日本共産党

2004年7月1日(木)「しんぶん赤旗」

自衛隊50年

米の先制攻撃戦略支える軍隊へ

“有志連合”の一翼担う


 七月一日、自衛隊は創設五十年を迎えました。憲法九条を踏みにじってつくられた自衛隊はこの半世紀、米軍のアジア戦略を支える従属の軍隊として、飛躍的な強化を遂げてきました。そしていま、米国の先制攻撃の戦争を世界規模で支える軍隊に変ぼうしようとしています。これを許していいのかが、現在たたかわれている参院選でもきびしく問われています。



地図
軍事予算(2003年)の
各国比較(単位はドル)
 (1)米国3762億
 (2)日本414億
 (3)イギリス413億
 (4)フランス349億
 (5)ドイツ274億
 (6)中国224億
 (7)イタリア223億
 (8)サウジアラビア184億
 (9)インド162億
 (10)韓国148億
『ミリタリー・バランス』
(国際戦略研究所 2003年―04年版)から
 
自衛隊の主な現有兵力
▼陸上自衛隊
 兵員15万8千人
 90式戦車247両
 74式戦車780両
▼海上自衛隊
 兵員4万6千人
 護衛艦54隻
 潜水艦16隻
 P3C哨戒機99機
▼航空自衛隊
 兵員4万7千人
 F15戦闘機203機
 F2戦闘機45機
(※)兵員は2004年度末までの定員。装備は、03年9月現在

 六月二十八日、イラクに派兵されている自衛隊は史上初めて、多国籍軍への参加に踏み込みました。

 政府高官は「五十年前には、いまのような事態は想像もつかなかったことだ」と語ります。

 武力行使を伴う多国籍軍への参加は、歴代政府が「憲法上許されない」と繰り返してきたものです。米軍のイラク侵略戦争と軍事占領に加担・合流するため、戦後初めての戦地派兵となった同国への派兵につづく、憲法じゅうりんの歴史的な暴挙です。

 自衛隊は、イラク戦争と軍事占領を進めてきた“有志連合”軍の司令部機構(イラク連合村)が置かれる米中央軍司令部(米フロリダ州)や、バグダッドの占領軍司令部にも幹部を常駐派遣。さらに、イラク多国籍軍への参加によって、その「作戦上の統制」(イラク駐留米軍のキミット副司令官)下に置かれることになりました。

 在日米軍のワスコー司令官は四月、自衛隊のイラク派兵について「日米同盟は全世界の平和と安全の要」になったと誇りました。これまで「日本防衛」を建前にしてきた自衛隊はいまや、米軍の先制攻撃の戦争を遂行した“有志連合”軍の一翼を担うところにまできているのです。

深化つづける日米一体化

グラフ

 米軍の補完戦力として創設された自衛隊の歴史は、日米両軍の一体化を深めてきた歴史でもあります。

 日米共同演習は、自衛隊発足翌年の一九五五年から海自が実施。七八年には空自、八一年からは陸自も開始し、拡大してきました。米軍との共同使用基地も急増させてきました。(グラフ)

 装備の面でも、海自は米空母の護衛を主任務にする護衛艦を五十四隻も保有。このうち四隻はイージス艦で、米国以外で保有しているのは日本とスペイン(一隻)だけです。

 政府は昨年末、敵の弾道ミサイルを迎撃するブッシュ米政権の「ミサイル防衛」への参加を決定。米国の核戦略の絶対的優位を確保し、報復の心配なく先制攻撃を可能にする同システムに自衛隊を組み込み、日米両軍の一体化を新たな段階に引き上げようとしています。

海外派兵型の装備次々と

グラフ

 同時に、自衛隊は、九〇年代以降の海外派兵の強行・拡大(地図)にともなって、その作戦能力を高める装備を次々に導入してきました。

 九八年に一番艦が就役し、現在、三隻を保有する大型輸送艦「おおすみ」型(八、九〇〇トン)は、イラクや東ティモールへの派兵など、海外遠征任務を次々に展開しています。

 戦闘機の海外侵攻を可能にする空中給油機は二〇〇〇年に四機の導入を決定。今年度予算には、イラク戦争で米戦闘機が多用した精密誘導爆弾の導入も盛り込みました。

 同年度予算に計上したヘリコプター搭載護衛艦=“ヘリ空母”には、空母型の全通甲板を採用。「日本政府が空母ではないと強調しても、海上自衛隊にとって初めての戦力投射能力をもつ資産だ」(英国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』二〇〇一―〇二年版)と評されています。

