2004年10月5日(火)「しんぶん赤旗」
亜熱帯性のチョウやセミが日本列島を北上し、桜の開花が早まっている――日本ではここ百年の間に年平均気温が約一度上昇し、降水量が5%減るなど気候の変化が見られますが、生物の世界でも目立った変化が出てきています。身近な周辺の昆虫や植物の変化と地球温暖化の関係をこのほど、環境団体「地球環境と大気汚染を考える全国市民会議」(CASA、事務局・大阪市)がまとめました。
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CASAによると、日本での温暖化の検出事例としては、(1)ソメイヨシノ(桜)開花日が五十年で五日早まった(2)北海道での高山植物の減少(3)シラカシなど常緑広葉樹の分布拡大(4)チョウ、ガ、トンボ、セミの分布域の北上と南限での絶滅増(5)マガンの越冬地が北海道まで拡大(6)熱帯産の魚が大阪湾に出現――等の報告があります。
チョウのナガサキアゲハは一九四〇年代は山口、愛媛両県が北限でしたが、九五年には近畿のほぼ全域、二〇〇〇年には東海や関東南部でも観察されるようになりました。
かんきつ類を好むナガサキアゲハの場合、生理的性質(内因)を変えずに分布域が北上しているため、温暖化が作用しているのではないか、と見られています。
南方系のクマゼミも五〇年代は大阪でも珍しい存在でした。今では関東地方でも多く観察されています。クマゼミは比較的高温で乾燥した環境を好み、標高の低い明るい林や住宅地に見られます。しかし、クマゼミの北上は「温暖化というよりも都会のヒートアイランド現象と関係があるのではないか」とみる研究者もいます。
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〇一年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル=八八年に世界気象機関と国連環境計画で共同設立)の第三次報告では、生物生育期の長期化、動植物の極方向移動、一部動物の個体数減少、開花、昆虫の出現・鳥の産卵時期の早まりなど、気候変化に関連した変化が観測されている、と報告されています。
研究調査をまとめたCASAの三澤友子さんは、「分布域の変化は、昆虫自体の性質が変わる内的要因とエサの分布や気温などの変化といった外的要因があります。昆虫は移動や体温調節が可能なため、即温暖化といえるほど単純ではありません。しかし、体が小さいため、周囲の温度の影響は少なくないと考えられます」といいます。
このため、気温変化などの気象観測データだけに頼るのは不十分で、総合的指標として「生物季節データ」という自然生態系の変化を追った観測データと長期にわたる検出、監視(モニタリング)をしながら、変化の兆候を見逃さないようにしていく必要性を強調しています。