日本共産党

2004年7月20日(火)「しんぶん赤旗」

平和、友好、対話を築こう

東アジア規模での一致は可能

マレーシア戦略国際問題研究所
ノルディン・ソピー理事長に聞く


 「必要なのは、平和と友好、対話です」。マレーシアの戦略国際問題研究所(ISIS)のノルディン・ソピー理事長は、自主自立と繁栄のアジア、世界の平和の確立のための原理としてこう強調します。クアラルンプールでのISIS主催の東アジア会議に参加し、ジャカルタでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議を取材した機会に、いま東アジア共同体構想を積極的に提唱するソピー氏に、同構想の現状と展望を聞きました。(クアラルンプール=三浦一夫)


東南アジア諸国連合と
東アジア共同体の展望は

写真
ノルディン・ソピー氏

 ―六月の東アジア会議は今回で二回目。ASEAN外相会議は東アジア共同体(EAC)の目標を再確認し、その中で東アジア会議の活動も公式に位置づけました。EACへの動きは活発化していますね。

急速に進む

 ソピー ここ数年間、東アジア共同体をめざす動きが急速に進んでいることに私自身びっくりしています。EACの構想は十三年前にマハティール首相(当時)が提起したものですが、三、四年前に私たちがそれを再び持ち出したころは、中国も含めて関係諸国の多くは否定的な反応でした。それが今では様変わりです。

 東南アジア諸国が一九九七年の経済危機を克服し、順調な回復をみせる中で、ASEAN諸国と周辺諸国の間で爆発的な勢いで経済協力と統合の動きが進んでいますが、そうした背景がものをいっていると思います。

 日本政府も東南アジア友好協力条約(TAC)に加入し、韓国も近く加入すると表明しています。大歓迎です。東アジアという考え方の発展と前進ですね。

 そのことは、東アジア会議の討議にも具体的な形で現れていました。

 ―東アジア会議でマレーシアのアブドラ首相は、東アジア共同体の中身として、平和共同体、経済共同体、外交共同体をあげました。ASEANは、安保、経済、社会・文化の共同体を目指していますが、どう違うのでしょう。

 ソピー 共通した部分もありますが、同じではありません。たとえば、安保共同体ではなく、平和共同体というのは、東アジア規模では、ASEAN以上に各国間の関係は複雑で、外交政策も違う中で、平和と友好、対話という原則では一致できるはずだからです。

対話を優先

 そこには単独行動主義ではなく多国間主義、軍事優先ではなく対話優先という主張もあると思います。

 また、東アジア共同体はASEANの経験と実績をもとに提起しているものですが、同時にただ単純にASEANを拡大するというのではない、東アジアという規模で地域の国際秩序を考えようというのです。

 ―その点で、ジャカルタでの政府レベルの協議では複雑な面もありました。東アジア首脳会議開催問題で場所や日程は決まらなかった。インドネシア外務省のマルティ報道官は、一歩一歩といい、ASEANの存在が薄くなってはならないと強調していました。

 ソピー いろいろな意見が出されたのはむしろいいことです。明らかになった問題を今後じっくり話し合えばいいのです。これまでそうやって団結を固めてきたのですから。必ず、一致点に達します。それがASEAN流なのです。

 東アジア首脳会議についてマレーシアは二〇〇五年にとの立場です。来年のASEAN首脳会議はマレーシアでやりますが、まだ時間があります。

 ―問題点の一つが、どの国までEACの仲間にするかということですね。一部には米国も入れようという声もありますね。

共同の仕組み

 ソピー 私たちの目的は排他的な共同体をつくろうというのではないし、反米共同体をつくろうというのでもありません。

 東アジア共同体をというのは、眼前の課題で協力するだけでなく、現在の国際情勢のもとで、国際情勢の原理原則を守り、みんなで合意を大切にし、相互に尊重しあい、相互に思いやりを発揮し、援助しあう、そういう共同の仕組みをつくろうというのです。

 メンバーということでは、まずこれまで論議をおこなってきているASEANと日中韓の三国でというのが私たちの考えであり、ASEANの考えです。その範囲で共同体の中身を深め、それから広げるかどうかを考えればいい。

 米国はEACの対象ではない。私たちは東アジアによる、東アジアのための共同体(コミュニティー)をといっているのです。アメリカン・コミュニティーではないのです。

 ―EAC構想と日本の役割についてですが、日本共産党は、東アジア共同体の構想を支持しながら、米国一辺倒の外交から自主独立の外交への日本外交の根本的な転換、真にアジアを重視する外交の確立、さらにその中では過去の日本軍国主義の誤りを明確にするよう主張しています。

アジア重視

 ソピー 日本政府が、TACに加盟し、また昨年末には日本・ASEAN首脳会議を開き、東アジア共同体の方向を明確にしたことを高く評価しています。日本は米国と同盟関係にありますが、それ自体が東アジア共同体の阻害要因になるわけではないはずです。同じような国はASEAN内部にもあるのですから。しかし、日本にはアジアの一員だという認識に立って、もっとアジアを重視してもらいたいとは思っています。

 日本には東アジア共同体づくりで大いに積極的役割を果たしてもらいたい。しかし、そのことは、日本に指導者役を務めてほしいというのではありません。どこかの国が支配する、主導権を握るという仕組みではダメだというのが、ASEANが経験を通じて築いてきた原則です。

 他方、日本が中国との競争意識からEACに対応するというのであってもならないと思います。

 EACやアジアと日本の関係でいえば、日本の国内であなたがたのような勢力がもっと力をつけてほしいと思いますね。


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