日本共産党

2004年7月10日(土)「しんぶん赤旗」

国際司法裁 分離壁は違法

イスラエルに解体勧告

国際社会にも行動促す


 【パリ=浅田信幸】オランダのハーグにある国際司法裁判所は九日、イスラエルがヨルダン川西岸に建設している分離壁を「国際法違反」と断定し「解体」を勧告する意見を示しました。

 同裁判所の勧告的意見は法的拘束力を持ちませんが、国際法の最高権威の判断として、大きな影響力を持ちます。これによりイスラエルに対する国際的圧力が高まり、同国がさらに孤立を深めることは必至です。

 各メディアが事前に入手したテキストによると、勧告的意見は「パレスチナ占領地とくに東エルサレム周辺でのイスラエルによる壁の建設は国際法に違反する」と明言、イスラエルは壁建設作業の「停止」と既設の壁の「解体」の「義務を負う」と断定しました。また壁建設で被害を受けたパレスチナ人は「補償」されるべきだとの判断を示し、各国政府は「壁建設により生じた不法な事態を承認しない義務を負う」と指摘。国連安保理と国連総会に対しても「不法事態を終わらせるために」取るべき行動を検討するよう勧告しました。

 裁判所の審理は十五人の裁判官によっておこなわれ、同勧告的意見に反対したのは米国人裁判官ただ一人でした。

 国際司法裁への提訴は昨年十二月の国連総会決議に基づくもの。今年二月に口頭弁論が行われましたが、イスラエルは陳述を拒否し、裁判所に提出した意見書で「自爆テロ防止に壁の建設は必要だ」と主張。シャロン政権は今回の裁判所の判断にもかかわらず建設を継続する方針を明らかにしています。

 分離壁は、イスラエル閣議が二〇〇一年七月に承認、〇二年六月から第一期建設工事が開始されました。昨年十月には総距離約七百三十キロにおよぶ計画全体が閣議決定されました。現在、西岸北部とエルサレム周辺を中心に約二百キロが完成。市街地では高さ八メートルのコンクリート壁が、その他の地域では電気感知式フェンスが設置されます。分離壁はヨルダン川西岸内に深く入りこみ、パレスチナ人の農地が接収されただけでなく、生活に大きな影響を与えています。

 国際司法裁判所 国連の主要な常設司法機関。一九四六年設立。所在地はオランダのハーグ。国籍の違う十五人の裁判官(任期九年)で構成されます。加盟国間の紛争を処理し、加盟国は判決に従う義務があります。国連総会と安全保障理事会はあらゆる法律問題で同裁判所に勧告的意見を求めることができます。




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