日本共産党

2004年8月6日(金)「しんぶん赤旗」

改憲案を国会にもちこむ

衆院憲法調査会  自、公、民が討議を強行

共産、社民  「会の目的を逸脱」と抗議


 自民、公明、民主三党は五日、衆院憲法調査会で各党の改憲論議の「論点整理」・「中間報告」について発言し、討論を強行しました。政党の改憲論を国会にむりやりもち込む重大な動きです。日本共産党、社民党は「調査会の目的を逸脱する」と強く抗議し、共産党の山口富男議員は「九条を打ち壊す改憲論の競い合いは二十一世紀の平和の流れと現状を見ないものだ」と三党の改憲論を批判しました。


九条破壊は平和の流れに逆行 山口議員 

写真

衆院憲法調査会=5日

 自民党の論点整理を説明した保岡興治議員(同党憲法調査会長)は、憲法前文の全面書き換え、「自衛のための戦力の保持」明記、集団的自衛権の行使に関する規定や「国防の義務」などを盛り込んだ同党の構想を表明。そのうえで、「自民、公明、民主各党で大まかな方向性は一致する。焦点となる安全保障の問題でも、国際協力・国際貢献に関する規定を盛り込むことには三党に違いはない」として三党間での改憲論議の進展に期待を表明しました。

 民主党の枝野幸男議員(前政調会長)は「従来までの護憲・改憲論議はややもすると過去の歴史に足をとどめたままの議論。そのいずれにもくみせず前に向かって憲法構想を示したい」と護憲論まで非難。一方で、「国連の集団安全保障活動に積極的に関与する」「限定された自衛権を明記する」など、九条改憲の構想を示しました。公明党の太田昭宏議員(同党憲法調査会座長)は「自衛隊の存在を認める記述を置く」、「国際貢献に関する規定を盛り込む」など、九条見直しの議論があることを紹介しました。

 こうした議論に対し山口氏は、「憲法改定を目的とした(三党の)文書を、特段の枠を設けて調査の対象かのように扱うことは、現行憲法の『広範かつ総合的な調査』を行うという憲法調査会の目的を逸脱する」と批判。そのうえで九条の現代的意義について力説しました。社民党の土井たか子議員も「各党の改憲論を議論するのは調査会の趣旨と違う」と批判しました。


「九条」の現代的意義

共産党・山口議員の発言(要旨)

 日本共産党の山口富男議員は五日の衆院憲法調査会で、改憲目的の文書を調査対象のように扱うことを厳しく批判するとともに、憲法九条の現代的意義について次のように発言しました。

 第一に九条は、世界戦争の深刻な反省を背景に「戦争のない世界」をめざす世界の大きな流れのなかで生み出されたものです。

 戦争放棄という形をとったのは、国連と国連憲章を支えにしたもので、個々の国の勝手な戦争は認めない、平和のルールが守られる世界秩序をつくり上げる強い意思と希望を表明して出発したのでした。こうした世界の流れは、同じ時期につくられたイタリアの憲法に戦争放棄条項が盛り込まれたことからもうかがえます。

 九条には、侵略戦争への反省にとどまらず、戦争のない新しい世界を展望し、そのさきがけになる決意が込められたのです。さらに戦力不保持、交戦権否認の第二項で、戦争放棄を実効あるものにしました。ここに、他国に例をみない先駆的な到達点があり、国家権力を制約する立憲主義の真髄が示されました。

 国連での活動でも非軍事の立場に徹するのが、憲法制定議会でも確認された九条の考えでした。多国籍軍への参加や海外での武力行使などは到底認められません。

九条は今が旬

 第二に二十一世紀、世界の平和秩序を求める流れが新たな段階に入り、九条も「いまこそ旬」といわれる新たな力をもってきたことです。

 イラク戦争賛成が四十九カ国にたいし、反対や同意しなかった国は百四十二カ国。多くの国々で戦争に反対する国民的な運動が大規模に起こりました。

 仏、独がイラク攻撃に昂然(こうぜん)と反対し、昨年十二月、EU(欧州連合)は、国連中心に世界の平和秩序を打ち立てる安全保障戦略を決めました。

 米国の先制攻撃戦略を批判し、「国連憲章、平和のルールを守れ」という流れはかつてないもので、確固とした流れを示すものです。

 イラクでは、抵抗と憎悪の連鎖により事態は混迷の度を深め、戦争によってテロの根絶はできないことを国際社会は知りました。

 国連ミレニアムサミットのNGO会議でも、「すべての国が日本国憲法第九条の戦争放棄の原則を自国の憲法において採択する」ことが提案されるなど、九条の存在意義が世界の流れのなかであらためて明らかになっています。

 さらに、九条の存在意義は、国内政治のなかでも確認できます。

 自民党政府は、九条に反して日米軍事同盟を結び、自衛隊をつくり、九〇年代から海外派兵に踏み出しました。しかし、九条の存在が、自衛隊の海外での武力行使に歯止めをかけてきました。これが、アジア諸国民からの日本への信頼の基盤をつくってきたことも事実です。日本は憲法九条を持つ国として平和の力を発揮すべきです。

世論調査でも

 九条改定は米国側の強い要求であり、日本を「戦争できる国」に導くものです。国民が望んでいないことは、世論調査で九条「改正」反対を表明する国民がひきつづき多数をしめていることでも明らかです。

 最近、文化人が呼びかけ人となって「九条の会」が発足し、「あらためて憲法九条を世界に輝かせたい」とのアピールが発表され賛同と運動がひろがっています。憲法九条を日本政治の中心にすえてこそ、国際社会において名誉ある地位を占めることができるのです。


「九条」をめぐる各党の見解表明

 自民党・保岡興治議員 論点整理では、自衛のための戦力保持を明記することで大多数の合意がえられた。個別的・集団的自衛権の行使に関する規定、有事やテロなど治安的緊急事態などの非常事態全般に関する規定を置くべきだとの意見や、国の防衛および非常事態における国民の協力義務の規定を設けるべきだとの意見があった。

 民主党・枝野幸男議員 国際社会とともに行動する日本へと転換させていきたい。党憲法調査会では(1)国連の集団安全保障活動に積極的に関与できることを明確にする(2)専守防衛に徹した自衛権を明記すること―などの中間提言をした。

 公明党・赤松正雄議員 第九条第一項はそのままでよい。第三項を設けて自衛隊の存在を明確にすべきだとの意見があり「加憲」すれば良い。PKOなどの「国際貢献」は積極的に行うべきだ。現状追認的な九条加憲もありうるのではないか。



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