2004年11月21日(日)「しんぶん赤旗」
【ニューデリー=小玉純一】パキスタンのアジズ首相が二十三日から二日間インドを訪問しマンモハン・シン首相らと会談します。バングラデシュのダッカで一月に開かれる南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議を議長国として準備するための各国歴訪の一環。同時に、アジズ首相の初めての訪印であり、両国関係を改善するための包括的対話の第二ラウンドへつなげる重要な場になります。
会談では、両国が領有権をめぐって対立してきたカシミール問題での進展が注目されます。
パキスタンのムシャラフ大統領は先月下旬、新提案を明らかにしました。「カシミールの諸地域を特定した上で、両国が軍を撤退させ、地位を変更する」という内容で、地位については独立、印パ共同管理、国連管理の三つの方法があるとしています。パキスタンの従来の主張だった住民投票の実施にこだわらないことを示唆し、インド側には停戦ラインの国境化の立場に固執しないよう求めています。
これに対しインド側は、「包括的協議に公式に提案されるなら検討する」(ナトワル・シン外相)としています。インドは十一日、カシミールに配備している軍の削減を発表し、シン首相が十七日にジャム・カシミール州を訪問。まず約千人の部隊撤退を開始し、和平に積極的な姿勢を示しました。
二十五万人から四十万人といわれる同地方のインド軍全体の何人が削減されるかは明らかにされていませんが、パキスタン側は「緊張緩和と、対話の新しい環境をつくるもの」(カーン報道官)と歓迎しました。シン首相は「今後越境テロなどが抑止されるようなら、さらに部隊を削減する」と言明しています。
ただしシン首相は「国境や境界の変更はない」とも表明しており、パキスタン側はこうした対応では住民投票の要求は取り下げられないとけん制しています。
会談では、カシミール地方でインド側とパキスタン側を結ぶ直行バスの運行問題や、パキスタン経由でイランとインドを結ぶガス・パイプライン計画についても話し合われる見通しです。