物産の入社四年目程度の社員が虚偽報告を告白したのがきっかけでした。

 奇妙なのは、都職員が立ち会った昨年一月の排ガス性能試験です。

 規制開始後に、市民から「ディーゼル車の黒煙が減らない」と苦情が寄せられました。都がDPFの再検査を実施すると、三井物産のDPFが基準値を満たしていないことが分かりました。

 都側が三井物産側に説明を求めた結果、都職員の立ち会いのもとで性能試験が行われました。

 性能試験がどこで行われたのか。都や同社の資料では明らかにされていません。本紙の調べで子会社「ピュアース」と契約関係にある「長崎県」の民間企業の実験施設で行っていたことが分かりました。三井物産は、企業名などは「守秘義務がある」として公表していません。

 「粒子状物質減少装置指定実施要綱」によるとDPFを製造する装置メーカーは、指定に際して「公的機関」などで得られた実験データを申請する必要があります。

 三井物産広報によると「東京都の環境科学研究所など公的機関が込んでいたためできなかった」と説明します。

異例の対応で

 問題の性能試験は、三井物産社員と子会社社員で行われました。実験データ数値がその場で実数値より高い数値に意図的に読み替えられ、基準値をクリアしたようにみせかけられていました。

 都職員の立ち会いは性能試験が行われた施設の一階だけでした。データの記録が行われた二階には職員は立ち入っていないとしています。

 東京都が性能試験のため、わざわざ職員二人を、問題のDPF製造メーカーと契約関係にある長崎県の民間企業にまで派遣すること自体、異例の対応で、しかもチェックは甘かったのです。

 同社製DPFをバス二台に取り付けている平和交通(埼玉・川口)の須藤浩志社長は「DPFをつけても黒煙がいっこうに減らないのが現状。データねつ造と聞いても驚かない。規制する側がちゃんと調べているのか疑問だ」といいます。



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp