2004年8月29日(日)「しんぶん赤旗」
【メキシコ市=菅原啓】パナマのモスコソ大統領が二十六日、カストロ・キューバ国家評議会議長暗殺未遂事件に関与した亡命キューバ人で元米中央情報局(CIA)要員のテロリストを恩赦し、出国させたことに、中南米諸国の社会団体から強い抗議の声が上がっています。キューバ政府は同日、両国関係を断絶しています。
釈放されたのは、二〇〇〇年十一月にパナマで開催されたイベロアメリカ首脳会議の際に発覚したカストロ議長襲撃・暗殺計画に加担したとしてパナマ当局に拘束され、今年四月に八年の禁固刑を言い渡されていたルイス・ポサダスら四人の亡命キューバ人。四人は二十六日中に、米マイアミの反カストロ団体の差し向けたチャーター機で米国などに出国しました。
キューバ政府は二十二日の段階で、もしパナマ当局が四人を釈放することがあれば、両国関係を断絶すると警告していました。パナマ政府は翌二十三日、駐ハバナ大使を召還するとともに、パナマ駐在キューバ大使に国外退去を命じました。
ポサダス氏は、一九七六年にもベネズエラ発のキューバ航空機を爆破させ、乗客・乗員七十三人を死亡させた犯人。他の三人もメキシコや米国内でキューバ人外交官らを殺害したとしてキューバ当局が追及してきた人物です。
パナマのモスコソ大統領は、恩赦の理由について、キューバ側からの引き渡し要求を拒否することができず、もしキューバに引き渡されれば「必ず殺される」と指摘。「人道的な判断から」恩赦を決定したと説明しました。
親米的なモスコソ大統領は八月末で任期切れを迎えます。対米関係で自主的な対応をとることが期待されているトリホス次期大統領の就任直前の恩赦発表には、米国からの圧力があったのではないかとの見方もあります。米政府は恩赦決定への関与を否定しています。
キューバの国家評議会は二十六日付の声明で、モスコソ大統領を「テロに加担し、擁護した」と厳しく非難。四人が「今後犯す可能性がある新たな犯罪についても責任を問われる」と指摘して両国関係の断絶を発表しました。
中南米各国では二十七日、パナマ政府の決定に抗議する集会やデモが組織されました。メキシコ市内のパナマ大使館前では、学生や市民数十人が集まって、テロリストを釈放したパナマ政府にたいして「恥知らずな決定に断固抗議する」などの声をあげました。