軍事態勢再編同盟軍を動員

写真

イージス艦「きりしま」

 ブッシュ米政権は昨年十一月、イラク戦争に象徴される先制攻撃戦略をより実行しやすくするため、世界規模で軍事態勢の見直しをすると発表。ファイス米国防次官は、米下院での議会証言(六月二十三日)で、その柱の第一に「同盟国の役割の強化・拡大」をあげ、同盟軍を動員する意図をあらためて明らかにしています。

 米太平洋海兵隊のグレグソン司令官は二月発表の論文で、将来の日米両軍のあり方について「ともに訓練し、ともに展開し、ともに生活する」と強調しています。




参院選でも争点

自民

 派兵の恒久法づくり主張

民主

 海外共同基地建設も提案

 小泉内閣は昨年末から、自衛隊の任務を「日本防衛」から「海外派兵」に重点を移す新たな軍事計画の策定作業を始めています(「防衛計画大綱」の見直し)。これに呼応して、自民・公明・民主各党の国防族議員らは、米国の先制攻撃戦略を支える自衛隊の海外派兵型軍隊への改造、新たな軍拡をあからさまに主張しています。

 三党の国防族議員でつくる「安全保障議員協議会」(会長・瓦力元防衛庁長官)は昨年、「軽武装、経済優先をうたった(戦後の)『吉田ドクトリン』を乗り越えた新しい防衛戦略」を提唱。海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使容認をはじめ、米軍がイラク戦争の火ぶたをきった巡航ミサイルの導入や、「非核三原則」(核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず)の見直しまで求めています。

 今年五月には、ワシントンでの「日米安保戦略会議」で、同協議会の額賀福志郎自民党政調会長が「日米両国のグローバル(地球的規模)な協調」を訴え、そのための「自衛隊の海外派遣も含む国際協力に関する恒久的な法律を制定すべきだ」と主張しています。

 さらに、民主党の前原誠司衆院議員は、自衛隊が南シナ海、マラッカ海峡、インド洋、ペルシャ湾を米軍などと共同パトロールすることも提案。そのために「シンガポールとか、インド洋のアンダマン海(インドのベンガル湾東部)の島に基地をつくるのも一つの考え方」と、海外での共同基地の建設まで提案しています。

日本共産党

 派兵やめ抜本的軍縮を憲法9条の改悪に反対

 日本共産党は、今回の参院選政策のなかで「アメリカに追従した『海外派兵国家』の道をつづければ、日本はアメリカとともに世界の平和に挑戦することになり、世界とアジアから孤立するばかり」だと主張。「『海外派兵国家』の仕組みづくりをやめさせ、有事法制・海外派兵法の発動を阻止し、抜本的な軍縮をすすめる」と訴えています。

 また「(憲法)9条改悪のねらいは、…日本をアメリカとともに公然と『海外で戦争をする国』にしてしまうこと」と指摘。「憲法改悪に反対し、平和原則をまもるという一点での国民の共同を広げます」と強調しています。


“自主憲法”の名でいっそうの従属化

 米占領下、米軍の命令によってつくられた自衛隊の前身・警察予備隊――。その発足(一九五〇年)にたずさわったコワルスキー米軍事顧問団幕僚長は「『時代の大うそ』が始まろうとしている。…人類の政治史上、おそらく最大の成果ともいえる一国の憲法が、日米両国によって冒涜され蹂躙されようとしている」(『日本再軍備』)と述べました。

 自衛隊の五十年は、米国の圧力で、憲法九条のじゅうりんが極限にまですすんだ歴史でもありました。

 九〇年代に強行された自衛隊の海外派兵の拡大のもとで、戦後直後から米国が一貫して追求してきた改憲の動きも新たな段階に入っています。

 二〇〇〇年十月には、米国のアーミテージ現国務副長官が中心になってまとめた報告書が「日本が集団的自衛権(の行使)を禁じていることが(日米)同盟協力の制約になっている」とし、憲法が禁じている集団的自衛権の行使=海外での武力行使を公然と要求。「米国と英国の特別な関係を日米同盟のモデルとみなす」とし、日本も英国のように米国とともに「海外で戦争ができる国」にせよと迫りました。

 これに呼応して自民・公明・民主の各党はいま、いっせいに改憲を競い合っています。

 各党とも「日本国、日本人のアイデンティティを憲法の中に」(自民党「論点整理」)「憲法を国民の手に取り戻す」(民主党憲法提案「中間報告」)と“自主憲法”を装っています。しかし、その実態は米国への従属憲法づくりにほかなりません。

 なお、社民党は九五年の村山内閣時代(当時、社会党)に「自衛隊合憲」を打ち出しましたが、この方針はいまだに清算されていません。


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