2004年10月13日(水)「しんぶん赤旗」
![]() 相談者の話を聞く比江嶋さん(右)と、相談会を手伝う日本共産党堅粕支部の浦照明さん(右から2人目) ![]() 2003年度の生活保護世帯は90万世帯を超え、過去最高となりました。保護開始の主な理由の中では、「失業」が年々増加傾向にあり、03年度は6.4%を占めています |
福岡市博多区。街に明かりがともるころ、生活相談会の会場がにわかに活気づきます。介護保険、年金、生活保護、医療、不況…。日本共産党福岡市議の比江嶋(ひえじま)俊和さんは九年半にわたる生活相談(毎月第三水曜日)を通して、必死に生きる人たちに心を寄せ続けます。堤 由紀子記者
午後六時。無料生活相談会の開始時刻までまだ一時間もありますが、比江嶋さんの事務所にはすでに相談者の姿がありました。さまざまな制度の資料の山をひっくり返して、解決法を探す比江嶋さん。かばんの中には、運動で勝ち取った介護保険料の減免申請書などがいつも入っています。
この日、最初の相談は生活保護でした。五十代後半の女性。本人は仕事も年金も預貯金もなく、二十代の息子と二人暮らしです。ところが、息子の月給は十三万円、保護費三万円を足しても十六万円にしかなりません。「このままではとても生活できない」と訴えました。
比江嶋「息子さんと世帯分離して独立すれば、保護費を満額もらえるけれど、新しくアパートを見つけなきゃならんねえ」
女性「でも、新しく部屋を借りるようなお金は…」
比江嶋「母子世帯だから、そういう時の貸し付けを一時的に活用することもできますよ」。黒いかばんから冊子を取り出して、制度の説明をしながら「若者の就職事情が悪いっていうのが問題だよね」。
鉄工所を経営していた六十代の男性。民事再生手続きをしたものの、破産。妻子を実家に帰らせ、「生活保護を受けて退院してくる母と暮らしたい」との相談でした。
男性「親族まで厳しい調査が入ると聞いていて、迷惑をかけるんじゃないかととても気がかりで…」
比江嶋「あれこれ聞かれるかもしれないけど、別世帯だし、ご兄弟もそれぞれの家族を養わなきゃいけないわけだから、ちゃんと生保は受けられますよ」
男性「実は妹の夫も最近は仕事がなくて、月に一週間しか働いてないんです」
比江嶋「ええっ! じゃ、あなたたちの面倒を見るどころじゃないじゃない」
「やっぱり生活保護は我慢する」と、再度相談に来た五十代の女性もいます。
女性「申請しようと思ったけど、『子どもを連れて来い』とかいろいろせからしか(面倒くさい)。『子どもに面倒を見てもらえ』って言われるに決まってる。だから、もらわないでがんばろうと思ってるんです」
比江嶋「長年働いて税金を払って苦労してきたんでしょ。それを元にして保護費が出てるんだから、なんにも恥ずかしいことはありません。生きるための当然の権利です」
女性「でも、今はもらわんとくわ。それより、今日はサラ金の借金をなんとかしたくて。健康食品を買うのに五十万円借りたの」
比江嶋「なーんでまた」
女性「体にいいからって」
比江嶋「生活を立て直さなきゃいけないなあ。あっちの部屋にいる弁護士さんにつなぐから」
最後の相談者は、くも膜下出血の後遺症で働けなくなった五十代の男性。地元の共産党員と一緒です。納付年数が足りなくて、年金はまだもらえない、郵貯の簡易保険でおりた三十万円も生活費に消えてしまったので、生活保護を受けたいとの相談でした。ただ、軽自動車があって…。
比江嶋「あー、車の所有は役所は認めんからねえ。私らは認めろといってるけど。車は処分しなきゃいかんならんかもなあ。でも、市営住宅の家賃減免もできるね。収入ないんだから、なんでも制度を使わないと」
この夜、福祉関係の相談で比江嶋さんが対応したのは七人、井下顕(あきら)弁護士の法律相談も含めると十一人でした。三時間ぶっ続けの生活相談会が終わりました。(つづく)