日本共産党

2004年6月25日(金)「しんぶん赤旗」

米兵らの免責延長断念

拷問への国際的批判が影響

安保理内に強い反発

米国


 【ワシントン=浜谷浩司】米国は二十三日、国連安保理に提出していた国際刑事裁判所(ICC)による米兵などへの訴追免責を延長する決議案を、可決に必要な賛成が得られないとして取り下げました。ブッシュ米政権の一国覇権主義が、国際的批判の高まりで新たな敗北を喫したものです。

 決議案の可決には十五理事国中、九カ国以上の賛成が必要。しかし、米国務省のバウチャー報道官は同日の記者会見で、「理事国の同意を得られなかった」ことを確認しました。

 決議案は、米国などICC設立条約に加盟していない国が派遣した国連平和維持活動(PKO)要員に対し、同裁判所による訴追を免責するもの。米政権は、ICCが政治的意図で訴追する可能性があるとして、米国関係者への免責を要求してきました。

 決議は一年間の時限措置で、〇二年、〇三年と二度採択されました。しかし、アナン国連事務総長が「包括的免責は誤りだ」と述べるなど、特権を要求する米国への批判が根強いうえ、イラク・アブグレイブ収容所で起きた米兵による拷問が国際的批判を浴びたことで、安保理事国の間に決議案への賛成を見送る動きが広まっていました。

 バウチャー報道官は、免責を求める米国の立場は「変わらない」としたものの、「安保理が長期に分裂するような議論を避ける」ため、「これ以上議論しないことを決めた」と述べました。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部・ニューヨーク)のリチャード・ディカー国際司法計画責任者は本紙に対し、米国の取り下げ決定を「歓迎する」と表明。同氏は、「安保理内に(米国への)圧倒的な反対があった」と強調し、ブッシュ政権がこれを教訓として、「ICCを敵視する挑戦的政策を改めるよう求める」と述べました。


 国際刑事裁判所 ジェノサイド(大量殺りく)の罪、人道に対する罪、戦争の罪を犯した個人を裁くために、オランダのハーグに設立された常設の国際裁判所。同裁判所設立条約であるローマ条約(二〇〇二年七月一日発効)は、これまでに九十四カ国が批准。米ブッシュ政権は米兵が訴追される可能性があるとしてクリントン前政権の署名を撤回しました。日本は署名していません。米国は、自国民を訴追させないことを取り決めた二国間条約締結を促進しています。

 


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