日本共産党

2004年9月22日(水)「しんぶん赤旗」

ユドヨノ氏が当選確実

インドネシア大統領選

現職メガワティ氏に大差


 インドネシアで二十日に実施された史上初の直接選挙による大統領選挙の決選投票の開票がすすみ、ユドヨノ前政治・治安担当調整相がメガワティ現大統領を大差でリードして当選を確実にし、政権交代の見通しとなりました。

 総選挙委員会が、二十一日午前に発表した推定開票率49・9%の段階の集計状況では、ユドヨノ氏が60・2%を獲得する一方、メガワティ氏は39・8%の得票にとどまっています。

 選挙戦では、メガワティ大統領が四月の総選挙で選ばれた新国会議席の約六割を抱える七党の支持を集め、約三年二カ月の実績から「安定と発展」を訴えてきました。

 ユドヨノ氏は自らが党首の新政党・民主党などを含む約二割の新国会議員の支持をもとに、メディアに頻繁に登場してテロ対策など治安面で弱い国を立て直す「強い指導者」の印象を国民に広げてきました。

 ユドヨノ氏は、国軍仕官学校卒業後、米ウェブスター大学で修士号(経営学)を取得。国軍のジャカルタ軍管区参謀長やボスニアでの国連停戦監視部隊の指揮官を務め、ワヒド、メガワティ両政権で政治・治安担当調整相を歴任しました。

 大統領直接選挙は、一九九八年五月のスハルト独裁崩壊後にすすめられてきた政治制度の一連の民主化の仕上げともいえます。

 大統領決選投票の確定結果は十月五日に発表され、同二十日に就任式がおこなわれる予定です。大統領の任期は五年で三選禁止です。


解説

「改革」望む国民意識反映

旧体制との関係憂慮の声も

 インドネシア初の大統領直接選挙の決選投票で、ユドヨノ前政治・治安担当調整相が、現職のメガワティ大統領を大きくリードして当選を確実にしたのは、「変化と改革の推進」を強く望む有権者の気持ちを反映したものといえます。

 同時に今回の選挙は大きな衝突もなく平和的におこなわれ、選挙による政権交代を可能にしました。軍事独裁政権を敷いたスハルト退陣後の政治制度の民主化が国民から支持され、民主主義が社会的にも定着していることが示されました。

 メガワティ氏は二〇〇一年七月、ワヒド大統領が不正資金疑惑などを理由に解任されたため副大統領から大統領に就任。「独立の父」といわれる故スカルノ初代大統領の長女でもある同氏は、スハルト時代に抑圧されたため、国民は民主的改革に期待を寄せました。

 メガワティ大統領は、イラク戦争や米国の単独行動主義に反対し、国際紛争を国連中心で平和的に多国間で解決する立場を貫き、非同盟外交をすすめてきました。

 その一方で、内政面では国際通貨基金(IMF)が押しつけた緊縮財政と民営化、石油や公共料金値上げなどの政策を受け入れ、犠牲は国民に転嫁されました。輸出増などで経済成長率は少し伸びたものの、労働力人口の40%が失業もしくは半失業という深刻な状況は改善されず、物価高と雇用不安に国民の不満は高まっていました。縁故政治や汚職・腐敗には十分にメスを入れられませんでした。

 また、二〇〇二年十月のバリ島爆弾テロ以後、続発するテロ事件に効果的な対応がとられませんでした。

 これにたいしユドヨノ氏は、「テロや汚職とたたかい、停滞した経済を活性化して雇用を増やす」と「変化への選択」を訴え、国民の現状への不満を吸収しました。

 しかし、「二人の政策や綱領は同じ」(ロイター通信)で、両者の違いは政治手法や国民への訴え方にあるとの指摘もあります。

 「ユドヨノ氏は軍人として旧スハルト体制にかかわった。大統領になれば、スハルト時代と形は違ってもよく似た政治システムを導入するかもしれない」(自主労組のレクソン・シラバン議長)と憂慮する声もあります。

 ユドヨノ氏が大統領として国民の新たな期待に応えられるかどうかは今後の課題です。宮崎清明記者



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