2004年9月22日(水)「しんぶん赤旗」
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栃木県小山市で幼い兄弟が、父親の同居人に誘拐・殺害された事件は、虐待事件としても改めて大きな問題を投げかけました。相次ぐ虐待事件から、なぜ子どもを救えないのか―。急増する虐待と、その対応に追いつかない実態が浮かび上がってきます。竹本恵子記者
虐待される兄弟を一時保護した県南児童相談所の若林勝治所長は、十七日の記者会見で「(虐待していた容疑者宅を)訪問すべきだった」「判断がまちがっていた」とのべ、児童相談所の責任を認めました。
児童相談所の問題については、厚生労働省も虐待防止に向けた対策の一番目に、体制強化をあげ、問題を指摘していました。今年の二月、厚生労働省は、児童虐待防止法施行から二年半の間につかんだ百二十五件(百二十七人)の虐待死亡例を検証し、対策をとりまとめています。そのなかで、児童相談所がかかわっていながら死亡した例は19・2%あり、保健・医療、福祉、学校、警察などの関係機関がかかわった例は67・2%。あわせると86・4%にものぼっています。
こうした結果から厚生労働省は、児童相談所などの相談体制の強化をあげ(1)児童福祉司の子どもの状況にあった最適な配置(2)多様な人材確保(3)児童相談所内の複眼的視点を持った組織的な対応の徹底―などを求めました。
しかし、教訓は、生かされませんでした。
急増する虐待相談や通報に、対応しきれない児童相談所の実態が、大きな問題です。〇三年に全国の児童相談所が処理した虐待件数は、二万六千五百七十三件で九〇年の二十五倍。栃木県でも八年間で四倍近くに増えています。
これに対応する児童相談所と児童福祉司の数は、国の基準から見ても少ないのが現実です。児童相談所の国の基準(児童相談所運営指針)は、人口五十万人に最低一カ所程度。しかし、全国的には基準より30%も下回っています。
人口二百万人をこえる栃木県の場合、最低四カ所は必要ですが、実際は三カ所しかありません。
相談に対応する児童福祉司の数は、「全国の自治体の55%が基準を下回っている」(厚労省)といいます。
栃木県はこのなかに入っていました。事件があった県南児童相談所は常勤の児童福祉司が八人、県北児相六人、中央児相十一人の計二十五人で、人口八万人に一人の割合。栃木県の配置は、今年度の基準「人口六万八千人に一人」に照らして立ち遅れています。
虐待だけでなく非行や養育困難、障害、不登校…子どもにかんするあらゆる相談を扱っていることを考えれば、過密な状況が浮かび上がります。
児童福祉司が基準を下回っている背景には、児童福祉法施行令に定めた児童福祉司の配置基準が「人口十万―十三万人に一人」とされたまま、四十年以上も改められていない問題があります。そのため、児童福祉司の人員増が、自治体の姿勢に任されているのです。
この古い基準を子ども人口あたりにすると一万数千人に一人になり、アメリカの二千数百人に一人、イギリス五千人に一人、ドイツ九百人に一人にくらべ、突出して遅れていると、研究者らは指摘します。
全国児童相談所長会などさまざまな団体がせめて「五万人に一人」に改めるよう求めてきました。
改正児童虐待防止法では、虐待の早期発見や虐待を受けた児童の迅速かつ適切な保護のために、関係機関や民間団体の連携の強化、虐待防止のための必要な体制の整備に努めるなど、国や自治体の責任を明確にしました。
事件を繰り返さないために…。おとな一人ひとりが子どもに心を寄せ、できる限りのことをするのはもちろん、虐待防止にたいする自治体と国の責任が問われています。