日本共産党

2004年9月10日(金)「しんぶん赤旗」

CS放送朝日ニュースター 志位委員長語る(大要)

二中総、ヘリ事故と米軍基地、政治とカネの問題などについて


 日本共産党の志位和夫委員長は、七日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、第二回中央委員会総会の意義、沖縄米軍ヘリ墜落問題、米軍再編問題、臨時国会開会と政治とカネの問題など、多岐にわたる質問に答えました。聞き手は、朝日新聞編集委員の星浩さんでした。


二中総――「二大政党制づくり」に対抗する大きな方策をしめした

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CS放送「朝日ニュースター」に出演する志位和夫委 員長。右端はインタビュアーの星浩朝日新聞編集委員

  まず、この夏の暑いさなか、共産党は中央委員会総会がありまして、参議院選挙の総括などについて議論がありました。簡単に、この総会の意義といいますか、結論を紹介していただけますか。

 志位 今度の総会では、「二大政党制づくり」の動きに対抗する、新しい政治の対抗軸をどうやって築いていくかを大きな主題として議論しました。そのために参議院選挙の総括と教訓を突っ込んでやりまして、今後の方策を明らかにしたところに、総会の一番の中心点がありました。

  私も、中身は読ませていただきましたけれども、ものすごく端的にいわせていただくと、主張そのものは正しかったけれど、いまひとつ運動が非力だったという総括のように思えますけれども、そんなところで理解してよろしいんでしょうか。

 志位 さらに私たちは、突っ込んで(総括を)やったのです。政治論戦の内容にも弱点があったというところも明らかにしたのです。

 私たちが訴えた政策的な内容、これ自体は、年金でも、イラクでも、憲法でも、消費税でも、国民の立場に立った道理のあるものであり、共感が広がった内容だったと考えています。

 しかし、政策的な共感は広がっても、「二大政党」という動きのなかで、日本共産党の支持にどうも簡単にはいかないという流れがつくられたわけです。「二大政党」という動きが強まり、「自民か、民主か」という選択が迫られてくる、そういうなかで共産党を伸ばすことの意味――共産党の議席の値打ち、共産党への一票の値打ち、これを正面から押し出していく論陣に、正面からとりくんだといえなかった。ここに弱点があったという総括をやりました。

 そして、総括しただけではなくて、「二大政党」に対抗してどういう党の押し出しが大事なのかということについて、六点にわたって明らかにしました。自公の政治の現状を国民の立場で明らかにする。「二大政党」が共同でやってくる悪政に反対する。国民の要求を国政に反映させる。議会制民主主義を守る。世界の諸国民と日本国民の平和の声を結ぶ。そしてこの議席を伸ばしてこそ民主的政権へのたしかな一歩となる。こういう六つのポイントが大事になるという提起もしました。

 そういう政治論戦のうえでの弱点を明らかにしたうえで、同時に、いまいわれた党の実力の問題点を明らかにしました。私たちは、選挙にむけて「しんぶん赤旗」読者を増やす運動にとりくみ、これ自体は大きな意義がある画期的なとりくみだったわけですが、まだまだ党の力が量質ともに足りない。相手がどういう策略をやってきても、それをはねかえすだけの力をつけなきゃならないということを、総括の最大の点として出しました。

  普通は夏は一休みという感じでしたけれども、共産党はかなり中央委員会総会にエネルギーを費やしてということでした。党員の方々の反応はどういうふうですか。

 志位 全体として、積極的な受け止めがずっと広がっていると思います。これ(総会での解明)は、党員のみなさんも選挙をたたかいながら感じていた問題点でもあったと思うんですね。つまり政策の訴えをやりますと反応がいいんですよ。ところが、「共産党はいいことをいうけれども、力がない」という声にぶつかる。どうもこれがうまく突破しきれないで選挙が終わったという感じをみんなもっていたわけです。

 私たち自身もそうだったんですね。私たち自身も、政策の反応はいい、しかし「力がない」という議論にぶつかる。それが問題だなとある程度までは選挙中に走りながら感じてはいたのですけれども、それを正面から突破する論立てをしっかりやれなかった。ここを中央の責任として総括をしたわけですけれども、それは全党のみなさんが感じていた問題点ともかみあって、ここを強めることに、「二大政党制づくり」という動きを打ち破って党が前進していくカギがあるということがつかまれてきています。

 党の実力が足りないという問題は、全党のみなさん自身も切実に感じている問題で、もっと党が大きくならなければならない、質的にも強くならなければならない、若い世代をもっと党に迎えいれる努力も必要だ――これらは、みんなが感じている問題ですから、これも積極的に受け止められつつあると思います。

