日本共産党

2004年8月20日(金)「しんぶん赤旗」

財界

強める政治介入(中)

憲法「改定」

9条見直し「実利」追求


 憲法問題をめぐる財界の動きは、米軍によるイラク戦争と日本の自衛隊派遣を機に、あわただしくなっています。

 日本経団連は初めて、憲法問題を議論するための「国の基本問題検討委員会」を五月の総会で設置しました。七月十五日には初会合を開催。当日あいさつした奥田碩会長は「(参院選後の)この時期は、二十一世紀の国のありようを論議するまたとないチャンス」と挑戦的です。

会長は改憲論

写真

平和憲法を守れと集まった人たち=5月3日、東京・日比谷野外音楽堂

 恒例の夏季フォーラムでも憲法問題を議論しました。奥田会長はこのなかで、「日本が(東アジアで)リーダーシップを取るには、軍事力充実が必要ではないか」と指摘。終了後の会見では、「(自分のことを)改憲論者と思ってもらっていい」と言いました。

 財界の政策提言団体である日本経済調査協議会(略称=日経調、理事長・橋本徹みずほフィナンシャルグループ名誉顧問)の「憲法問題を考える調査専門委員会」(委員長・葛西敬之JR東海会長)は、二年間の検討を経て、七月二十九日に提言「憲法問題を解く」を発表しました。日本が攻撃されてなくても、米軍が攻撃されれば武力行使ができるようにするために集団的自衛権の容認を求めています。さらに、憲法改定によって「軍事力使用の枠組みの明示」を提起しています。

 財界人が個人の立場で活動している経済同友会の安全保障問題調査会(当時、委員長・楠川徹富士総合研究所会長)が、一九九六年四月に発表した「安全保障問題調査会報告書」では、すでに集団的自衛権の容認を求めていました。

 憲法問題に関連して財界が求めているのが、武器禁輸原則の見直しと宇宙の軍事利用に道を開くことです。こちらはいずれも企業利益にかかわっています。

 日本経団連が七月二十日に提言した「今後の防衛力整備のあり方について」では、憲法の平和原則を具体化した武器禁輸原則によって、「先進国間の共同開発プロジェクトの流れから取り残されて(いる)」と嘆き、見直しを求めています。

 宇宙の平和利用原則の見直しについては「安全保障における、宇宙利用の重要性の増大をかんがみれば、わが国でも、早急に宇宙の平和利用を国際的な解釈と整合させる必要がある」と指摘。アメリカのように宇宙の軍事利用を積極的にすすめることを求めるものです。

慎重論も出る

 その一方、九条改憲にむけ、財界が一枚岩となっているかといえば、そうではありません。日本経団連の夏季フォーラムで、勝俣恒久副会長(東京電力社長)が改憲論議にたいし、慎重論をのべたことにも示されています。

 経済同友会が同会の会員にたいして二〇〇二年三月におこなった「憲法問題に関する意識調査」では、「集団的自衛権の行使を認める方向で見直すべき」だとした回答は、76・9%と多数です。しかし、アンケート調査に回答したのは千四百人の会員のうち、四百三十四人にすぎませんでした。回答率は31%です。回答しなかった七割の会員は「回答しない」ということで、アンケートの趣旨そのものに反対という「意思表示」をおこなったとも考えられます。

 また、憲法を「改正すべきでない」との回答も7・2%ありました。その理由(複数回答)として、「世界に誇る平和憲法だから」をあげる会員が14・9%、「軍事大国への道を開くおそれがあるから」も12・6%にのぼっています。

 日本共産党は、「憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点での、広い国民的共同の大闘争を」(第二十三回大会決議)と呼びかけています。

 (つづく)



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