2004年8月1日(日)「しんぶん赤旗」
子育て支援策の政府計画「新エンゼルプラン」が二〇〇四年度で終わりますが、政府調査でも子育てを“つらい”とする回答が増加しています。総務省行政評価局が独自に原因を調べたところ、子育てにかかる“経済的負担”を指摘する声が多数となり、計画の実施効果に“辛口”の評価が下されました。
江刺尚子記者
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「新エンゼルプラン」は、保育、雇用環境、保健医療体制、地域や学校の環境、経済的負担の軽減、住まいづくりなど八つの重点分野で具体的な実施計画が盛り込まれています。二〇〇〇年度からの五カ年計画です。
計画前に比べ「子育ての負担感」がどう変わるのかを内閣府が調査(「少子化に関する世論調査報告書」と「社会意識に関する世論調査報告書」)しました。結果は、「子育てを楽しいと感じるときの方が多い」と答えた人は、一九九九年に54・9%だったのが、二〇〇二年には51・1%へ3・8ポイント低下。逆に、「つらいと感じるときの方が多い」は4・4%から5・9%へ1・5ポイント増えています。
この間の少子化の推移を見ても、一人の女性が一生のうちに生む子どもの数(合計特殊出生率)は1・29(二〇〇三年)と過去最低にまで落ち込んでいます。現在の人口維持に必要な水準(人口置き換え水準)の2・08を大幅に下回ります。「新エンゼルプラン」が始まる前の一九九九年の1・34から0・05ポイント低下したことになります。出生数も百十八万人から百十二万人へ六万人減っています。
総務省行政評価局の調査でつらさの内容で最も多いのは、「子どもの将来の教育にお金がかかる」が51・6%でした。九九年の44・4%から7・2ポイント増加しています。「子どもが小さいときの子育てにお金がかかる」も21・8%から24・8%となっており、経済的負担感が増大しています。「新エンゼルプラン」の目的が「教育に伴う経済的負担の軽減」でしたから、まったく効果がなかったことになります。
総務省行政評価局が、これから「子どもを持ちたいと思えるようになるために特に充実が望まれている施策」について聞いたアンケート(二十―三十九歳の男女六千人を対象)で最も多かったのも、「教育に伴う経済的負担の軽減」で58・6%でした。負担の中身は「高校、大学進学の経済的負担」が圧倒的に多く65・5%となっていました。二番目が、「仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備」で46・1%。具体的には、「育児休業給付金額の充実」や「子育て時間の確保ができる職場」を求める声が切実です。
同局は「子育てにかかる経済的負担感が増大し、子育てそのものの負担感が緩和・除去されているとはいえないことが明らかにされた」と分析。「新エンゼルプラン」の政策効果にたいし厳しい評価となりました。
教育費の増大について文部科学省調査をもとに同局が作成した資料によれば、幼稚園から大学卒業までに必要な費用は、公立コース(大学は国立)で九八年の千百三十二万円から〇二年の千百四十七万円へ、私立コース(小中学校は公立)で千五百三十三万円から千五百七十八万円へ増大しています。一方、同時期の家計支出は三十二万八千円から三十万六千円へと減少(総務省「家計調査年報」)。負担感の増大を裏づけています。
同局では、公費による支援には限界があるが、「子育てに係る経済的な負担感を緩和・除去することは、少子化対策を推進する上では大きな課題」とまとめました。
一方、同じ住民アンケートで、新エンゼルプランに盛り込まれた施策の有効性を聞いたところ、保育がトップ。「実際に利用して、子どもをもちたいと思えるようになった」ものとして、「延長保育や休日保育」の64・4%をトップに、「低年齢児(ゼロ―二歳児)の保育所での受け入れ」63・8%、「幼稚園の入園料・保育料の軽減」59・3%、「一時保育」58・3%と続いています。いずれも就学前の保育園・幼稚園の関連施策に集中しています。
政府は〇四年度中に、新新エンゼルプランを策定する予定です。総務省は、文科、厚労、国交の各省にたいし、新プラン策定にあたり、子育てに伴う経済的負担感の緩和や、子育て中の専業主婦家庭の負担感の緩和に資する施策の充実を求めた意見書を通知しました。
日本共産党は4つの対策 少子化社会の克服へ 国民のくらしを支え、人間らしい生活をとりもどす政治、経済、社会への転換こそ、少子化社会を克服する道です。そのために日本共産党は、次の四つの対策にとりくみます。 (1)長時間労働をなくし、家庭生活との両立ができる働き方に。賃金保障を六割にひきあげるなど、育児休業を男女ともにとりやすくする。 (2)若者に安定した仕事をつくる。正規雇用を拡充し、派遣や契約、パート・アルバイトと一般労働者との均等待遇をはかる。 (3)男女差別や格差をなくし、女性が働き続けられる、力を生かせる社会にする。 (4)出産・育児と仕事の両立を応援し、すべての子どもが豊かな乳幼児期をおくれるようにする。 |