沖縄米軍ヘリ墜落――無条件撤去、SACO路線見直しで、団結したたたかいを

  さて、ことしの夏は安全保障をめぐる動きがいろいろ起きております。とくに沖縄の米軍ヘリの墜落について、共産党はどういうふうにご覧になって、どういうアピールをされているかというところから。

 志位 普天間基地は、私も何度も訪れましたが、宜野湾市の中心部をえぐりとるようにして、人口密集地のなかに存在しているわけです。ですから、ああいう事故がいつ起こっても不思議ではない状況につねにさらされていたわけです。今度の事故で、幸いにも人命の犠牲はなかったけれども、現地の方々に聞いてみますと、「命がなくなると思った」「真上から落ちてくる感じだった」と。人命の犠牲がなかったというのは偶然のものであって、大惨事になりかねない大事故でした。

 私は、いま沖縄県民のみなさんの動きのなかで、大事だなと思うのは、普天間基地は無条件に閉鎖する、そしてすみやかな撤去が必要だ、これが県民のみなさんの共通の気持ちになりつつあることだと思います。宜野湾市と沖縄国際大学が共催でとりくんでいる集会がありますが(台風で十二日に延期)、この集会のスローガンのなかでも、基地の閉鎖と撤去が、すぐにやるべき緊急の課題として位置づけられています。これが、県民のみなさんの共通の思いになっていま広がっていることは、たいへんに大事だと思います。

 もう一つ大事な点は、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意ではだめだと(いう声が広がっている)。いま沖縄の自治体でずっと決議があがっていますけれども、「SACO合意を見直せ」ということが多くの決議に入っています。SACO合意というのは、普天間基地をはじめ、基地(を移設する)たらい回し路線です。これではことは解決しないと。

 基地の無条件撤去、SACO合意の見直し、これが沖縄県民の全体の声になりつつあることは、私は非常に大切だと思います。たらい回しではだめだ、無条件にアメリカに帰ってもらう――ここで沖縄県民のみなさんが団結する、本土も一体になって運動を広げる。ここが大切なところだと思います。

  事故の処理の過程で、捜査の問題などがあって、日米地位協定の問題、政府側は相変わらず運用の改善ですむんだということですけれども、このへんもまたクローズアップされたと思うんですが、そこはいかがでしょうか。

 志位 これは二つ問題があります。もちろん地位協定自体の抜本的改定が必要です。たとえば、米兵が犯罪を起こしても第一次裁判権が日本側にないという問題をはじめ、地位協定全体が治外法権的な特権を米軍に認めるものになっていますから、この抜本的改定が必要だということは、今度の問題とのかかわりでも、私たちは、おおいに主張する必要があると思っています。

 同時にもう一点、今度の事故処理をみても、その地位協定すら無視した横暴勝手を米軍がやっているというところに、目を向ける必要があると思うんですね。いまの地位協定でも、米軍が基地外で警察権を行使することは、基本的に認められていないわけです。基地外の警察権というのは基本的に日本側にある。例外的に、米軍機が墜落したときなどに、事前に承認をうける間がないときには、救助などのために米軍が私有地や公有地に立ち入ることはありうるというとりきめがありますが、今度のように米軍のヘリが落ち、そのあとにロープを張って、日本側の警察も大学関係者も締め出し、占拠するなどということは、地位協定に照らしても許されない無法そのものです。

基地再編――殴りこみ部隊の「司令塔」化の動きを許さないたたかいを

  それとタイミングをあわせるように、アメリカ軍の世界的な再編問題というのが起きていますね。場合によっては日本にたいする負担が増えるということもありえますし、ただアメリカの提案がよくみえてこないということもあって、一体どうなるのか。このへんはどうご覧になっていますか。

 志位 在日米軍基地というのは、海兵隊を沖縄におき、空母打撃群(の母港)を横須賀におき、この二つを中心に海外に殴りこむ、その前線基地にされているというのが、世界にない異常な特質となってきました。その殴りこみ機能をいっそう強化するというのが、今度の一連の動きだと思います。

 とくに重大なことは、米軍の司令機能を日本に移す動きが強まっているということです。いわば日本を米軍の海外における最大の「司令塔」にしようとしている。たとえば、米陸軍の第一軍団の司令部を、ワシントン州から、神奈川県のキャンプ座間にもってくる、そこにやってくる第一軍団の司令官が在日米軍全体の司令官になるという動きが計画されています。米陸軍第一軍団というのは、アジア・太平洋全域をカバーする部隊で、数万の兵力をもっている大部隊で、イラク戦争にも動員されていますが、その司令部を日本にもってくる。

