日本共産党

2004年8月3日(火)「しんぶん赤旗」

中国人少年 翻訳に挑戦

日本児童文学を今夏2冊目


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翻訳した本を手にする劉子亮君(中央)と両親

 日本に五年間滞在した中国人少年が、帰国してから日本の児童文学を翻訳、いま二冊目に挑戦しています。

 この少年は北京に住む清華大学付属中学校二年生の劉子亮君(14)。一九九六年三月、日本の大学院で学ぶことになった両親とともに六歳で京都市へ来て、市立上賀茂小学校へ入学しました。二〇〇〇年に父の劉暁峰さん(41)が元の職場の清華大学へ復帰。翌年一月、五年生の子亮君も父のもとへ戻りました。

 翻訳のきっかけは昨年に中国を襲った新型肺炎(SARS)騒動でした。学校は長期休校、住まいのある清華大学の構内からの外出もできません。子亮君がパソコンゲームに明け暮れているのを見た暁峰さんが「何かまとまったことをしてみなさい。中国語の勉強にもなるから翻訳はどうか」と助言。子亮君は日本で愛読した『明日へ!ぼくたちの冒険』(坂井のぶ子著=国土社)を選んで翻訳にとりかかりました。女子中学生が主人公の物語です。

 難しい言葉は電子辞書で引き、暁峰さんにも相談。仕事の関係で京都にとどまっていた母・秦嵐さん(41)も、休みには北京へ来て助言しました。

 こうして昨年五月から約二カ月かけて翻訳が完成。この原稿が清華大学に来ていた編集者の目にとまり、『了不起的劣等生(たいしたものだ劣等生たち)』という題名で湖南文芸出版社から今年一月に発行されました。

 「本が届いたときは躍りまわった」と子亮君。すでに一万部が発行され、北京の書店でも好調な売れ行きです。同級生からは「日本の中学校のようすがよくわかったよ」などの感想が寄せられています。

 母・秦嵐さんも中国での新しい仕事につくため今年四月に北京に戻ってきました。

 中国の学校は九月から新学期。子亮君は二年生を終えるこの夏休み、次の一冊の翻訳にとりかかっています。「今度も中学生を描いた小説です」(子亮君)。一日五ページを目標にパソコンに向かっています。

 中国で六年間、日本で五年間、中国へ戻って三年半―。二つの言葉について子亮君は「日本語のほうが表現力はあると思う。中国語では表現できない部分がある…」と言います。

 「将来ですか。翻訳家になるつもりはありません。美術にも関心があるし…。でも日本語も生かして自分の能力を発揮していきたい」。子亮君の「翻訳の夏」はまだしばらく続きます。

 (北京=小寺松雄)



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