2004年8月24日(火)「しんぶん赤旗」
「提案型の活動を強めていこう」「仲間との交流が、営業の活路を開いてくれる」―。二十一、二十二の両日、神戸市内で開かれた全商連(全国商工団体連合会)付属中小商工業研究所第六回夏期研究集会。全体会、分科会を通じて、何度もこの言葉が聞かれました。政府・財界による地域経済破壊の攻撃から、地域経済を守り、振興の担い手として住民や自治体から頼りになる中小業者をめざして、活発な討論が繰り広げられました。
全体会に続いて開かれた六つの分科会は、ものづくりから商店街づくり、地域金融の問題まで多岐にわたりました。
「新規起業・創業、第二創業、事業継承」の分科会では、時代の変化に合わせた営業努力や事業継承について、率直な意見が出されました。
後継者不足の一方で、後継者ができたものの、どのように事業を継承していけばいいのか、多くの中小業者が模索を続けています。
神奈川県で塗装業を営む男性は、息子が一緒に仕事をするようになったが、人との交流が広がらず、「親父のようにいろいろ手がけることは無理」とこぼすなど、跡を継がせるには不安があると語りました。香川県の男性は、「息子がうどん屋を開業したが、職人気質で経営者としての姿勢がまだない」と、悩みをぶつけました。
兵庫・揖龍宍粟(いりゅうしそう)民商の三尾功さん(自動車整備)は、大手自動車会社で数年働いた息子の新しいアイデアを生かし、電気自動車のための電気スタンド(充電所)や民間車検に取り組んでいる経験を報告。「ニーズや制度の変化に的確についていかないと、商売が成り立たない。自分のやり方に固執せず、若い感性を積極的に受け入れることが必要だ」と語りました。
助言者の三井逸友さん(横浜国立大学大学院教授)は、事業継承のキーワードとして、「学び」「自立と挑戦」「交流」を強調。先代を頼りにするばかりではなく、同じ悩みをもった仲間との交流のなかからヒューマンネットワーク(人間的なつながり)が生まれ、挑戦と失敗を繰り返しながら、企業としてステップアップすることが大事だと指摘しました。
長期にわたる不況下でこれまでにない需要の創出も求められています。事業内容や経営行動を再検討し、新たな事業展開をする「第二創業」にも注目が集まっています。
埼玉県商工団体連合会会長の菊池大輔さん(建築業)は、息子とともに「毎日が第二創業」の気構えで取り組んでいると発言。障害者の運動にかかわるなかで培ってきた人脈をいかし、社会福祉施設の設計を数多く請け負ったり、阪神大震災を機に、いち早く耐震審査を取り入れている経験を紹介しました。
大阪でコンピューターのソフトウエアの仕事をしている男性は、「職人だからと営業には力を入れずにきたが、単価が半分になり、やっていけない。業者間のネットワークづくりのノウハウが知りたい」と訴えました。
山口・岩国民商の松田一志さんは、工業高校の高校生と中小業者の交流の場を設けたことで、業者自身が仕事に誇りと自信をもち、高校生にも地元経済を支える中小業者の仕事を知ってもらう機会になったと発言。「若者の雇用問題と中小業者の求人要求を結びつけていきたい。職安や学校とのタイアップができないかと、懇談をすすめている」と語りました。
助言者の佐竹隆幸さん(兵庫県立大学教授)は「第二創業に取り組むことで、企業として立ち直る可能性が広がる。一人では限界があり、同業や異業の仲間との交流が不可欠となるが、民商はその交流の場となりうる。企業の経営資源を明らかにし、交流の場を提供できるのが、今後の民商の発展の土台になるのではないか」とのべました。