2004年10月1日(金)「しんぶん赤旗」
【パリ=浅田信幸】フランスが一九六〇年から九六年にかけて実施した核実験が人体に与えた影響について、パリの予審判事による捜査の開始が二十九日、明らかにされました。
予審捜査は、核実験に立ち会った退役軍人や民間人ら十一人と「核実験退役軍人協会」および「ムルロア・タトゥ・ポリネシア協会」の二組織による昨年十一月の告訴に基づいたものです。被告人不定のまま「過失致死」と「過失傷害」の容疑で今月二十日に開始されました。
告訴人らは告訴にあたり、核実験に立ち会った七百二十人の退役軍人のうち30%ががんにかかり、その率は一般の人の倍に達する事実を明らかにしていました。
がん発病率と放射線被ばくの因果関係について司法当局が解明作業を行うのは初めて。これまでには二〇〇一年に限定的な病理学的調査がポリネシアで行われただけで、同調査にかんして提出された議会報告書は、健康への影響は米国などと比べて「取るに足りない」としていました。
捜査開始が公表された二十九日、仏国防省はAFP通信に対し「真実を明らかにするために留保なく司法当局に協力する」との立場を表明しました。
フランスは六〇年から六六年までアルジェリアのサハラ砂漠で、六六年から九六年には南太平洋のポリネシアで、計二百十回の核爆発実験を実施しました。これに立ち会った人はのべ十五万人にのぼります。
告訴人らは実験にあたって「保護措置がとられなかった」と非難。シュベ弁護士は告訴の目的を「事実を立証し、責任を特定する」とともに、「実験に立ち会った軍人に補償のための基金をつくる」ことだとのべています。
また仏海外領土ポリネシアで六月、新たに行政長官に選出された非核独立政党・ポリネシア解放戦線(人民奉仕党)のオスカー・テマル議長は、フランスは同領土に対し「道義的負債」を負っており「核実験の影響を無視すべきではない」と指摘しています。