2004年10月18日(月)「しんぶん赤旗」
京都市で開かれた、日本で初めての国際アルツハイマー病協会(ADI、本部ロンドン)国際会議で十七日、アルツハイマー病を患う福岡市の越智俊二さん(57)が、詰め掛けた約二千人の参加者に講演しました。「自分が自分でなくなる不安で、心から笑うことができなかった」「病気になって家族の素晴らしさが分かった」と心中を訴えました。
ADI国際会議では二○○一年から患者本人が話すプログラムが始まり、多数の前で患者が心中を打ち明けるのは日本では初めてです。
越智さんは、十年前に物忘れの症状が始まりました。次第に仕事の大切な内容まで思い出せなくなり、職場の同僚と殴り合いのけんかになったこともありました。
「心身とも苦しく、仕事を続ける自信がなくなってしまい、無断で仕事を休んだ」。退職の意思を打ち明けると、妻は「やめてもいいよ」といいました。
退職後はデイケアサービス施設に通い、ほかの患者と交流します。「今までのつらさがうそのよう。何よりもほかの患者の笑顔を見るのが楽しみになった」と越智さん。妻は「お父さんは生活のことは考えなくてもいい。今度はわたしが働くから」と話しました。「ここまで支えてくれるのは家族。特に妻は、どうしてこんなに明るいのかと思うくらい明るい。優しくわたしのことを思ってくれた」。
「良い薬ができて、この病気を治してほしい。仕事ができるか自分では分からないが、働いて妻を楽させたい」「この病気は物を忘れるだけ。物忘れがあってもいろんなことができます。あきらめずに生きていけるように、安心して普通の暮らしをしていけるように、手助けをお願いします」。越智さんが締めくくると、会場を埋める参加者から大きな拍手が沸き起こりました。
会議はこの日で三日間の日程を終え、最終的に六十六の国と地域から四千人以上が集まりました。この中には二十人以上の患者も含まれます。会議では今後の行動計画をまとめるには至らず、次回会議に向けてたたき台となる「地域ぐるみの介護」など十の課題を示しました。