日本共産党

2004年11月18日(木)「しんぶん赤旗」

「有志連合」次々崩壊

イラク情勢泥沼化


 米軍のファルージャ攻撃でイラク武装勢力との戦闘が各地に飛び火するなか、イラクに派兵していた国々で戦争への協力を見直し、部隊を撤退させる動きがあいついでいます。「有志連合」は米国主導の多国籍軍を正当化するために使われてきましたが、米国のもくろみは崩れつつあります。


派兵国の世論が動かした

表:イラク派兵国の現状

 ブッシュ米大統領はイラク戦争開始に当たり、国連安保理決議に基づく「合法性」を得ることができませんでした。そこで追求したのが「有志連合」の組織でした。米国は四十九カ国の「支持」を取り付けることに成功し、そのうち三十七カ国が何らかの形で派兵しました。

 英国、オーストラリア、日本、韓国などの伝統的な米国の同盟国以外の大半は、東欧諸国など米国との経済・政治関係の強化をもくろむ中小国家でした。

 しかし占領がイラク国民の抵抗にあい、情勢が混迷を深めるに従って「有志連合」の崩壊が始まっていきました。

 スペインでは戦争に協力していたアスナール政権が選挙で倒され、部隊を撤退。中南米諸国もそれに続きました。

 民間人が人質に取られたフィリピンでは「国民の命こそ守るべき国益」(アロヨ大統領)と部隊を撤退させました。

 部隊を派遣しなかったものの、「有志連合」に入っていたコスタリカでは、最高裁判所が支持を違憲と判断し、同国政府は米国に要求して「有志連合」リストから削除させました。

 派兵国の兵士、民間人に犠牲が増えると、派兵各国の世論は撤退に大きく傾きました。

 オランダも二〇〇五年三月までの撤退を決定しました。

 こうしたなか、「有志連合」は国連安保理決議によって「多国籍軍」となりました。しかし多国籍軍への参加国そのものが少なくなっているのが現実です。このため米国は「有志連合リスト」をホワイトハウスのホームページから削除しました。

自衛隊派兵延長は世界の流れに逆行

 日本の自衛隊の駐留期限が十二月十四日に切れます。小泉内閣は駐留の延長、あわよくば無期限の延長を目指しています。しかし、このことはイラク占領への無期限の加担につながり、イラク全国が戦闘状態となっている今、当初の派兵条件も崩れ、イラク人からは占領軍への協力と見られているのです。自衛隊の駐留継続は、イラクの現状から見ても世界の流れから見ても道理がありません。山田芳進記者

東欧諸国から撤退の動き

 【ベルリン=片岡正明】欧州に戦争協力の国を広げようと米国が強力にてこ入れしてきた東欧の派兵諸国が変わりつつあります。ハンガリー議会が十五日にイラク派兵部隊の年内撤退を決めたのをはじめ、ルーマニアやチェコの首相も早期撤退に言及しました。

 東欧は「有志連合」の重要な一角をなし、米国は「新しい欧州」と持ち上げました。しかし撤退を求める世論の高まりで、政府にもイラク戦争への協力を是正する動きが急速に広がっています。

 ハンガリーでは、十五日に駐留期限延長の政府案が議会で否決され、年内撤退が決まりました。ジュルチャニ首相は、今月初めに撤退を求める世論を念頭に置きながら「イラクで国民議会選挙が終わるまで残るのは国際的義務だ」とのべ、イラク派兵部隊を三月末までに撤退すると表明したばかりでしたが、議会の判断はこうした論法をも否定しました。

 同首相は「同盟国(米国)の期待通りにはならないが、国民の意思の方が重要だ」とのべ、議会の決定に従う意向を表明。最大野党、青年民主同盟(フィデス)のイシュトバン・シミンコ議員は「一月にイラクで選挙がおこなわれても秩序回復はままならない。国民の大多数の意見は派兵反対であり、議会の決定は国民世論に沿うものだ」と語り、イラク占領に協力する姿勢そのものを考え直すべきだと強調しました。

 チェコでは、チェコ・モラビア共産党などが即時撤退を訴える中、今月十四日に下院と上院でイラクに駐留している軍警察部隊百人の来年二月末までの駐留延長を採択しました。採決後、グロス首相は「イラクの選挙までが限界だ」と表明し、二月末での撤退を示唆しました。チェコはほかに野戦病院の軍医を送っていますが、首相は野戦病院関係者の撤退については触れませんでした。

 八百人の部隊を派兵しているルーマニアではナスタセ首相が十四日に、「イラク選挙後、情勢が安定すれば来年六月に撤退も可能だ」と表明しました。

 ポーランドは東欧最大の二千五百人の部隊を派遣し、多国籍軍中五番目の兵力です。他国部隊を含め八千人の指揮をとり、欧州で英国と並んで最大限に米国のイラク戦争協力をしてきました。しかし、国内での撤退を求める意見は常に七割前後と強く、政府は世論に押されてきました。即時撤退を求める右派野党勢力に加え、連立政府内でも労働連盟が「明確なスケジュールを定めた撤退」を要求。「二〇〇五年末までに撤退が可能だ」(クワシニエフスキ・ポーランド大統領)としつつ、来年一月から駐留部隊の段階的削減を実施します。

 ブルガリアでも世論は70%が撤退を求めています。これまで派兵した兵士のうち七人が死亡し、死亡兵士の両親が国防省を訴える裁判が起きています。十二月から部隊を10%以上削減し、四百八十三人から四百三十人にすることを決定しています。



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