2004年7月31日(土)「しんぶん赤旗」
日航706便事故裁判の判決で、業務上過失致死傷罪に問われた機長が無罪になったのは当然の結果といえます。日本乗員組合連絡会議(日乗連)が「誤った事故調査報告書にもとづく誤った起訴」と主張していた通りとなりました。
マクドネル・ダグラス社のMD11型機は、燃費を良くするために水平尾翼を小さくした結果、不安定性が増し、縦安定増強装置をつけた上に、さらに安定化機能をつけ加えるなどの機体特性が、今回の事故と大きく結びついていたと見られています。
しかし、判決は機長の事故関与を認めつつ、「大事故に至ることまで予見できなかった」というように、法律判断はしても事故原因に関するMD11の機体特性や技術的な事実認定は避けたということができます。また、客室乗務員がシートベルト着用の指示が出ていたにもかかわらず、業務を続けて死亡した問題については、会社として安全を最優先させるよう徹底する必要があります。
航空機事故はメーカーの機体設計や製造、ハイテク機器、整備、操縦、管制、気象等さまざまな要因が重なって起きています。706便事故も、日乗連の分析では機体の操縦特性、スピードブレーキの影響、暖かい空気と冷たい空気の逆転層の影響等が重なって起きたと見られています。
今後大きな問題となるのは、判決が事故調査報告書を航空事故の刑事責任の追及に利用できる余地を残した点です。国際民間航空条約の第13付属書は「事故調査の唯一の目的は将来の事故防止で、罪や責任を課すためではない」と規定し、入手したすべての記録や情報・証言を調査以外の目的で使用することを禁じています。
ところが、判決は事故調査報告書は「公表された記録」として、刑事裁判に使用することについて容認し、同条約と相反する判断をしました。
これに対し、国際定期航空操縦士協会(IFALPA)は判決後にコメントを発表。「航空事故発生後の日本の姿勢における重大な問題は残ったままである」「日本の法体系を改訂することを再度、日本政府に要請する」と批判するなど、早くも、国際的な波紋が広がりつつあります。
米田 憲司記者