日本共産党

2004年8月11日(水)「しんぶん赤旗」

危険高める老朽化原発

問われる延命策、検査体制


写真

事故のあった美浜原発3号機のタービン建屋の内部。画面最上部のめくれて黒く見えている部分が破口して蒸気が噴き出た部分(関西電力提供)

 十一人の死傷者を出した美浜原発3号機事故。直径五十六センチもある主要な配管が破裂するという重大事故です。破裂個所の配管は運転開始から二十八年間一度も検査が行われていませんでした。昨年十一月に協力会社から摩耗の可能性を指摘されていながら、九カ月も放置したまま運転していました。なぜこんなことが起こるのでしょうか。前田利夫記者

 従来、原発が安全に運転できる寿命は、三十年が目安とされてきました。日本には現在稼働していて、すでに三十年以上経過している原発が六基あります。(表参照)

 政府は、電力会社の申請があれば、寿命を超えての運転を認めています。しかし、原発の安全性をチェックするための科学的に信頼できる基準さえないのが現状です。

 美浜原発3号機は、運転開始から約二十八年です。破裂した配管の検査は電力会社にまかされ、関西電力は一度も検査しないで今回の事故をまねきました。

 老朽化した原発では事故・トラブルが続発しています。地震の際の安全性についても、専門家から強い疑問が出されています。

 今回の美浜3号機事故は、電力会社まかせでは、原発の安全は守れないことを示しています。原発の安全性をチェックするための科学的基準を確立し、それに基づいた第三者機関による厳正な検査を行うことが早急に求められています。

根深い安全神話

 関西電力が、二十八年間一度も検査を実施していなかったこと、協力会社から摩耗の可能性を指摘されたのに、九カ月もそのまま運転を続けていたことは、原発を推進する側にいまなお根深い“安全神話”があることを示しています。

 本紙の質問に、関西電力では、十一月に協力会社から指摘を受けたときに、経済産業省に報告をしたと答えています。ところが、同省からは何の指示もなかったといいます。これが事実なら経済産業省の責任も重大です。

電力会社まかせ

 経済産業省によると、加圧水型軽水炉の二次冷却系配管の検査基準は、火力発電所と同じ扱いで、検査のやり方は電力会社にまかせてあるといいます。二次冷却系の水や水蒸気には通常放射性物質が含まれてはいないとはいえ、冷却水が喪失すれば原子炉の冷却能力に直接かかわります。今回の事故では、冷却水の補給がおこなわれて最悪の事態にはいたりませんでしたが、ここにも“安全神話”が影を落としています。

 経済産業省原子力安全・保安院は、今回の事故の評価尺度を「0+」と発表しました。評価尺度は0から7まで八段階あります。四人死亡、七人が重軽傷という事実に照らして、この評価は納得しがたいものです。

 70年代に運転開始した原発 

 原 発 出 力 炉型 運転開始 電力
    (万キロワット)    (年月日) 会社
 敦賀1   35.7   沸騰   70.3.14   原電
 美浜1   34.0   加圧   70.11.28   関西
 福島第一1   46.0   沸騰   71.3.26   東京
 美浜2   50.0   加圧   72.7.25   関西
 島根1   46.0   沸騰   74.3.29   中国
 福島第一2   78.4   沸騰   74.7.18   東京
 高浜1   82.6   加圧   74.11.14   関西
 玄海1   55.9   加圧   75.10.15   九州
 高浜2   82.6   加圧   75.11.14   関西
 浜岡1   54.0   沸騰   76.3.17   中部
 福島第一3   78.4   沸騰   76.3.27   東京
 美浜3   82.6   加圧   76.12.1   関西
 伊方1   56.6   加圧   77.9.30   四国
 福島第一5   78.4   沸騰   78.4.18   東京
 福島第一4   78.4   沸騰   78.10.12   東京
 東海2   110.0   沸騰   78.11.28   原電
 浜岡2   84.0   沸騰   78.11.29   中部
 大飯1   117.5   加圧   79.3.27   関西
 福島第一6   110.0   沸騰   79.10.24   東京
 大飯2   117.5   加圧   79.12.5   関西

 ※沸騰は沸騰水型、加圧は加圧水型、
   原電は日本原子力発電の略   



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