日本共産党

2004年7月19日(月)「しんぶん赤旗」

事件リポート

国松長官銃撃 オウム幹部逮捕

公安捜査に疑問の声


 一九九五年三月の国松孝次警察庁長官(当時)銃撃事件に関与した疑いが強まったとして、オウム真理教(現アーレフ)の元幹部らが七日、警視庁公安部と南千住署捜査本部に逮捕されました。発生から九年余りたって参院選投票日直前になって動き出した事件。肝心の実行役を特定しないままの逮捕だったことなど捜査に「不可解な点が多い」との指摘が出ています。井上 歩記者


実行役 いまだ特定せず

“端本説”に「根拠薄い」の指摘も

写真
国松孝次警察庁長官(当時)が銃撃された現場マンションEポート入り口=1995年3月30日、東京都荒川区南千住

 今回逮捕された四人は、元警視庁巡査長の小杉敏行容疑者が罪を認める供述をしている以外は、容疑を否認しています。警視庁公安一課長は七日午前の記者会見で銃撃実行役も「今の段階では明らかでない」と特定していません。

 捜査本部が今回の逮捕の決め手にしたのは、小杉容疑者が所持していたコートの小さな焦げ跡。クリーニングに出されていましたが、昨春、これを兵庫県の大型放射光施設「スプリング8」で鑑定した結果、長官銃撃の「銃弾と矛盾しない」極めて微量の金属成分が検出されました。

供述が二転三転

 小杉容疑者はこのコートを「別の信者に貸した」と供述。その信者とは、坂本堤弁護士一家殺害事件などで死刑判決を受け上告中の端本(はしもと)悟被告(37)=オウム「諜報(ちょうほう)省」の元信者=に「似た男」だったとされています。現場近くで端本被告が目撃されたという報道も。

 逮捕当日、「実行役、端本被告か」の見出しで、「捜査本部は端本被告を実行役と見ている」と報じた新聞もありました。

 しかし、小杉容疑者は過去に「自分が国松長官を撃った」「銃は神田川に捨てた」との供述をしたことがあり、その後、めまぐるしく供述をかえるなど矛盾が多く、検察庁が立件を見送っていました。

隠す理由がない

 端本被告を知る人たちからは、端本実行役説に疑問の声が出ています。

 宗教学者の浅見定雄・東北学院大名誉教授は九日、端本被告から驚きの言葉をつづったはがきを受け取りました。「先生、驚かれているでしょうが、私もです。カフカを地で行ってる感じです」と書かれていました。端本被告は自分の知らないところで自分の裁判が進んでいってしまうという意味で自分の立場をカフカの小説「審判」になぞらえました。

 浅見名誉教授は二〇〇一年から端本被告と文通、接見をしてきました。「彼は死刑判決に『満足している』といい、江川紹子さん襲撃事件も訴追されていないのにみずから話した。いま殺人未遂が加わっても何もならないのに、事件を隠す理由がない」と語ります。

 VXガス攻撃をうけた被害者であるオウム「家族の会」の永岡弘行会長も長官銃撃事件への関与を否定する端本被告と接見し、「結論付けていうことはできないが、常識で考えても、いまの段階で彼が事件を隠す必要はない」と話します。

 端本被告の弁護人によると、七日午前の接見で銃撃事件容疑者の逮捕を聞いた端本被告は、「オウムだったんですか」と驚き、午後に自分が実行役とされていると聞き、「なんで自分か」と驚いたといいます。公安警察主導の今回の捜査には根拠がうすいとして刑事警察の関係者からもさまざまな疑問が出ています。公安部は一九九六年に銃撃事件で小杉容疑者の供述を得ながら、警察庁にも報告していなかったことが明らかになり、警視総監が引責辞任しました。事件の行方や今後の捜査のあり方も注目されています。


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