2004年9月22日(水)「しんぶん赤旗」
日本歯科医師連盟(日歯連)の事件以前に、迂回(うかい)献金が大きな問題になったのはゼネコン汚職(一九九三年―九四年)でした。(迂回献金の流れは別図参照)
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当時、東京地検特捜部は迂回献金についてかなりの捜査をおこないながらついに立件しませんでした。この結果、逆に、「迂回献金には検察も踏み込めない」という“安心感”を政界に広げる結果になったのです。
問題になったのは、当時自民党前衆院議員、現在は民主党参院議員の渡辺秀央元郵政相にたいするゼネコン大手、鹿島からの献金でした。
――鹿島は、一九八八年から一九九一年の四年間、毎年盆暮れに五百万円ずつ年間一千万円、計四千万円を自民党の政治資金団体、国民政治協会の銀行口座に振り込んだ。そのつど、渡辺氏側に連絡した。
――国民政治協会に献金された五百万円は自民党に移動。振り込み当日か翌日に自民党本部から組織活動費として各五百万円、計四千万円が渡辺氏に支出された。
――鹿島は、渡辺氏が顧問をつとめる民間企業からのビル建設受注で渡辺氏への献金を計画。政治資金規正法の年間寄付制限額を大きく超えたことなどから国民政治協会を経由した迂回献金とした。
これらの事情が明らかになり、捜査当局は「国民政治協会などを経由した献金ロンダリング(資金洗浄)は見過ごせない」と政治資金規正法違反での捜査を検討した、と当時報道されています。
しかし、結果は、立件せず。刑事責任追及には、自民党幹部の事情聴取なども必要で、政治資金規正法では罪に問いにくい――などという判断だった、といいます。
「企業→国民政治協会→自民党本部→政治家」と迂回した献金は、それぞれ個々の段階では政治資金規正法にそって報告されています。しかし、全体がひとつの金の流れだということを追及するには、自民党本部が壁になってしまうのです。
当時、金権腐敗事件があいつぐなか、細川連立内閣は「政治改革」と称して、小選挙区制や政党助成金の導入、政治資金規正法「改正」などを国会に持ち出しました。そのさい迂回献金も論点のひとつでしたが、当時の佐藤観樹自治相(前民主党衆院議員)などは「迂回献金は防止できない」と答弁していました。
それから十年。今回の日歯連事件でも検察は迂回献金が「事件の本質のひとつ」(検察幹部)とみていました。日歯連は族議員らへの迂回献金を日常的におこなっていました。なかには、日歯連の要望を受けて厚生労働省へ働きかけた自民党の佐藤勉元厚生労働政務官への五百万円もありました。わいろ性が問題になったこの献金もふくめ迂回献金は今回も立件されませんでした。
自民党国会議員の元秘書は「迂回献金が抜け道になっているのは自民党の常識だ。かつて自民党議員として迂回献金を知りながらいま民主党にいる議員もいる。自民党だけの問題ではない」と語ります。闇の政治資金のひとつである迂回献金。今こそメスを入れるときです。(つづく)