日本共産党

2004年10月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

元気な図書館

読書の秋


 読書の秋、最近の図書館は、どんな努力を重ね、住民や子どもたちの意欲、要望にこたえようとしているか−−。千葉県浦安市の図書館と、学校司書を市内の全小・中学校に配置している岡山市の話題をお伝えします。

いつでも、どこでも、だれでも

市民1人あたり 貸出し数日本一の“秘密”

千葉県浦安市

写真

森田正己館長(左)の案内で館内を視察する井原めぐみ浦安市議(右)=千葉県の浦安市立中央図書館

 東京ディズニーランドと、小説「青べか物語」(山本周五郎)で知られる街、千葉県浦安市。人口十万以上十五万人未満規模の市で、市民一人あたりの本の貸し出し数がトップの浦安市立中央図書館を訪ねました。

市民が生んだ

 一九八〇年四月、市民団体「こんな図書館がほしい会」が結成され、先進図書館の調査研究をすすめ、市議会への働きかけを開始。八三年三月に中央図書館が開館され、六つの分館もでき、ことし二十一年目です。「私も『こんな図書館がほしい会』の会員でした」という井原めぐみさん(日本共産党市議)とともに、注目を集める同図書館の森田正己館長に話を聞き、館内を案内していただきました。

 たしかに広い! 一階は開架式の閲覧室、レファレンス室、児童室まで段差がなく、幼児の背丈にあわせたいすと机も。職員が応対する机も車いすの人にちょうどよいくらいに低い。ここには、のべ床面積約五千平方メートルに六十万冊を収蔵、分館の収蔵分と合計すると約百万冊になります。

 森田さんは、八年前同図書館に異動になり、その後司書資格もとり、ことし四月から館長に。特徴点を語りつつ、「多数の市民の力、要望が図書館を発展、維持させてきた」といいます。

図書館の特徴

 特徴をいくつかまとめてみると……。

 (1)「いつでも、どこでも、だれでも」

 「いつでも、どこでも、だれでも」―中央図書館と六つの公民館内の分館に、市民が歩いて十分間ほどで行けるように、ネットワークをひろげてきました。そして未設置の地域には、車の移動図書館がでかけ、市内全域をカバーします。この結果、六割近くの市民が図書館を利用しており、スポーツ施設の利用率三割弱を大きく上回っています。一人あたりの貸しだし数は最近六年、年間十二―十三冊で同規模の自治体の全国一位。

 (2)図書購入費年1億円

 図書購入費は、年間おおむね一億円。千葉県立図書館(三館)の図書購入費に匹敵する額を維持してきました。年間五万冊の図書を新しく購入、リクエストにも応えています。ビデオ、CD、雑誌も別途購入されます。

 (3)正規職員39人全員が司書

 専門職制度を敷き、館長はじめ正規職員三十九人全員が司書の資格をもっています。こういう専門家集団がいるから、本の案内やレファレンスサービスも充実、ハンディキャップをもった人への本の宅配、対面朗読などもできるのです。開館時間も四月から火―金曜は午前十時―午後八時になりました。土・日は午後六時閉館。

 (4)明海大学図書館との連携も

 明海大学と市が協力、同大学図書館でも二十歳以上の市民は登録カードを持てば本を借りたり閲覧室を利用できる協力体制が三年前からスタート。団体貸し出し制度で、市立図書館の本を同大学図書館や多くの団体、学校、保育園、病院、特養ホーム等にも貸し出しています。三年前からビジネス支援にもとりくみ、セミナーの参加者がワークショップを立ち上げ、月一回、勉強会を続けています。「公共図書館として本来、市民に奉仕すべきことをきちんとやっていく一環です」と森田館長。

 (5)ブックスタート絵本講座

 「出生届を出すと、絵本がプレゼントされるだけでなく、四カ月児を対象にブックスタート絵本講座を開催しています。学童保育、保育園、学校に司書が出張して読み聞かせやブックトークも行っています」と女性司書。

井原市議は…

 井原市議は「ろうそくの灯をともしてのお話し会などとてもよかった」と話していました。孝岡楚田記者


「不思議だな」「知りたい」にすぐ

小中学校すべてに司書

岡山市   

 市内のすべての小・中学校に、専門の学校司書がいる岡山市。学校図書館は子どもたちが学校にいる時間はいつでも利用できるし、必要な本を探したり、わからないことを司書に尋ねたりもできます。

全国でもまれ

 本当なら日本中の学校に必要な職員ですが、専門職員が全校配置されている自治体は、全国的にみても沖縄県などいくつかの自治体に限られています。近年は「学校図書館に司書を」という住民たちの運動によって、大阪府箕面市、豊中市など近畿圏でも全校配置が進んでいます。

 一九五二年に初めて学校司書が入ってから半世紀、八九年に全校配置が完了して十五年を経た岡山の学校図書館は、子どもたちの毎日の生活にすっかり根付いています。

 子どもたちは「不思議だな」「もっと知りたい」と思ったことがあれば、どんどん図書館で調べていきます。読みたい本がその学校の図書館になくても大丈夫。予約をすれば、新しく購入したり、他館から借りてきたりして、希望の本が子どもたちに手渡されます。教科での調べ学習に必要な資料も、担当の教員と学校司書が連携をとって資料ぞろえをしていきます。

 子どもたちにとって「わからないことがあったら図書館へ」は、当たり前になっているのです。

絵本原画祭も

 さらに、子どもたちの豊かな学びと育ちを支えるために、学校図書館は地域や市民との協働も進めています。

 子どもたちが本に親しむ場を広げる取り組みの一環として、保護者などによるボランティアを受け入れ、その活動が学校教育に根付くようコーディネーター(調整役)の役割を果たし、子どもの文化を考える市民と協力して新しい活動を展開しています。

 今年の夏休みには、八日間にわたって、「第一回おかやま絵本原画祭」を取り組みました。このイベントは、学校司書が、子育て支援に取り組んでいる地域の市民に、「子どもたちの健やかな育ちを支えるために、市民と一緒にできることは何でもしたい」と話しかけたのがきっかけで実行委員会が生まれました。

 降矢ななさんの絵本二作の原画全点展示をはじめ、シンポジウム、講演会、ワークショップ、フィールドワーク、中高校生たちによるオープンスペースなど、盛りだくさんの企画に八日間で子どもとおとな五千人以上の参加者がありました。

市民の発案で

 十月二、三の両日開かれた「子どもの本ワールド」の一角には「学校の図書館司書と話してみよう」というコーナーが設けられました。学校司書のいる図書館の様子を多くの人に見てもらい、全県で学校司書配置を進めたいとの願いから、市民実行委員の発案でできたものです。宇原郁世=岡山市学校図書館司書



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