日本共産党

2004年11月22日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

郵政民営化

“採算重視”で地方切り捨て


 郵政公社を窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険の機能ごとに株式会社化しようとする郵政民営化。小泉首相は「改革の本丸」といいますが、郵便局の統廃合は地域共同体の維持に重大な支障を生じかねず、国民は不安を強めています。島根県仁多町と長野県中野市からリポートします。


「過疎促す」と住民 仁多町

島根県内8割の議会  現行堅持求め意見書

図

写真

郵便局長と懇談する中林よし子前衆院議員(左端)ら=12日、島根県仁多町

 中山間地が大半の島根県では「地域の郵便局がなくなるとさらに過疎化がすすむ」と住民の中に不安が広がっています。

 島根県では県内六十県市町村議会中、八割の四十八県市町村議会が九月議会までに郵政公社の「現行経営形態の堅持を求める」「民営化反対」の意見書を可決しています。

 数多くの神話や伝説に語り継がれ、仁多米の産地として有名な奥出雲の仁多町。人口は現在、八千六百人余で、六十五歳以上の人は32・3%と高齢化が深刻です。

 金融機関は町内三成に銀行と信用金庫の支店が。旧町村には農協の支所がありますが、統廃合の話が出ています。役場支所もないため、仁多・八代・阿井・亀嵩(集配局)、三沢・仁多三成(無集配局)の六郵便局が唯一の公共機関です。

 十二日、日本共産党の中林よし子前衆院議員と懇談した仁多郵便局の山本勝昭局長は話します。

 「地域では独居や老夫婦世帯があり、声かけしています。雪でも降ったら奥地に行くと『きのうから初めて人に会ったわ』ということになるんです。局員が雪を踏んで道を開けてあげたり、戸が開くようにしてあげたりしています」

 夫婦二人暮らしの男性(82)=町内三成=は「郵便さんは用がなくても家に寄り声をかけられます。友達みたいなもんだ。親切ですよ。年金をもらいに行くのはバイクです。民営化は反対です。局がなくなったりすれば大変。田舎に住む者がおらんようになる。いまのままでやってもらわんと」と不安を話します。

 議会には旧町村の五自治会長会会長から連名で民営化反対の要望書がだされ、議会は全会一致で意見書を可決しました。

 意見書は「民営化が行われれば過疎地では採算は望めず撤退するか、採算性重視の料金体系を採用するしかなく、ユニバーサルサービスは崩壊し、地方の切り捨てによる悪循環が進行することを危ぐする」と、民営化中止を強く求めています。

 山本局長は続けます。

 「公共性から企業性重視になると競争のなかで生き抜くことになるんです。目の前の仕事だけすればいいということになる。私らの仕事はお客さんと心が通わんとできません。どこまで求めていけばいいのか」

 「市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多用なサービスが安い料金で提供が可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる」。政府方針はこんな表現で、幻想を振りまきますが、民営化され、「採算重視」の株式会社になれば中山間地では住民の日常生活の支えがなくなるのは避けられません。島根県・桑原保夫記者


利用者に不便、職員は労働強化

長野・中野市議会 共産党提案で意見書可決

図

写真

農村地域の郵便局絞長野県中野市

 「特定郵便局は地域に尽くすことを大事にしているんですよ! お客さんが郵便局に早くみえたときには早めに対応したり、時には、時間外のやりくりもするようにしています。結構忙しいんですよ…」と中野市内の郵便局長さん。確かに訪ねると窓口に何人か待っている盛況ぶりでした。

 「お客さんを大事にしています」と胸を張って言うのも、地域に密接な郵便局の人たちならではの誇り。農村地域の郵便局で勤務したことのある人は、「農村では、三日に一度くらい郵便局に来て世間話をしていく年配の人もいる。こういうところでは郵便局は住民の『よりどころ』であり『相談相手』でもあります。民営化で郵便局がなくなったらどうなるか心配です。ぜひこのまま残してほしい」といいます。

 中野市牧ノ入に住む稲葉安江さん(71)は、いまも現金書留や振り込みなどは、車で五分の木島平村の郵便局を利用しています。「もし民営化でこの局がなくなれば倍以上時間をかけて飯山市に行かなければなりません」と訴えます。それに、地域には郵便ポストもありませんが、顔見知りの配達員は家の郵便受けに郵便物をはり付けておけば持って行ってくれます。「民営化になったらそれもできません。民営化は絶対にやめてほしい」と切実です。

他町ではギフト注文のノルマも

 他町の例ですが、郵便局が公社になって郵便配達職員の仕事は大がわりしました。「配達以外に『ギフト』の注文のノルマがあり、名前が職場にはり出され、成績が悪い職員は朝礼のときに名指しされることもある。完全民営化になったらどうなるか…」と職員たちは不安そうです。

 中野市議会では、二〇〇一年の六月市議会に日本共産党が「郵政三事業の現行堅持」の意見書案を提出しましたが、無所属=自民派などの反対で否決されました。また、今年の九月市議会では自民派の議員が紹介議員となった「郵政公社の現状存続」を求める請願書が提出され議会運営委員会で取り扱いを協議したところ、自民派議員から請願書の提出の過程などに問題があるとクレームがつき、結局、取り下げました。

郵便局幹部職員「世話になった」

 日本共産党市議団はこのまま放置できないと、私が提案者となり「郵政事業の公社経営堅持」を求める意見書(案)を社民・無所属、自民派議員など十人の賛成議員を募り議会最終日、(市議会ルールで、意見書提出期限が過ぎてしまったので)緊急動議として提出しました。公明党一人と自民派一人が反対しましたが、賛成多数で可決されました。

 こうしたことを通じ、ある郵便局の幹部職員は、「私は、共産党のみなさんとはこれまでつながりがありませんでしたが、今回のことではお世話になりました」と語っています。郵政民営化は、利用者にとっても、職員にとっても大問題です。民営化は絶対阻止しなければ、生まれ故郷で住めなくなる人もでると痛感しています。中野市議 青木豊一



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp