2004年10月28日(木)「しんぶん赤旗」
三菱重工業や新日鉄など大手三十数社が橋梁(きょうりょう)工事の入札談合の疑いで公正取引委員会の立ち入り調査を受けるなど、大手企業の談合が繰り返されています。政府は、企業犯罪の取り締まりを強化するために独占禁止法改定案を閣議決定し、臨時国会に提出しました。改定案で抑止効果はあがるのでしょうか……。
金子豊弘記者
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改定案の焦点になったのが、違反企業に課される課徴金の引き上げでした。公取委は当初、現行算定率(大企業製造業で、違反対象の取引で得た売上高の6%を徴収)を二倍程度に引き上げることを目指していました。
公取委の調査によると、過去の入札談合などによる不当な値上げ率は平均16%にも達しています。談合を抑止するには二倍程度の引き上げは当然必要でした。
しかも、国際的水準からすると、二倍でも「甘い措置」といえます。たとえば、アメリカでは違反商品の売り上げの15%―80%の罰金がかかります。欧州連合(EU)では、会社の総売り上げの10%以下の制裁金が課せられています。実際、公取委の調べでは課徴金が課せられた金額は一社平均で、この三年間には日本とEUには七十三倍もの差がありました。
![]() 談合を取り締まる公正取引委員会=東京・千代田 区霞が関 |
公取委の当初案にたいしOECD(経済協力開発機構)は、「国際的なコンセンサスにより近づくものであるが、効果的に違反行為を抑止するためには未だ低すぎる」と指摘していました。
ところが、この当初案にたいしてさえも、日本経団連は反対を表明し、引き上げに激しく抵抗しました。これは、「企業が今後もルール違反を続けるという意思表明」(全国消費者団体連絡会)といえますが、公取委は自民党と財界の圧力におされ妥協。なんとか大企業製造業では、課徴金算定率を二けたに乗せたものの10%に。2ポイント値切られてしまいました。課徴金を掛ける対象期間も四年間への延長を目指していましたが、結局、三年間に据え置かれました。
また、繰り返し違反行為をおこなった企業には五割加算するものの、違反行為を早期(着手から二年未満)にやめた場合、算定率を二割減額する措置も新たに導入しました。
改定案では、違反行為をみずから明らかにする申告者に対し課徴金の減免制度を導入します。「自首」を促すことで、違反行為を早期にあぶり出し、摘発率の向上を目指すものです。すでに導入されているアメリカやEUでは、事件の摘発に効果をあげています。
改定案では、三番目の申告者までを減免の対象にしています。しかし、公取委が四月に発表した改定案の「概要」には、減免措置は第二申告者まででした。これにたいして日本経団連は、第三申告者以降についても三割の軽減を要求。改定案は財界の意向を受けたものになりました。
一方、改定案では、刑事告発のための調査権限を強化します。事件を調査するため必要がある場合には、裁判所の令状を持ち、関係者の営業所などに強制的に立ち入って検査・捜索が行えるようにします。また、必要な場合は、物件を差し押さえることもできるよう公取委の権限を強化しています。
課徴金 公正取引委員会が、価格カルテルや入札談合などによって企業が不当に得た利益から相当の金銭を徴収するもの。行政による違反企業への処分として一九七七年に導入されました。現行の算定率は九一年に改定したものです。