 陸軍第一軍団の司令部がやってくるとどうなるか。すでに海兵隊の第三海兵遠征軍の司令部が沖縄にありますね。それから海軍では第七艦隊の司令部が横須賀に置かれています。そして空軍では第五空軍の司令部が横田にあります。米四軍のすべての前方作戦司令部が、日本に集中することになる。この米四軍が、日本を「根城」にして、イラク戦争のような無法な戦争を、地球のどこでもやれるような体制を強化するというのが、いますすめられていることです。

 そのなかで、普天間基地の問題でも、絶対に無条件撤去に応じない。県内でのたらい回しで、新しい基地を確保するという動きになっています。それから、横須賀では、いまの空母にかえて原子力空母を二〇〇八年には配備するという動きがおこっている。そのために乗組員が増えるということで、池子の森をさらにつぶして、七百戸も米軍の住宅を増設することも大問題になっています。日本の全国各地で、基地問題の矛盾が深刻になるという事態が、いま広がっています。

 日本には、すでに半世紀以上も米軍基地がおかれてきたわけですが、二十一世紀のいまになって、殴りこみの「根城」としての日本の在日米軍基地の機能をさらに強化するなどということが許されていいのか。基地を永久化し、強化するなどという道をすすんでいいのか。このことを、国政の大問題として、いま問うていく必要があると思います。そして、沖縄、神奈川をはじめ、全国各地で起こっている基地問題について、たたかう側もネットワークをつくって、団結を強めていく必要があると思います。

SACO路線に固執する情けない態度をつづけていいのか

  どうも日本政府の対応が、アメリカの動きにたいして、「ちょっと待ってください」、「日本国内の調整がつきませんので」ということで、おろおろしているだけという感じもするんですけれども。

 志位 日本政府の対応は、この基地の現状が、永久に続いても構わないという立場での対応ですから、まさに受け身で、「どうぞあなた方のいいように」というような筋での対応にしかならないですね。

 普天間のヘリの墜落事故にたいしても、日本の政府のとった態度というのは、実にひどいものでした。だいたい「夏休みだ」といって(小泉首相は)沖縄の関係者に会おうともしなかった。

 さきほど、(沖縄県民のなかで)「SACOの見直し」の声が広がっているといいましたが、沖縄の基地問題でも、政府・与党の立場というのは、SACO路線に固執して、県内たらい回しに固執するというものです。これは、民主党もこの立場なのです。民主党も「SACO合意の早期実施」といっています。自民も、民主も、たらい回し路線なんですね。

 いま沖縄の県民のみなさんが、「たらい回しではだめだ」と、「これを見直して、無条件撤去にすすまなければだめだ」と言っているときに、そういう情けない態度でいいのか。日本の主権、日本の国民の命や安全を守っていくという立場で、真剣に対処するかどうかが、きびしく問われていると思います。

民主党――「国連」の旗をちらつかせながら、海外での武力行使に道開く

  民主党ですが、これもこの夏の安全保障問題の話題になったわけですが、岡田代表が、「憲法を改正して、武力行使できるように道を開きたい」と、国連という機能の枠のなかなんでしょうけれども(のべた)。それにたいして、小沢さんたちは、「国連待機軍構想」というのを主張しているわけですけれども、この民主党の議論、どんなふうにご覧になっていますか。

 志位 どちらの立場も、憲法を明文的に変えるか、それとも解釈改憲ですすめるかという違いはあるのかもしれないけれども、また「国連の決議があれば」という形容詞がついているけれども、憲法を壊して、海外での武力行使をやろうという点では、変わりないですね。

 海外での武力行使というのは、海外で外国人を日本の軍隊が殺すことにもなりかねないということです。これは、国民の多くの方々が、とうてい望んでいないことだと思います。

  民主党のなかには、国連にたいする期待といいますか、国連の枠内ならば許されるんじゃないか。小沢さんの場合は、いまの憲法のなかでも武力行使が許されるということですし、岡田さんは、もうちょっと憲法を改めるということでしょうけれども、国連の枠のなかならば、ある程度、日本の自衛隊のコミット(かかわり)といいますか、その辺が許されるという議論。何となく、耳ざわりがいいんですけれども、そのへんはどういうふうに理解されていますか。

