2004年8月2日(月)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】ユダヤ人過激派が、エルサレム旧市街のイスラム教聖地、ハラム・アッシャリーフ(ユダヤ名称・神殿の丘)への攻撃を計画しているというニュースが今、イスラム世界で怒りをよび、出口の見えないパレスチナ紛争に新たな火種をもたらそうとしています。
ことの発端は、イスラエル紙ハーレツ七月二十五日付が同国の治安当局高官の話として報じた記事。ユダヤ人過激派が爆弾を積んだ無人飛行機を使って、ハラム・アッシャリーフのイスラム教の重要施設であるアルアクサ・モスクや「岩のドーム」への攻撃を計画したり、同地での集団礼拝への自爆攻撃を計画していることに当局が今、懸念を強めていると報じました。
過激派は、シャロン首相が計画しているガザ撤退の阻止や、パレスチナとイスラエルの衝突のいっそうの激化をもくろんでいるとしています。
記事が出る前日には、イスラエルのハネグビ警察相がテレビ番組で、「過激派が和平過程の破壊を狙って、最も危険な場所を利用する危険がある」と述べ、報道を裏付ける発言をしていました。
ハラム・アッシャリーフといえば、イスラム教徒にとっては、サウジアラビアのメッカとメディナに次ぐ第三の聖地。アラブ・イスラム世界からは次々と非難の声があがっています。
隣国ヨルダン政府の報道官は二十五日、計画を非難するとともに、「イスラエルは占領軍として、エルサレムの宗教施設を保護し治安を維持する責任を持つ」と強調。アラブ連盟(二十一カ国とパレスチナ自治政府が加盟)のムーサ事務局長も、アラブ各国と国際社会に対し、アルアクサ・モスク破壊を防ぐためにすぐさま行動を起こすよう訴えました。
イスラム諸国会議機構(OIC=五十六カ国と一機構が加盟)は二十七日に声明を発表。「アルアクサ・モスクに対する攻撃は、あらゆる地域でイスラム教徒の怒りに火をつけ、国際平和と治安の安定にとって予測できない結果をもたらす混乱を導く」「イスラエル政府は礼拝施設を守らなければならない占領当局として、(聖地への)あらゆる攻撃に対して責任を有する」と厳しく警告しました。
アラブ側の警告の一方で、ユダヤ過激派の側も敵意を隠さず、過激派指導者のイェフダ・エツィオン氏は二十六日、「イスラエルは(ユダヤ教徒が聖地とみなす)神殿の丘に回帰し、イスラム教徒はそこから手を引かなければならない」などと述べました。
イスラエル政府は攻撃計画を憂慮しているとされます。しかし、もとはといえば、二〇〇〇年九月に、シャロン・イスラエル首相が同地訪問を強行したことが現在のイスラエル・パレスチナ紛争の泥沼の引き金となっただけに、今後の事態の成り行きは予断を許さないものとなっています。