日本共産党

2004年9月27日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

自信ふくらむパン屋さん

東京三鷹で開店

働く引きこもりの青年たち


 香ばしい香りと、日だまりの優しさ、そして仕事の厳しさをスパイスに…。ここは東京・三鷹市のパン屋さん「風のすみか」。引きこもりなどの青年たちが自立していくために働き学ぶ場として二十五日、オープンしました。竹本 恵子記者

 井の頭公園にそった住宅街に、「風のすみか」はあります。店舗の二、三階は約五十人の不登校や、引きこもりの子ども・青年が通う居場所「コスモ」。ここにくる青年の自立支援や働く場所づくりを―という思いから「風のすみか」の立ち上げは進んできました。

半信半疑

 店内は、天然酵母を使ったメロンパンや国産のライ麦パンが並びます。

 「パンをうまく袋に入れられなくて、緊張しちゃって」と、レジに立ったヤスコさん(18)。

 和菓子屋でアルバイトをしたことはありますが、三日で辞めてしまいました。「手の抜き方がわからないんです。若いからすぐ覚えられるわよっていわれると、やりすぎちゃって。間違えると自分はダメなんだって思った。ここなら、知ってる人がいるし、間違えながら覚えればいいんだっていってくれる」

 長い間引きこもりだった植木俊介さん(23)は、レストランで働いた経験を生かして、工房でもくもくとパンを焼いています。「最初は半信半疑だった。でも、工房ができて本当にやる気なんだと思った。働く場所づくりという新しいものを生み出す場にいることがうれしい」

 学生時代に「コスモ」のボランティアとしてかかわり、スタッフになった浅野由佳さん(26)。工房の中核として周りに指示を出します。

 これまで「頑張ってきな」と、仕事に送り出してもしんどくなって帰ってくる青年たちを何人もみてきました。

 「今すぐ使える人間だけを求める世の中。もっと安心して働ける場所があればと思った」。高校時代、受験や人間関係などの生きづらさを感じたことから、パン屋めぐりやパン作りにはまったという浅野さん。著名なパン屋の社長に手紙を書き、自身がパン屋の研修も体験し、企画を引っ張ってきました。

 最初は、「パン屋はもうからない」といっていた社長さんが、その熱意に「ここにしかないパン屋を地域の人とつくればつぶれない」とメッセージをくれました。

試食100人

 地域の人の顔が見えるパン屋さんを目指すことになりました。「高齢者にパンを届けたり、生活を考えてあげられるパン屋に」「仲間がつくった作物を使おう」。百人の市民にパンの試食をしてもらいました。

 あんぱんのあんをつくるのは、お母さんたちです。

 その一人。平松治代さん(49)は、「青年たちが楽しそうに働くのがうれしい」といいます。今は専門学校生になった娘は中学のとき不登校になりました。「一生働けないと思っていた娘ですが、あるパン屋さんで働かせてもらって自信がつきました。そこの主人は『だんだんミホちゃんがわかってきたぞ』といって、娘の人柄をわかろうとしてくれたんです。利益につながるかどうかで判断されがちだから、私もうれしくて」。若者を見守り育てるおとなになりたいと思っています。

 オープンの予行演習をした二十二日。たくさんの缶ジュースの差し入れがありました。

 一年前から「コスモ」の農作業のボランティアをしてきた海野健太郎さん(27)からです。ボランティアをするようになって正社員の仕事を辞めました。「時間と数字に追われる生活で、この先に何があるんだろうって疑問に思って。ここで、子どもや青年と農作業をして、とれたてのトマトを服でふいて食べたりするうち、こんな生活があるんだと思った」

 夜中までバイトをする生活ですが、応援のため休みをとって訪れました。

 あてにし、あてにされ、人間らしく働ける道を模索しています。

働く人自身が仕事つくる

 「風のすみか」をたちあげたNPO文化学習協同ネットワーク代表の佐藤洋作さん

 「仕事を通じて人が学び成長することを保障するのは、企業の責任でもあります。生き生き働けるしくみができれば、引きこもりの青年たちはまじめな働き手です。ヨーロッパでは青年の就労のために、働く人自身が仕事をたちあげる運動が広がっています。この企画は、引きこもりの青年たちの働き場をつくりだすだけでなく、青年の生き方働き方をつくり出していくものにしたい」


お悩みHunter

だらしない男ばかり出会いがなく独身…

「いい人」のイメージ広げて

  独身。結婚した友達は、夫の暴力で離婚したり苦労している話ばかり。周りの男たちは、女性・金銭問題などだらしなくて、出会いもありません。ミュージシャンの追っかけをしていますが、「このままでいいのか」と仲間と話しています。恋愛・結婚をあきらめたわけではないのです。(ワン子 30歳。東京・足立区)

  あなたは男性を見る目が厳しいのでしょうか。三十歳という年齢から、結婚を意識して、相手をチェックしてしまうのかもしれません。

 欠点だけが先に見えると味わい深い出会いができなくなります。

 現実に人と出会い、親密になるというのは、絵に描いたようなイメージどおりにはいきません。人は欠点があって当たり前。長短ある人とおりあいをつけていくのも、恋愛です。

 だからといって暴力に耐えろというわけではありません。でも、恋愛には、悩みや苦しみをともなうエネルギーが必要です。

 出会いが少ないということですが、だれかと急接近というようなハデな出会いはなくても、そばにいる人に気付かないでいる可能性もあるのではないでしょうか。いい人のイメージを広げてみましょう。

 一見魅力がないように見える人に、魅力があったりするものです。

 また、人と踏みこんで付き合えないのは、自分を主張できず、対人関係が怖いというときもあります。

 いずれにせよ、自分を再構築するために、生活をかえてみましょう。「このままでいいの」と、自分もしりすぼみだと感じているなら、行動範囲を広げて、自分が生き生きできるよう努力してみる。自分がかわるなかで、周りの風景も変わってくるかもしれません。

 精神科医 上村 順子さん 山口大学医学部卒。代々木病院、松沢病院などで勤務。99年からめだかメンタルクリニック院長。



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