日本共産党

2004年8月18日(水)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ国民投票 大統領罷免を否決

「歴史の逆戻り 許さなかった」

野党策動抑えた基礎に、教育と運動


 「国民は歴史の逆戻りを許さなかった」―。南米ベネズエラの国民投票で大統領罷免が否決された十六日早朝、市民たちの喜びが爆発しました。国民が主人公の改革をすすめるチャベス政権を自分たちの力で守ったからです。米政権と結託した野党勢力の策謀を打ち破った要因はどこにあったのか。勝利にわきたつ首都カラカスから報告します。(カラカス=菅原啓)

 「貧しい庶民は、何十年も放置されてきた。以前の政権は豊かな石油資源を金持ちの利益のために費やしてきた。それを変革し、真の平等をめざしているのがチャベス革命だ。クーデター、石油ストを打ち破ったのに続いて、国民の意思で政権の継続が確認されたことが何よりもうれしい」

 アパートの管理人をしているマヌエル・ロペスさん(54)は喜びを語りました。

10時間待ち投票の忍耐支えたものは

 ネルソン・グスマンさん(44)は、企業と短期契約を結んで働く電気技師。「チャベス政権が中小企業向けの融資を拡大した結果、数年前から仕事が回ってくるようになった。大企業や米国を気にするのではなく、庶民の生活向上を第一に考えているのがチャベス政権だ」といいます。

 勝利集会に姿を現したチャベス大統領は、国際監視団や外国マスコミ注視の中で罷免反対が58%と圧倒的多数を占めたことに満足を表明。長時間列を作って投票に参加した国民の「英雄的な忍耐力」をたたえました。

 初めての電子投票や指紋照合システムへのとまどい、予想を上回る投票率などで投票所には早朝から長蛇の列ができました。投票まで十時間待ちは当たり前という状況。有権者が示した忍耐力は外国マスコミも驚きをもって紹介しました。

 改革の浸透が、「忍耐力」をささえる大きな理由だったことは間違いありません。与党第五共和国運動のオルランド・ガルシア国会議員は、「チャベス政権の改革が教育を重視し、国民が主人公の憲法を土台にすえていることが力を発揮した」と分析しました。

地域に無数の窓口対話重ねた与党側

 教育省で働くアナ・オルティスさんは、「憲法を学び、国民が主人公の民主主義を根付かせる努力がなかったら、今回の勝利はなかった。教育プログラムで貧しい人々が新聞を読めるようになり、政治を理解できるようになった。これがなければ圧倒的なマスコミの宣伝に流されていただろう」と振り返りました。

 今回の国民投票は、石油の富を独占してきた富裕層、財界など旧支配勢力が米政権を後ろ盾にして、改革を進めるチャベス政権を排除するため実現を迫っていたものでした。チャベス政権は、野党側が国民投票実施の要件を満たす署名を集めたことが確認されると、憲法と法律にもとづいて投票実施を決断。国民の意思であらゆる公職の人物を罷免できるのが、ボリバル革命本来の参加型民主主義だと主張し、野党との対立を投票で解決しようと訴えてきました。

 「チャベスが国民投票を拒否すると踏んでいた野党側は当てが外れた。チャベスが非民主的という非難はほとんど威力を失った」とグスマンさんは解説しました。

 与党勢力は、改革の成果をまとめたパンフレットを大量配布。それでも「貧困地域は無料の治療を受けられるが、公立病院は器材も薬品もなくボロボロ。チャベスは貧困層だけの大統領か」など、中所得層には改革への批判や疑問が渦巻いていました。

 与党側は地域に無数のキャンペーン窓口を設置。「公立病院を管理しているのは、反革命派の首都圏市長であり、予算不足の責任は野党側にこそある」など、市民の誤解を解く対話活動を精力的に展開しました。「一人が十人の有権者を組織しよう」を合言葉に、何十万人というパトロール隊も編成されました。

 財界や御用組合、旧支配層の二大政党幹部は、チャベス政権を「独裁的な権威主義」とか「偏重した貧困層支援」と攻撃し、資金やマスコミを動員したキャンペーンを展開しました。しかし参加型民主主義の実践で、地域福祉プロジェクトなどに参加し、憲法や教育を身につけたチャベス支持派の住民の運動と組織力を上回ることはできなかったのです。

打ち破った米干渉各国で大きな反響

 国民投票の結果は、近隣のラテンアメリカだけでなく、ヨーロッパの主要紙でも大ニュースとして報じられました。ブッシュ米政権による横暴への懸念が高まる中で、これをきっぱり批判し、自主的な国づくりを進めるチャベス政権が、ラテンアメリカで相次ぐ対米自主の動きを象徴しているからです。

 チャベス革命を敵視する米ブッシュ政権は野党勢力を公然と支援し、資金提供。政府高官は非公式のかたちでチャベス政権非難と「脅迫」を繰り返しました。

 投票監視のためアルゼンチンからやってきた人権団体の代表、ダンテ・グージョ氏は、チャベス政権が米国の干渉を打ち破って信任を確認した結果について「ベネズエラだけでなく、米国の横暴な干渉を拒否するラテンアメリカの国々にとっても重要なものだ」と強調していました。



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