2004年10月30日(土)「しんぶん赤旗」
新潟県中越地震の強い揺れで、十両のうち八両が脱線した上越新幹線。高速走行中に車輪がレールから外れた原因をめぐって、交通や地震工学の専門家は、さまざまな要因を指摘し、新幹線の耐震安全性の抜本的な見直しを提起しています。
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曽根悟・工学院大教授(交通システム工学)は「直下型地震は上下の揺れが大きい。車両が突き上げられて飛び上がり、落下した際、脱線したと考えられる」と指摘。初めはいくつかの車軸がレールからずれ、高速走行するうちにレールを壊し、そのことにより残りの車軸もずれていった可能性があるといいます。
永瀬和彦・金沢工業大教授(鉄道システム工学)は「震度7なら、脱線の危険は高まる。新幹線でも在来線でも、大きな違いはない」と指摘します。気象庁によると、現場付近の震度は6強でしたが、長くのびた構造物のため高架橋上の揺れがさらに増幅されて強まった可能性があったとみています。
阪神大震災で被災した車両を調べた際も、高架橋上で脱線した率が高かったといいます。
脱線はしたものの転覆に至らなかった理由について、除雪用の側溝の存在が注目されていますが、永瀬教授は「脱線したことで車両がレール上に胴体着陸した。重心が低くなり、安定したのでは。上越新幹線など豪雪地帯を走る車両は雪害対策のため胴体下部がふくらんでおり、胴体着陸しやすい構造になっている」と説明します。
脱線した「とき325号」は、滝谷トンネルの新潟側出口を出て約五百メートルで脱線し始めたとされています。付近は傾斜地のため、この地点の高架橋柱は高さ約六メートルでしたが、約一・六キロ先の、車両が停止した地点では約十四メートル。
京大大学院工学研究科の清野純史助教授(地震工学)は「橋脚が長いと高架橋はゆっくり揺れ、短い部分は小刻みに揺れる。このためこの間の線路は蛇行するように動き、車両に不利な影響を与えた可能性がある」と指摘します。同助教授が現場を視察したところ、現場は田園地帯で地盤が緩かったことがわかりました。液状化の跡とみられる、地中の砂が地表に吹き出している場所も十数カ所確認しました。
強い地震では、長く延びた高架橋が地盤の影響を受け、大きく揺れた可能性もあります。航空・鉄道事故調査委員会が事故調査を始めていますが、全面的な検証と究明が迫られています。