2004年10月23日(土)「しんぶん赤旗」
白日のもとにさらされた裏金の存在で、またもプロ野球のオーナーが辞任に追い込まれました。ことしのドラフトの目玉といわれている明大の一場靖弘投手に、横浜と阪神のスカウトが現金を渡していたことが判明し、両球団のオーナーが“退場”となったものです。
8月には、同投手に巨人スカウトが約200万円渡していたことが明らかになり、渡辺恒雄オーナーの辞任と同球団トップが解任されています。
日本学生野球憲章では、プロ球団と学生選手との関係を次のように定めています。
「選手または部員は、いかなる名義によるものであっても、……金品の支給、もしくは貸与を受け、またはその他の利益を受けることができない」
明らかな不正行為にもかかわらず、これまでも裏金の存在は公然の秘密といわれるほど常態化しています。これは大学生に限らず、高校生や社会人選手の間でも横行しています。
いい選手を獲得するため、なりふり構わない球団の姿勢には、「野球が社会の文化的公共財」(野球協約)という点に照らしても、そのモラルが厳しく問われます。
同時に、プロの側に、選手への金銭を渡すことを禁止する規定がないことが、この問題にメスが入らず、自らを律することができない原因になっています。
裏金が激化してきたのは、選手が球団を選ぶことができる「逆指名」をドラフトに導入したことがきっかけです。
ドラフトは1965年、選手の契約金の高騰を抑え、戦力の均衡をはかることを目的に導入されました。それが93年に「1球団2人まで選手が指名できる」ことに変えたため、ドラフトは形がい化。選手獲得競争の激化に拍車をかける結果になりました。
もし、球界全体が裏金の存在に汚染されているとすれば、現在のオーナーの“総辞職”という事態にもなりかねません。
こうした不正行為をなくすためには、選手会労組も提案しているウエーバー制の導入と、並行してフリーエージェント制(現行9年)の短縮が必要です。
同時に、今回の問題を、球界が解決を迫られている地域密着の努力、放映権の一括管理など、魅力あるプロ球界への改革の機会にすべきです。
それを実現していくため、現在の球団や機構だけでは限界があることは、この間の一連の球界再編問題で明らかになりました。選手会労組を含めた関係者全体の活発な論議の場と、それを実践する強力な指導力を持ったコミッショナーの存在が不可欠です。
(本紙スポーツ部記者)
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ウエーバー制 新人選手を選択するプロ野球のドラフト会議で、ペナントレースの下位球団に指名優先権が与えられる制度。