2004年9月3日(金)「しんぶん赤旗」
日本郵政公社東京支社は一日、本人同意のない配転を強行しました。郵産労(郵政産業労働組合、全労連加盟)の組合員十三人が配転され、郵産労東京地方本部は同日夕、東京・千代田区の同支社前で緊急集会を開き、九十人を超える労働者が参加。抗議の唱和を響かせました。
![]() 本人同意のない強制配転はやめよと唱和する郵産労の組合員ら=1日、東京・千代田区大手町の郵政公社東京支社前 |
「不当配転は許さないぞ」。東京中央郵便局の特殊郵便課勤務だった鈴木正明さん(53)は怒りを込めて声をあげました。
妻の繁子さんは、難病指定の網膜色素変性症を患っています。視力はほとんどなく、視覚障害一級です。日常の炊事・洗濯、家事もままならず、もっぱら鈴木さんが引き受けています。買い物は鈴木さんや大学生、専門学校生、高校生の息子たちが授業やアルバイトの合間をぬって交代で手伝ってくれますが、通院などの外出は、鈴木さんの支援が無ければ不可能といいます。
「身体障害者福祉法による居宅介護サービスを受けていますが、月六十四時間が限度です。子どもたちの協力も限度があり、妻の介護のためにも現勤務地、現局所の勤務を再三要望しましたが、まったく聞き入れてもらえませんでした」
家族の介護が必要な労働者は鈴木さんだけではありませんでした。
同じ東京中郵の第一普通郵便課に勤務していた四十七歳の労働者は、親一人子一人の家庭で、母親の介護をしながら、ぎりぎりの状況のなかで仕事と介護の両立をはかってきました。まわりの労働者の配慮や応援があってこそ、なんとか母親の介護を続けてこられたのです。公社側は、そのささやかな願いとつましい生活を断ち切りました。
労働者は訴えていました。「私のような生活をしながら、新しい職場と人間関係、新しい業務に慣れていくことは、精神的にも肉体的にも大変な負担とならざるを得ません」。訪問看護サービスの写しを添えて申し立てたにもかかわらず、公社はこの労働者に一日からの板橋北局への配転を命令しました。
この労働者はついに張り詰めた気持ちが切れ、三十年近く勤めていた郵政の職場を、前日の八月末付で退職しました。
「彼の退職は本当に悔しい。困難を抱えている私たちがなぜこんな仕打ちを受けなければならないのか。私たちの願いはそんなにぜいたくなものなのでしょうか」
鈴木さんが配転させられる東京国際郵便局は、仮眠もなく十時間の深夜勤務をして勤務明けの日の夜に再び深夜勤務に入る深夜勤(ふかやきん)を、最大連続三日強要しようとしています。
「最大三日の深夜勤が一番困ります。これまでは最大二日連続で、ホームヘルプ、デイサービスなどを組み合わせ、家族の協力で必死でやりくりしてきた生活が壊れてしまう。こうしたやり方を職員に押しつけておいて、郵政公社が掲げる『真っ向サービス』が充実できるのか。誠意ある姿勢を示してほしい」と鈴木さんはいいます。
郵産労東京地本の土田和男委員長は「必要性があるのか、疑いたくなるような配転を強制するのは、利用者・国民にとってもサービスダウンを招きかねません。本人同意のない配転は撤回を。家族の介護をしなければならない労働者の非人道的な配転はただちにやめろと運動を広げたい」と話しています。