2004年11月24日(水)「しんぶん赤旗」
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大型店出店にかかわる法律として現行・まちづくり三法(別項)が施行されて五年目。郊外への大型店の“出店自由化”で、中心商店街や市街地の衰退に拍車がかかるなか、商工会議所など中小企業・商店街の全国団体がまちづくり三法の見直しを求める声をあげています。 大小島美和子記者
宮崎県宮崎市では、イオンが開発面積二十二万平方メートル、店舗面積七万七千平方メートルに、ジャスコを核として百五十店舗を入居させるショッピングセンター(SC)を計画。地元商店主らの「まちが破壊される」との声を押しきって出店が決まり、今年七月に建設着工がされています。
北海道苫小牧市でも、イオンが店舗面積三万六千平方メートル、映画館などサービス部門も含めると五万平方メートルのSC出店手続きを進め、地元からの百以上の意見を無視して、道知事が出店を計画どおりに認めました。ダイエーなど大型店を含め、JR苫小牧駅周辺の中心市街地への壊滅的な影響が懸念されています。
五年前に、中心商店街の外に敷地面積十三万平方メートル、店舗面積六万平方メートルのイオンSCが出店した岡山県倉敷市では、中心街にあった大型店三店のうち一店が二年前に撤退、今年十月になってもう一店が撤退を表明し、中心商店街も一時は空き店舗が三割にのぼるという「まち破壊」を体験しました。
歴史ある町並みと文化により、四季ごとの催しでまちの再生・活性化を図っている倉敷商店街振興連盟の西山敬二会長は「何百年もかけて築いてきたまちを、一企業の一つの出店で一気に壊すようなことが、許されていいのか」と訴えます。
大店立地法の「まちづくり指針」(別項)は今年度が見直しの年にあたり、現在、経済産業相の諮問機関である産業構造審議会流通部会と中小企業政策審議会商業部会による合同会議で、この問題が論議されています。このなかで、中小企業団体は三法見直しを強く要望しています。
商工会議所、全国商店街連合会など中小企業四団体は、同合同会議に向け「まちづくりに関する要望書」を連名で公表(ことし七月)。「まちづくり三法制定当初に期待された効果は得られず、全国の中心市街地は三法制定時よりさらにさびれている」として、大型店出店にかかわる「現行制度の総合的・抜本的な見直し」の早期検討を求めています。
会議のなかでも、日本商工会議所は「三法の総合的・抜本的見直しがなおざりになるようなことは絶対に回避すべき」として、法改定に強い意思を示しています。
専門店を代表する協同組合連合会日本専門店会連盟(日専連)の岩井滉理事長は、大型店の無秩序出店は「中心市街地の空洞化・荒廃」を招くなど、まちづくり三法の実際の運営がもたらした「社会的損失は計り知れない」と指摘。「中心市街地活性化に取り組んできたが、大規模な郊外出店が続くなかでは『焼け石に水』」と述べました。
全国商店街振興組合連合会の坪井明治副理事長は、同会の調査で「繁栄している」商店街はわずか2・3%、「停滞・衰退」との回答が96%という実態を紹介。
全国商工会連合会の寺田範雄専務理事は、まちづくり三法の現状に不満や制度に不備を感じる商工会は七―八割に上るとして、三法の見直しを「強く要望」しました。
審議会委員の原田英生流通経済大学教授は、日本は現在大型店規制がなにもない「エアポケット(空白)」状態に入っていると指摘。カリフォルニア州では一万平方メートル以上の大型店に、地元の雇用や経済、環境、社会への事前影響調査を求めるなど、建設抑制の動きが広がっていることを紹介しています。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)、中心市街地活性化法、改定都市計画法の総称。1998年6月の国会で大店立地法を制定した際に、政府・通産省が大規模小売店舗法(大店法)を廃止して大型店出店の商業上の調整を禁止する代わりに、中心街の活性化を図り、都市計画による大型店の誘導をすれば、中心商店街の活気は守れるとして制定しました。
まちづくり指針 大店立地法は、大型店の設置者が周辺住民の生活環境の保持に「配慮しなければならない」としており、その具体的内容を「指針」として別途定めました。指針は施行から5年目の今年度(2004年度)中をめどに見直すことが決まっています。