日本共産党

2004年11月1日(月)「しんぶん赤旗」

なぜ悲劇が起こったのか

香田さん殺害事件


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 イラクで武装勢力にとらわれていた香田証生さんが殺害されました。無念です。武装組織の残酷なやりかたにとめどない怒りがわいてきます。

 たしかに、香田さんのイラク入りは不用意、無謀といわれても仕方ないでしょう。なぜイラクでたくさんの人が殺されるのか知りたい…という気持からといいますが、事情を知る人々の制止の言葉をなぜ聞き入れなかったのか、悔やまれます。

 イラク戦争が始まってからイラクで倒れた日本人は五人になります。二人の外交官に二人のジャーナリスト、そして香田さん。これらの人々を殺した蛮行への怒りの中で、私たちが考えるべきことは、なぜこれらの人々が無惨な死に追いこまれたのか、ではないでしょうか。

戦争と占領の中で

 言うまでもありませんが、五人の死はイラク戦争とその後の占領の中での出来事です。そして、私たちが忘れてならないのは、その中で、現在までに確認されただけで一万六千人以上のイラク市民が殺され、また殺され続けているというもう一つの重い事実です。

 この数字は国際民間機関(イラク・ボディー・カウント)の統計ですが、実際には数倍に及ぶというのが現地での見方です。英国の医学専門誌最近号に掲載された論文は、民間人死者は十万人に達すると推計しています。これら無辜(むこ)の市民を殺しているのは、米英軍とそれに加担する国々の軍です。

 その戦争が、実は米国政府当局がでっち上げたウソの情報に基づくものであることが、ついに米国自身の公式報告によっても明らかにされたのでした。イラク戦争の口実は完全に崩れ、不法な侵略戦争だということが明白になったのですが、そのウソで固めた侵略戦争と占領はいまも続き、その中でイラクの市民は殺され続けています。

侵略戦争への協力

 イラクの市民を含めて中東諸国の人々は、もともと日本に対してとても友好的です。しかし、その感情は今、急速に変わりつつあります。侵略戦争に協力する国、自衛隊という名の軍隊まで派遣してその戦争に加担している国だからです。

 香田さんを殺害した組織の要求は自衛隊撤退でした。多くのイラク市民はテロや人質誘拐・殺害を批判していますが、それらの人々は他方で、米軍の占領を非難し、日本の自衛隊派遣への批判を強めているのが現実です。

 小泉内閣は、「(香田さんの死は)痛恨のきわみ」といい「テロに屈しない」(町村外相)といいます。しかし、他方で、自衛隊派兵を考え直さず、米国の戦争に協力することしか考えない小泉内閣の姿勢からは、香田さんの死、イラクの市民の死に対する痛み、人の命を大事にする気持ちは伝わってきません。

 香田さんらの悲劇の背後にあるのは、侵略戦争そのものとそれに加担する日本の小泉政権の行動です。それが、香田さんが考えたかもしれない「なぜ」への答えであり、五人の方々の死の「なぜ」への回答ではないでしょうか。

 香田さんの死への悲しみとテロへの怒りの中で、私たち日本人は、いまなお毎日殺されつづけているイラクの人々のこと、そのイラクの人々の気持ち、日本という国への思いを深く考えてみようではありませんか。三浦一夫外信部長


イラクでは…

テロ非難しつつ、日本政府を批判

 「わたしたちイラク人は罪のない外国人を殺害するこのような残虐な行為を絶対受け入れません。これを受け入れるような者はイラク人ではありません。これは歴然としたテロであり、イラクの安定に役立たないどころか、それをますます遠のかせるだけです」

 日本人人質、香田証生さんの遺体が確認されたことを受けた本紙の電話取材に対し、バグダッド在住の通信技師、ガズワン・アクラムさん(26)はこう断言しました。

 バグダッドの民間調査機関、イラク戦略研究センターが今月初め、イラク全土で行った調査によると、同国民の90%が民間人の拉致、殺害に反対し、これを拒否しています。香田さん殺害は、占領下で塗炭の苦しみを強いられているイラク国民でさえ圧倒的多数が拒絶しているものであり、まさに蛮行の極みです。

 一方で、今回の最悪の事態に、イラク人のなかではあらためて、いまだに同国への攻撃を激化させる米軍と、これに従い自衛隊の駐留を続ける日本政府の責任を問う声も広がっています。

 バグダッドのイラク人医師、ゾヘール・アブデルハーディさん(54)は「日本人に限らず、外国人の拉致、殺害は米国による違法なイラク戦争がもたらしたものであり、米に責任があることは当然です」と語ったうえで、「日本の首相はイラク人のためなどといいながら、米国の占領を手助けするために自衛隊を派遣しました。私は一人のイラク人として、そのような自衛隊や外国軍がイラクに駐留することを望みません。人質の殺害で日本政府に責任があることも明白で、自衛隊は一刻も早く撤退すべきです」と訴えました。

 今回の香田さん殺害は、米軍がイラク中部ファルージャへの爆撃を強化、総攻撃の構えを表明し、女性や子どもなど民間人の死者が急増するなかで強行されました。今年四月に日本人五人が拘束された際も、米軍による約七百人といわれるファルージャ住民の大量虐殺が拘束事件を激化させたと広く指摘されました。

 四月の人質事件のさいに日本人解放に尽力したイラクのイスラム教スンニ派組織、イスラム聖職者協会のムハンマド・ファイディ報道官は今回の事態に関し次のように強調しました。

 「外国人の拉致、殺害を根絶させる道は、その根本原因である占領軍を撤退させることです。武装勢力に拉致の口実を与えてしまう状況が存在する限り、これと効果的にたたかうことはできません。占領軍がいなくなって初めて、イラクのすべての国民が団結して拉致を行う武装勢力に対処できるのです。占領こそ問題の根本であり、日本政府は撤退を決断すべきだと考えます」 (カイロ=小泉大介)



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