日本共産党

2004年8月21日(土)「しんぶん赤旗」

浅田被告、牛肉偽装認める

ハンナン事件

実質利益は13億円

初公判で浮んだ業界支配


写真

ハンナングループ企業事務所があり、牛肉の搬入が行われる羽曳野市立南食ミートセンター敷地内の建物

 「どんな肉でもいいから集めるだけ集めろ」と牛肉偽装を指示した――。国のBSE(牛海綿状脳症)対策事業を悪用した牛肉偽装事件で、詐欺や補助金適正化法違反などの罪に問われたハンナン元会長・浅田満被告(65)ら十二人の初公判が二十日、大阪地裁(水島和男裁判長)で開かれ、検察側は冒頭陳述で“食肉のドン”、浅田被告の犯罪を生々しく明らかにしました。浅田被告は起訴事実を認めました。

 起訴状などによると浅田被告は、二〇〇一年から〇二年にかけ、全国同和食肉事業協同組合連合会(全同食)、大阪府食肉事業協同組合連合会(府肉連)など、同被告が幹部を務める組織を通じ、輸入肉など事業対象外の牛肉四百三十四トンを含む牛肉の買い上げや処分費用などを申請。助成金約五十億四千万円を不正に受け取りました。また、同被告は部下に証拠の隠滅もさせました。

 検察側は冒頭陳述で、浅田被告が「ハンナングループを統括」し、事件の舞台となった全同食でも「すべての業務は浅田の指示のもとにおこなわれ、浅田が利益を独占する状態にあった」と指摘しました。

 さらに、検察側は、浅田被告が国のBSE対策が本格化した二〇〇一年十月上旬から繰り返し上京して農水省関係者に面会、「農水省関係者に働きかけるなどした結果」、全同食が業務委託の形で事業に加わることを実現させた経過を示しました。また、同被告が、農水省の買い取り事業で牛肉の処分方法が確定していなかった時点で「関係方面からの情報を得て」、肉は最終的には焼却されるとの確信を持った、と指摘。「焼却すれば証拠が残らないことになるので」偽装牛肉で利益を得ようと思い立ったとのべました。

 さらに、浅田被告は、部下にたいして「時間がないから、とにかくどんな肉でも集めろ」と指示。これをうけて輸入牛肉などの対象外肉がかき集められ、書類も偽装するなどの工作が進められました。検察側によると、これらの牛肉偽装で浅田被告が得た実質利益は計十三億円を超えました。


カット

 国産牛肉買い取り事業 BSE(牛海綿状脳症)対策として、全頭検査開始(二〇〇一年十月十八日)より以前に、と畜解体された国産牛肉を市場隔離し焼却処分する制度。国の予算総額は約二百九十三億円。実務的には、全国食肉事業協同組合連合会など業界団体が窓口となって業者から肉を買い集め、農水省の外郭団体・農畜産業振興事業団が業界団体に助成金を支払います。


解説

検察、癒着構造にふれず 

 “食肉のドン”浅田満被告の初公判で、検察側は、同被告と農水省担当者との接触を明らかにしたものの政治家とのかかわりにはまったくふれませんでした。

 浅田被告は、買い取り事業の情報を農水省だけでなく、国会議員からも得ていたと供述していました。この経過をくわしく明らかにすることが事件の背景を知るためにも重要です。しかし、被告は、公判で起訴事実を全面的に認めることにより、一気に判決に向かう流れをつくりました。この結果、浅田被告の供述内容も公判で吟味されずに闇に葬られることになりそうです。沈黙することで逆に政官界ににらみをきかす――という作戦でしょう。

 浅田被告は、前自民党衆院議員の鈴木宗男被告に高級車を提供したり、中川昭一経産相(元農水相)にパーティー券購入で三百万円献金するなど自民党農水族議員と密接なつながりがあります。

 農水省も買い取り事業の中心にいた畜産部長が浅田被告らから、高級牛肉割烹(かっぽう)で接待を受けていたことが明らかになっています。また、浅田被告らは「部落解放同盟」(解同)の影響力を背景に、食肉業界での「同和利権」をふりかざして大きくなってきました。そうした土壌にも深くメスを入れる必要があります。

 国民の税金でまかなわれる助成金約五十億円を不正に受け取った前代未聞の牛肉偽装事件。その根源にある癒着は今後、国会・地方議会でもさらに追及することが重要になっています。

 森近茂樹記者



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