日本共産党

2004年8月17日(火)「しんぶん赤旗」

米軍のヘリ墜落現場封鎖

地位協定にも違反

弁護士 新垣 勉さんに聞く


 米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落した事故で、米軍が現場付近を封鎖する事態が起きています。大惨事でありながら、米軍は日本の警察による現場検証を拒否したまま、機体の残がいの撤去を始めました。その問題点について、「日米地位協定改定を実現するNGO」事務局長の新垣勉弁護士(沖縄弁護士会前会長)に聞きました。


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 米軍は、勝手に立ち入り禁止区域を設け、警察による現場検証を妨害しています。こうした行為は、駐留米軍の地位を定めた日米地位協定からみても違法です。

 外務省は、地位協定の二三条に、日米が米軍の「財産の安全を確保する」ことについての「協力」規定があることをあげて説明していますが、間違っていると思います。これは議論を日米の「協力」の問題にすりかえるものです。問題なのは、地位協定上、米軍に、その権原があるのかどうかです。

 米軍が行っていることは、警察権を基地の外で行使しているということです。たしかに地位協定によると、米軍が基地外で警察権を行使できる場合があります。

米軍の警察権限定的なもの

 しかし、地位協定にもとづき日米両政府が結んだ合意によれば、それは米兵間の「秩序及び規律の維持」に関する場合に限られています。たとえば、スナックで米兵同士が暴れている場合に止めに入ることができるといったことです。今回の事故が、それにあたらないことは明らかです。

 同じ合意には、「捜索等に関する事項」という規定があります。この規定によれば、日本側は、「事前に(米軍の)憲兵司令官又は当該本人が所属する部隊の司令官に、その旨を通知する」ことにより、捜索や差し押さえ、検証をおこなうことができることになっています。米軍が、警察による現場検証を妨害することはできないのです。

 実は、米軍機が墜落や不時着した場合に、「事前の承認を受ける暇がないときは…、(米軍は)公有又は私有の財産に立ち入ることが許される」という合意もあります。

 しかし、この合意にもとづく国内法がないため、米軍はこの合意をもとにした措置をとることはできません。

 国内法がたとえあったとしても、この合意は、人命救助や財産保護という視点からの「緊急避難」として、立ち入りが許されるとするものです。事故から数日たった今も、現場への立ち入りを認めるものではありませんし、この規定をいくら使ったとしても、米軍が警察や大学関係者の立ち入りを制限することはできません。

地位協定の抜本改定を

 米軍の事故後のふるまいは、地位協定からみても違法ですが、地位協定自体の問題も見過ごすことはできません。

 地位協定上、今回の墜落事故は、「公務中の犯罪」であるため、第一次裁判権は米側にあります。これ自体が、重大な問題なのです。

 軍用機の民間地域への墜落は、日本国民の生命、身体、財産に関する重大な事故・犯罪であり、公務中の事故といえども、日本に第一次裁判権が属すると定めるべきことです。現行の地位協定は、「公務中」というだけで無限定に第一次裁判権を米軍に認めており、日本の主権、とりわけ市民の権利を確保するという点で是正させるべき重大な問題です。

 しかも、事故がおきたときの再発防止のための事故調査の規定も、地位協定にはありません。

 こうした屈辱的な地位協定の抜本改定が、今こそ必要です。



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