日本共産党

2004年8月31日(火)「しんぶん赤旗」

「岡田ビジョン」が示す「未来」は


 三十日告示された民主党代表選は、岡田克也代表の無投票再選が決まりました。その岡田氏は、次期総選挙の新たなマニフェスト(政権公約)の前提となる「2015年、日本復活ビジョン」を発表し、「党内で大いに議論していく」(三十日の決起集会)と位置付けています。しかし、岡田ビジョンからは国民にとって明るい未来は開けてきません。

よくなる根拠も処方せんもない

 「年金制度は、安定した持続可能なものになっています」「自殺者の数は大幅に減り、路上生活者は姿を消しました」…。岡田ビジョンは、民主党が目指す二〇一五年の日本を近未来像の形で示し、日本がよくなると盛んに描いているのが特徴です。

 ところが、二〇一五年になぜそうなるのか、いまある国民の苦難をどうなくすかの処方せんは見いだせません。示されているのは、国会議員の定数削減、年金目的消費税の実施、市場原理の貫徹など、同党が先の参院選マニフェスト(政権公約)で掲げた政策が次々実現し、機能している社会が予定されているだけです。

 それが「実現」すると国民の暮らし・福祉はどうなるのか。

 消費税を財源に最低保障年金をつくるが、その税率(スタート時は3%)は、年金水準や高所得者の範囲の設定次第でどんどん上がることもある。高齢者医療には所得比例の保険料を徴収したうえで一―二割の自己負担を求めます。

 大企業にとっては、基礎年金部分の保険料負担を免れることになります。「法人税率の引き上げは民間の活力を削(そ)ぐことになる」とヨーロッパ諸国に比べて低い日本の法人税率の引き上げを拒否し、大企業に配慮。「増税の中心は間接税(消費税)にならざるをえない」として、増税の実現が政治のリーダーシップで行われるべきだとする社会です。国民にとってはつらい未来があるだけではないでしょうか。

“改憲ありき”で深刻な矛盾に

 唯一、この岡田ビジョンを実現する具体的な“術(すべ)”として掲げられたものがあります。憲法改定です。その理由も「成熟した民主主義国家だからこそ、必要に応じて憲法改正することは当然」という“まず改憲ありき”の姿勢です。

 岡田氏は七月末の訪米で、米政府高官、民主・共和両党関係者らに日本の民主党が日米同盟重視に変わりがないことを語り、“政権担当能力政党”であることをアピールしています。ビジョンでも「アジアのことをよくしる日本と、超大国アメリカの二国が良好な関係を保ち、同盟関係にあることはアジア太平洋地域の安定にとって大きな公共財」と位置付けるなど、アメリカとの関係を重視する姿勢は自民党と変わりません。

 そのため「国際協力・貢献」といえば、PKO(平和維持活動)や多国籍軍の活動に積極的に参加したり、国連のお墨付きがあれば武力行使もできる、という軍事面での発想が真っ先に出て、党内では憲法九条を障害ととらえる議論が当たり前のようになっています。

 しかし、イラク戦争に世界の圧倒的多数の国々が反対したように、二十一世紀の世界の大勢は、国連憲章の平和のルールを尊重した「戦争のない世界」を求めています。とくに、東アジア地域では、平和的な話し合いで解決する努力が続けられており、岡田ビジョンでも「中国、ロシア、北朝鮮を加えた六カ国による東アジア協力体制が築かれました」と指摘しています。

 そのアジアで、日本が憲法九条を改定までしてアメリカの横暴勝手な戦争に軍隊を出して参加する道に踏み出せば、アジアに生きる日本がアジアの国々とのきずなを失うことになります。

 岡田ビジョンは、「アジアの一員」「東アジア協力体制」といいながら、その東アジアを脅かす日本をつくろうとしているのです。改憲という立場に硬直しているがゆえに、岡田ビジョンは、未来を語ろうとしながら未来の展望を指し示せない矛盾に陥っています。

 高柳幸雄記者



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