日本共産党

2004年9月18日(土)「しんぶん赤旗」

米大統領

イラク戦争再び正当化

アナン発言に居直る


 ブッシュ米大統領は十六日、遊説先のミネソタ州ブレーンで、イラク戦争の正当性を強調し、「イラク戦争は国連憲章上違法だ」とのアナン国連事務総長の前日の発言に反論しました。イラク戦争を支持した諸国政府もアナン発言に反論。二十一日からの国連総会一般討論を前に、イラク戦争の正当性をめぐる国際論争が再燃しています。

 ブッシュ氏はアナン発言に直接言及しないものの、「フセイン(元イラク大統領)が武装解除しなければ深刻な結果に直面するとの決議を国連安保理は全会一致で採択した」「国際社会はイラクに査察官を送った。しかしフセインは彼らを欺き続けた。だから私は外交は失敗したと判断し、この国を守る行動に出たのだ」と釈明しました。

 ブッシュ氏はまた、イラクの大量破壊兵器が発見されなかった問題にも言及。「われわれ皆がそこにあると思っていた(兵器の)備蓄は発見しなかったが、彼がそれらの兵器をつくる能力をもっていることは知っている」とし、イラク攻撃を正当化しました。

 イラク戦争を支持し、派兵した英国、オーストラリア、ブルガリア、ポーランドの各政府もアナン発言への反論に加わりました。

 オーストラリアのハワード首相は、同発言を拒否するだけでなく、重大な危機に対して行動できない「まひした」組織だと国連を非難。イラク戦争は「完全に合法的なもの」だと述べました。


解説

安保理決議では戦争正当化できず

 ブッシュ大統領は、「イラク戦争は違法だ」としたアナン国連事務総長への反論として、二〇〇二年十一月八日に採択された国連安保理決議一四四一を引き合いに出しました。しかし、この決議でイラク戦争を正当化することはできません。

 同決議が安保理で採択された直後、安保理常任理事国のフランス、ロシア、中国の三カ国は同決議に関する共同声明を発表。決議が「(イラクに対する)武力行使におけるすべての自動性を排除している」ことを評価するとともに、「安保理において次にとられる措置が決定される」ことを強調しました。

 ネグロポンテ米国連大使(当時)もまた、同決議には「武力行使に関して『隠された引き金』も『自動性』も含まれていない」と発言。イラクが武装解除に応じない場合にも、自動的に対イラク戦争を容認するものではないと明言しました。

 安保理メンバー国の各国大使も、この点を確認。自動的に武力攻撃を容認しないことが全会一致による採択の条件となっていることを示しました。

 福田官房長官(当時)も十一月十一日、日本共産党の木島日出夫衆院議員(当時)の質問に対し、「米国代表も、武力行使につながる隠れた引き金はないと述べている」と、ネグロポンテ発言を引用。決議が自動的に米軍の武力行使を容認しないとの認識を示しました。

 決議一四四一がイラクへの武力行使をそのまま容認するものでなかったからこそ、米国はその後、英国やスペインとともに、対イラク戦争容認の新たな安保理決議案の採択を最後まで追求し続けたのです。しかし、理事国の多数が反対し、採択が不可能と判明したため、米国は昨年三月、新たな安保理決議なしでイラク戦争を強行せざるをえませんでした。

 ブッシュ大統領が今回、決議一四四一を引用してアナン氏に反論したことは、イラク戦争の無法ぶりを改めてさらけ出す結果となっています。鎌塚由美記者



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