日本共産党

2004年7月19日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

希少動物 どう守る

絶滅の危機 ジュゴン、アマミノクロウサギ


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絶滅の危機にさらされているジュゴン(提供・鳥羽水族館)

ジュゴン

人魚の海に米軍基地いらない

岩佐恵美参院議員

 一九九七年、人魚伝説のモデルであるジュゴンが沖縄本島の東海岸を中心に生息していることが、米軍の基地建設のための調査で明らかになり、世界北限のジュゴンの生存が、大きな注目を集めました。

 ジュゴンは、唯一の大型の草食性海棲哺乳類(かいせいほにゅうるい)で、一日に三十キロもの海草を食べ、成獣の体長は二―三メートル、体重二五〇―三〇〇キロになります。ジュゴンは国際的には絶滅危ぐ種であり、日本では、天然記念物に指定されていますが、種の保存法の指定種にはなっていません。


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 沖縄のジュゴンは、沖縄地域の開発が原因で餌場の藻場が破壊されたり、魚網にかかって死ぬ事故が頻発するなどによって個体数が激減し、現在では多くても五十頭程度しかいないとみられ、絶滅の重大な危機にさらされています。

 にもかかわらず、つい最近までどの省庁も積極的にジュゴン保護のために動こうとしませんでした。実は、一九九二年「種の保存法」の国会提出にあたって、ジュゴンを種の保存法の対象にしないという覚書を、環境庁、水産庁がかわしていたのです。つまり、環境サイドからジュゴン保護のために手を出せなかったのです。

 二〇〇一年三月、この問題を初めて国会で追及した私の質問に、谷津農水大臣(当時)が「覚書からジュゴンをはずす」と答弁、事態は一変しました。

 その直後、国内外のNGOをはじめ、関係者の積極的な働きかけの下、環境省は沖縄のジュゴンの三カ年調査に着手。その結果、米軍基地建設予定地で、ジュゴンの海草の食(は)み跡や糞(ふん)が発見されるなど、まさに辺野古(へのこ)の海が、ジュゴンの重要な生息地であることが明らかになったのです。

 それでも、基地建設を強行しようとする日本政府に対し、国の内外から、とりわけジュゴンに似たマナティーを大事にするアメリカからも批判の声が高まっています。人魚の海をまもれのたたかいの輪は、日本から世界に大きく広がり、いま正念場を迎えています。


アマミノクロウサギ

マングース、乱開発で激減
環境団体、共産党 保護活動に力

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希少なアマミノクロウサギ(提供・奄美野生生物保護センター)

 世界中で鹿児島県の奄美大島と徳之島だけに生息している希少なアマミノクロウサギ。「近い将来における絶滅の危険性が高いもの」として分類されている絶滅危ぐIB類に認定されています。名前の通り黒褐色の体毛に短い耳と手足が特徴です。

 一九七九年に毒蛇ハブの駆除のため三十頭のマングースを放したところ、二十年で一万頭に増えてしまい、逆にクロウサギは二万四千匹から三千五百匹に減少しました。

 二〇〇〇年からのマングース駆除事業で報奨金を出すなどしておよそ三千頭にまで減りましたが、生息密度が減ったため捕獲するのが困難になっています。近年、各自治体もマングースの駆除にかんする条例を定めるなど力を入れる一方で、補助金を削るという地方財政の厳しさもうかがえます。


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 クロウサギの減少のもう一つの原因は乱開発です。マングースの陰に隠れていますが、公共事業の影響は少なくありません。マングースが放される以前から林道の拡幅舗装工事やトンネル工事などでクロウサギの生息域は減り続けました。鹿児島県は現在もクロウサギの生息域にダムを建設中で「ダム計画地に生息する貴重動植物」として二十種以上の絶滅危ぐ種や天然記念物をホームページで紹介しています。

 環境保護団体はクロウサギを原告にして自然環境保護を訴える裁判を起こしています。日本共産党奄美地区委員会でも開発をする際は環境調査を十分に行うよう県に求めています。

 奄美にはクロウサギのほかにもたくさんの絶滅危ぐ種がいます。豊かな自然のおかげで多種多様な生物が生きてきた島が環境破壊や移入種によって様変わりをしようとしています。地元の日本共産党はクロウサギが暮らしていける環境を守るためにこれからも活動を続けようと決意しています。

 党奄美地区委員会 児玉 拓


にぎやかな生物環境こそ
希少種が生き残る条件

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岩佐参院議員

 私が最初に国政の場で取り組んだのは、シマフクロウの保護でした。

 その後、鳥海山のイヌワシ、都市近郊各地域のオオタカ、白神のイヌワシ、岩手タイマグラや川辺川のクマタカ、奄美のアマミノクロウサギ、沖縄のヤンバルクイナやジュゴン、トカゲハゼなどの干潟に棲(す)む生き物、北海道のイトウ(淡水魚)、オオワシなどですが、いま食物循環の頂点に位置する大型の動物、鳥たちが各地で絶滅の危機にさらされています。

 希少種というのは、多様な種がにぎやかに豊かに生存できている環境でこそ、餌に困らず、安心して子育てができ、子孫を残せるのです。

 普通の、希少でないと思われる多様な種がたくましく生きてきた環境が損なわれずに残されていることこそが、実は希少種にとってかけがえのない条件なのです。道路、ダム、基地、港湾施設など自然環境破壊の大手ゼネコンのための事業が、希少種が棲める環境を次々と破壊しています。これにストップをかけることが、二十一世紀に生きる私たちに課せられた大きな課題だと痛感します。手をこまねいてはいられません。


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