日本共産党

2004年6月27日(日)「しんぶん赤旗」

六カ国協議

「核凍結」具体化を議論

濃縮ウランで米朝対立


 【北京=小寺松雄】六カ国協議閉会後の記者会見では、王毅議長(中国)にも、日本の藪中代表にも「声明に『核凍結』という言葉が入らなかったのはなぜか」という問いが投げかけられました。「ほんの入り口で、問題はこれから」という藪中代表の答えに、「凍結を目標にしているわけではない」(バウチャー米国務省報道官)という米国の立場のなかで、「核凍結」という言葉一つとってもその内容を特定できない難しさが、にじみ出ていました。

 今回の協議では、「非核化の第一段階」である事実上の「核凍結」へ議論が進み始めたところに大きな意義があります。

 藪中代表は会見で「第一歩」という言葉を何度か口にしました。

 何よりも今回は、北朝鮮と米国といういわば当事者の両国が、初日に具体的提案をしたうえで、二日目に両国の二時間半の協議を行ったのが特徴です。

 両国協議の全容はまだ明らかではありませんが、両国の主張は、突き詰めれば次のようになります。

 米国…北朝鮮が完全な核放棄を確約すれば、米以外の四カ国が重油支援。三カ月の間に査察を受け入れ、完全な核放棄に着手すれば、暫定的な安全保証をする。

 北朝鮮…米国が実際の行動で北への敵視政策を変更するなら、あらゆる核兵器計画を放棄する。

 米国は冒頭発言では、これまでのような「検証可能で、後戻りできない完全な核放棄」の言葉を使いませんでした。

 北朝鮮の玄学峰報道官は二十五日深夜になって、北京の大使館前で緊急に声明を読み上げました。最後の段階で北朝鮮の真意を説明しておきたいという気持ちの表れといえます。玄報道官は「米国が『完全な核計画の放棄』要求を撤回すれば」という条件付きながら、「核兵器計画の放棄」に言及しました。内容は「核兵器生産、移転、実験をしない」という具体的なものです。

 「第一段階」の目標を「核兵器計画廃棄」と定め、その具体的措置と「補償」が前進していくならば、北朝鮮の今後の態度に変更がある可能性もあります。

 九月の第四回協議までの作業部会の任務は、「非核化の第一段階の措置の範囲、期間および検証、ならびに第一段階の対応措置」を定めるという、実質的な内容を伴ったものです。

 三回の協議の議長総括で示された精神を受け継ぎ、「相違を縮小する」(議長声明)突っ込んだ話し合いが何よりも求められています。


濃縮ウランで米朝対立

 第三回六カ国協議で各国は具体策をテーブルの上にのせ、実質的な討議へ一歩踏み出しました。濃縮ウラン、核の平和利用など米国と北朝鮮の対立点を解決していくことが今後の課題です。

 米国が北朝鮮に要求しているのが「完全、検証可能、後戻りできない」核放棄。今回、米国代表のケリー国務次官補は冒頭発言でこの表現を使いませんでしたが、米国の基本方針は変わっていません。

 北朝鮮代表の金桂冠外務次官は冒頭発言で米国にこの要求を放棄するよう主張しました。「完全…」の要求が濃縮ウランを利用した核開発、核エネルギーの平和利用の放棄を含んでいるためです。

 一九九四年の米朝枠組み合意で対象になったのは寧辺の黒鉛減速炉の使用済み核燃料を再処理して抽出可能なプルトニウムでした。濃縮ウラン問題は二〇〇二年十月、ケリー国務次官補が訪朝した際、北朝鮮側が計画を認めたと米側が言い、以来米朝間で真っ向から対立しています。北朝鮮は濃縮ウラン計画の存在そのものを否定しています。

 プルトニウムも濃縮ウランも核兵器の材料になりうる物質であり、その扱いは「朝鮮半島の非核化」という六カ国協議の目標を実現するうえで避けて通れない問題です。ただし米国は、中国などから北朝鮮の濃縮ウラン疑惑の根拠を示すよう求められていますが、これまで具体的な証拠を示していません。米国、北朝鮮双方が国際的に納得できる形で解決に取り組むことが必要です。

 核エネルギーの平和利用の放棄は、二月の第二回六カ国協議以降、米国が要求していることです。今回の協議の冒頭発言でケリー次官補は「共通目標は核兵器のない朝鮮半島の実現だ」という言い方で平和利用に触れませんでしたが、ここでも米国は基本方針を変えておらず、引き続き北朝鮮との争点になっています。

 議長声明では濃縮ウラン、平和利用といった問題を特定していませんが、各国間に意見の違いがあることを認め、「相違を縮小するためさらなる議論が必要」と述べています。今回の協議で各国の提案が出たことで今後解決すべき課題も明らかになってきました。 山田俊英記者

カット

濃縮ウラン ウランを核エネルギーとして使うために、天然ウランの中に0・7%しか含まれていないウラン235の濃度を遠心分離機などで人工的に高めたウランのこと。天然ウランに99%以上含まれるウラン238がほとんど核分裂を起こさないのに対し、ウラン235は核分裂を起こしやすい。ウラン235の含有率に応じて低、中、高濃縮ウランに分けられます。含有率20%までの低濃縮ウランは原発の核燃料に、含有率90%以上の高濃縮ウランは核兵器の材料になります。



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