2004年8月4日(水)「しんぶん赤旗」
いまなお、地球上には三万発近くの核兵器が蓄積され、その９５％以上を米ロ両国が保有、うち一万五千発近くがいつでも使用できる状態で配備されています。二〇〇〇年の核不拡散条約（ＮＰＴ）再検討会議で米ロなど五大核兵器国が約束した核兵器廃絶への努力は履行されておらず、逆にブッシュ米政権は新型核兵器の開発など核戦力の強化をすすめています。米シンクタンク、天然資源防衛評議会（ＮＲＤＣ）の「ニュークリア・ノートブック」（米誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』に掲載）の最新のデータや最近の報道からその実態を紹介します。夏目雅至記者
米国の保有する核兵器は今年春の推定で約一万発。このうち、七千発近くがいつでも使用できる状態で配備されています。このうち戦略核兵器が五千八百八十六発、戦術核兵器は千百二十発。一昨年明らかになったブッシュ米政権の核態勢見直し（ＮＰＲ）は、「実戦配備された戦略核弾頭」を二〇一二年までに千七百―二千二百発に削減するとしていますが、この計画はミサイルなどから外した核弾頭をいつでも使用できるように備蓄しておくもの。二〇一二年段階でも、米国は現在と変わらない約一万発の核兵器を保有することになります。
米ブッシュ政権は「使いやすい」核兵器として破壊力が数キロトンから数十キロトンの「小型核兵器」の開発を進めています。
ロシアの保有する核兵器は一万七千八百発と推定されます。このうち七千八百発が実戦配備されているとみられ、うち四千四百発が戦略核兵器、三千四百発が非戦略核兵器。ロシア政府は昨年十月、侵略行為に対抗して核兵器を使用する可能性を高めた新軍事ドクトリンを発表しました。
二〇〇二年の米ロ戦略攻撃兵器削減条約は二〇一二年までに、配備された戦略核弾頭を両国がそれぞれ二千二百発以下に削減することを定めています。
英労働党政権は九八年に、爆撃機に搭載していた戦術核兵器を廃棄し、実戦配備する核兵器をトライデント型原子力潜水艦配備の海洋発射弾道ミサイル用核弾頭二百発以下とすることを宣言しました。原潜四隻のうち一隻が常にパトロール任務についており、一隻には四十八発の核弾頭が搭載されています。
フランスの核兵器は三百五十発と推定されます。うち、二百八十八発が三隻の原潜に搭載された四十八基の中距離ミサイルに装着されています。フランスは地上発射弾道ミサイルと海軍爆撃機の核爆弾を廃絶しています。
中国の核兵器は現在約四百発と推定されます。このうち、二百五十発が戦略兵器で、約二十発が大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）に搭載、約百二十発が中距離ミサイルに搭載されています。また、潜水艦発射弾道ミサイル（ＳＬＢＭ）十二基を保有しているとみられます。核兵器保有国のなかで中国だけが先制不使用の立場を表明しています。
インドは核兵器四十五発から九十五発分の核分裂物質を生産し、核兵器三十発から三十五発を保有すると推定されます。パキスタンも三十発から五十二発分の核分裂物質を生産、二十四発から四十八発の核兵器を生産したと推定されています。両国はことし六月の核問題専門家協議、外務次官協議などをへて対立していた両国間関係の改善に向かっています。
イスラエルは、公式には核兵器保有を確認も否定もしていません。しかし六七年に最初の核兵器を生産、約二百発を保有しているといわれています。
《北朝鮮》は六カ国協議のなかで核兵器開発計画の放棄を迫られていますが、「核抑止力を保持している」などと発言、二〇一〇年までに二百発以上を製造する能力を有しているとみられています。
《イラク》はフセイン政権下の七〇年代に核兵器製造計画を開始しましたが、湾岸戦争や国連査察をへて計画を停止しました。《イラン》は独自の核兵器能力を追求しているといわれ、ことし初め、英仏独の説得でいったん国際原子力機関（ＩＡＥＡ）の査察強化を受け入れましたが、六月になってウラン濃縮に使用する遠心分離機の組み立てを再開すると通告しています。
《南アフリカ共和国》は六発の核兵器を製造しましたが、アパルトヘイト（人種隔離政策）廃絶前夜の九一年に核兵器計画を中止し、九三年に公表しました。
《リビア》は昨年十二月、核兵器を含む大量破壊兵器の開発計画の放棄を明らかにしました。
《ブラジル》は九〇年に核兵器計画放棄を公表、《アルゼンチン》も八三年に軍事政権下での核兵器計画を終結しました。
旧ソ連の《ウクライナ》、《ベラルーシ》、《カザフスタン》はソ連崩壊後、配備されていた核兵器を九六年までにロシアに移管しています。
このほか、《ルーマニア》、《アルジェリア》、《スウェーデン》も過去にあった核兵器開発計画を放棄した国とされています。
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