 志位 まず原理論でいいますと、日本国憲法というのは、どんな場合でも武力の行使はしない、さらに軍隊自体を持たないと決めているわけです。日本は、そういう国として国連に加盟したわけですから、国連加盟国の一員としても、武力の行使にはどんな場合でも加わらないという立場をとっていくことは、私は、いま国連加盟国の多数がめざしている「戦争のない世界をつくろう」という動きとの関係でも、世界平和への一番の貢献になるということを、まずいいたいですね。

 もう一つ、民主党は、「国連の決定があれば」というわけですが、「国連の決定があれば」という条件だけでいいますと、たとえばいまやっているイラク戦争だって、日本政府は何と説明してきたかというと、「国連安保理決議一四四一、さらにさかのぼれば六七八、これらの決議にもとづいている」と説明するわけですよ。アメリカだってそういう説明をするわけですよ。ああいうだれが見ても侵略戦争、無法な戦争であっても、「国連決議にもとづいて」と説明するわけですから、そういう議論をいますることは、歯止めであるようで、現実には何の歯止めにもならないのです。

 それから、小沢さんの議論というのは、「国連に日本の兵力を提供すれば、(憲法が禁止している国権の発動としての)日本の武力行使にならない」というものでしょう。これは、まったく通用しない議論なのです。だいたい日本の兵力を、国連のもとであれ武力行使をおこなう軍隊に提供することは、それ自体が、国の意思として武力行使をおこなうということであり、憲法にまず違反するわけですね。

 それから、いま国連決議にもとづいて現実につくられている多国籍軍をみても、統合された指揮権は米軍がもつにしても、各国の軍隊はそのもとで指揮権をもつ――各国の判断で武力行使をするという問題が起こるわけです。ですから、「国連に兵力を提供したら、日本の国権を発動しての武力の行使にならない」などという議論は、まったく成り立つ余地がないものです。

  内閣法制局の見解も、どうもそこは、小沢さんの言われているのとはちょっと違うようですね。

 志位 これは成り立つ余地のない話だと思いますね。(岡田氏と小沢氏の)どちらにしても、同じ話になっていくわけです。「国連」という旗を、ちょっとチラチラと見せながら、海外での武力行使に道を開くというところに一番の問題があるわけです。戦後、日本の軍隊は、憲法九条があったおかげで、外国人を一人も殺していない。これは、誇りにすべき歴史です。それを、いとも簡単に崩していっていいのかが、いま問われていると思っています。

「政治とカネ」――企業・団体献金問題に、正面から答えを出すべき

  政府・与党側は、どうも十月の半ばまで国会を開かないということであるようです。安全保障の問題とは別に、自民党のなかで、例の「政治とカネ」をめぐる問題などが起きています。共産党も早く国会を開け、というスタンスでしょうけれども、この「政治とカネ」、それから国会を早く開いて、どういう論戦をしていきたいのかというのを最後に。

 志位 (臨時)国会では、暮らしの問題では、改悪年金法を実施させないたたかいが引き続き大事になってきますし、基地の問題もたいへん熱い大きな問題になっています。こういう直面する問題を、国民の前で大いに議論する必要があります。さらに、国政の大問題として、消費税増税と憲法改定という二つの悪い政治を食い止めるという論陣を、おおいに張っていきたい。

 そのなかで、いま言われた「政治とカネ」の問題についていいますと、ここでは、企業・団体献金をこのまま続けておいていいのかというところに、私は、いよいよ政治が本腰を入れて、正面から議論して、答えを出さなければいけないというところにきていると思うんですよ。

 日歯連から一億円の(旧)橋本派への献金という問題が出てきましたよね。報道によると、この一億円についてどう処理したらいいのかということについて、自民党事務局長に相談したと。いったんは国民政治協会に入れて、そこからの迂回(うかい)献金として受け取ろうということも考えたけれども、その手続きをとらなかったからヤミ献金になっちゃったという話がありましたよね。そういう迂回献金という問題がずいぶん出てきています。つまり国民政治協会にお金が入るんだけれど、実際にはヒモがついている。

  マネーロンダリング(資金洗浄)ですね。

 志位 そうです。マネーロンダリングで、その金(政党に入った金)が政治家にいくということが出てきました。

 こうなってくると、やっぱり問題を解決しようと思ったら、企業・団体献金をやめないと解決しない。(政治家にたいするものだけでなく)政党にたいするものであってもやめないと、問題は解決しないですよ。ヒモ付き献金――マネーロンダリングはなくならない。これに本腰を入れてとりくむかどうかが、焦点になっていると思います。

  わかりました。きょうはいろいろ、多岐にわたる問題、ありがとうございました。



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