日本共産党

2004年9月28日(火)「しんぶん赤旗」

この顔ぶれで狙うもの

第二次小泉改造内閣


 27日発足した第二次小泉改造内閣と自民党新三役の顔ぶれからうかがえる狙いはなにかをみてみました。

改憲シフトくっきり

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 小泉首相自身が憲法九条の改定を公言し、自民党に改憲案の策定を指示するなど、改憲に大きく踏み出すなかで、自民党新三役、新閣僚の顔ぶれは、改憲シフトというべきものとなりました。

 新幹事長の武部勤氏は、二〇〇五年の改憲案策定を首相に進言した山崎拓前副総裁の側近です。新政調会長の与謝野馨氏は自民党憲法調査会の顧問を務め、党基本理念委員会の委員長として、新綱領原案を六月に答申。そのなかで冒頭の第一項に憲法改正、二項に教育基本法改正を明記しました。今年四月の訪米の際の講演で「私は一貫して改憲論者だった」とのべた安倍晋三氏は幹事長代理として残りました。

 新閣僚には、自民、公明、民主三党の改憲派議員でつくる「憲法調査推進議員連盟」のメンバーがそろいました。同連盟の幹事長代理の町村信孝氏、役員の尾辻秀久氏のほか、麻生太郎、小池百合子、大野功統、村田吉隆、島村宜伸、村上誠一郎、棚橋泰文、伊藤達也、中山成彬の各氏が入閣しています。

 なかでも新防衛庁長官の大野功統氏は二月の衆院予算委員会で、「政治家同士が十分議論して、集団的自衛権のあり方について決めていく。政治のリーダーシップで憲法改正の道筋をつけていくべきだ」と発言。九条改憲を明言しています。

消費税増税へ「道筋」

 消費税増税の〇七年度実施へ道筋をつける姿勢を鮮明にしたのが、谷垣財務相と竹中経済財政担当相の留任です。

 小泉首相は「在任中は引き上げない」としつつも、「与野党で早く協議を始めたほうがいい」と増税論議をすすめる姿勢を表明。細田官房長官は最近、任期中にも増税計画を決めることが「あり得る」とのべています。

 すでに財界も民主党も〇七年度増税で足並みをそろえているもとで、増税計画にいっそうの拍車をかける姿勢です。

 前回の就任時「税率引き上げについて議論を積み重ねていきたい」とのべた谷垣氏は、「歳入と歳出のバランスが必要」などとのべ、「財政再建」を口実にした増税論を展開してきました。

 最近も小泉首相に「がんがん前に出ろ。サンドバッグになれ」とハッパをかけられ、今回の就任会見でも「積極的な議論を積み重ねて道筋をつけていく」とのべました。

 竹中氏は「消費税は最低でも14%」(『みんなの経済学』)が持論。

 社会保障の「財源」について「みんなが少しずつ負担する(のがいい)」と繰り返しのべ、財界人らを集めた「社会保障の在り方に関する懇談会」で、消費税増税の議論を呼びかけています。

 財政危機の原因であるムダな公共事業や大企業への減税などにはメスを入れず、庶民増税で穴埋めすることは本末転倒です。大企業などにもヨーロッパ並みに応分の負担を求めれば、消費税に頼らなくても社会保障の財源は生み出せます。

アジア軽視のタカ派起用

 小泉内閣は二〇〇一年四月の発足以来、イラク戦争など無法を繰り返すブッシュ米政権のもとで対米追随をいっそう深める一方、アジア諸国との関係にはきしみがたえません。なにより首相自身の靖国神社参拝が、中国、韓国をはじめとするアジア諸国からきびしい批判をまねき、ことに対中外交では、両国首脳の相互訪問がいまだに実現していません。

 こうしたなか、党内きってのタカ派である町村信孝氏の新外相起用が新たな波紋を広げることは必至です。町村氏は森内閣の文部科学相として、日本の侵略戦争を美化し、歴史をゆがめる「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書を検定合格としました。

 このほか、総務相留任の麻生太郎氏は〇三年六月、「創氏改名は朝鮮人が望んだ」と発言し、歴史をわい曲するものと批判を受けました。環境相留任の小池百合子氏は「歴史教科書問題を考える超党派の会」の役員で、八月十五日に靖国神社を参拝しています。

 町村氏は就任の記者会見で「近隣諸国との関係」を外交の重要事項としてあげましたが、それを悪化させてきた首相と新閣僚のもとでは現状打開の見通しはありません。

 また小泉首相は、川口順子前外相を外交問題の補佐官、山崎拓自民党前副総裁を特命事項担当の補佐官に任命しました。山崎氏の「特命事項」は明確にされていませんが、米軍再編問題ともいわれています。小泉外交を担ってきた川口氏の起用をみても、対米追随、アジア軽視という小泉内閣のこれまでの外交政策をあらためようとはしていません。

郵政民営化へ「布陣」

 「改革の本丸」と呼ぶ郵政民営化。担当相は、所管大臣ながら民営化の形態について「異論」を唱える麻生総務相ではなく、経済財政諮問会議で主導役を務めた竹中氏をすえ、党内の「反対」派に実施への「決意」を示す形となりました。

 しかし、郵政民営化は大銀行や生保にもうけ口を提供するために郵貯や簡保を解体し、郵便サービスも切り下げるもので「改革」どころか改悪そのものです。そのため民営化の目的に疑問を持つ国民が大多数です。

 来年度予算で小泉内閣がねらうのが、年金改悪に続く介護保険や生活保護など社会保障の改悪、「三位一体改革」による地方への国庫補助金や地方交付税の削減です。

 尾辻厚労相は就任会見で「介護保険見直しは重要課題の一つ」とのべ、給付削減につながる見直しに意欲を示しました。

 社会保障の改悪をねらう「社会保障の在り方に関する懇談会」に閣僚から出席している竹中経財相は、団塊の世代を「イナゴ世代」呼ばわりし、その世代が高齢者になることを「厄介者」扱い。福祉切り捨てを公言してはばかりません。

 「三位一体改革」をめぐっては今年度、大幅な補助金と交付税削減にたいし自治体が猛反対。税源移譲を「約束」して補助金削減リストを自治体側に出させるまで「修復」したばかり。そのため麻生氏を留任させて地方の支持をつなぎとめる一方で、交付税の財源保障機能の廃止を主張する谷垣氏を財務相に留任。地方財政の切り捨てをすすめたい考えです。



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