日本共産党

2004年6月22日(火)「しんぶん赤旗」

北朝鮮の核開発めぐり あすから6カ国協議

積み重ねた歩み第3回の焦点は


 北朝鮮の核開発問題をめぐる韓国、北朝鮮、中国、日本、米国、ロシアの第三回六カ国協議が二十三日から北京で始まります。前回以降二回の作業部会を積み重ねての第三回協議です。朝鮮半島を戦争の発火点にせず、非核化を実現するため協議の進展が期待されます。 面川誠、山田俊英記者


次第に整ってきた形

 二月に行われた前回協議では「朝鮮半島の非核化のために努力」するとともに「核問題を対話を通じて平和的に解決」する、協議を継続することが議長声明に盛り込まれました。次回会議を六月末までに開く、作業部会を設置して協議を準備することにも合意しました。

 二回目から三回目協議に至る過程はこの合意に沿って進み、意見の違いを埋めるために話し合いを重ねる外交活動が行われました。昨年八月に開かれた初回の協議で次回の日程すら決まらず、北朝鮮側が一時は「百害無益の会談」(八月三十日外務省スポークスマン)とまで述べたことと比べると協議の形は整ってきたといえます。

 五月に開かれた第一回作業部会では、北朝鮮の非核化をめぐる米国と北朝鮮の意見の違いは埋まりませんでしたが、予定通り六月末に第三回協議を開き、それまでにもう一度作業部会を開くことに合意しました。二十一、二十二両日開かれる作業部会はこれに沿ったものです。

 協議を進めるにあたって参加各国の外交が積極的な役割を果たしています。特に初回以来中心的な役割を果たしている中国は四月十九日から二十一日にかけて北朝鮮の金正日・労働党総書記を北京に迎え、核問題について意見を交換。胡錦濤国家主席との会談で両首脳は「対話を通じた平和解決」「六カ国協議のプロセスの推進」で合意しました。

 日朝関係は被害者家族の帰国問題など拉致問題をめぐって日朝間の協議が滞る状態が続いていましたが、五月二十二日に行われた小泉首相の北朝鮮再訪問は日朝平壌宣言が両国関係の基礎であることを再確認しました。核問題では金正日総書記が「朝鮮半島の非核化が目標だ。六カ国協議を活用して平和解決に向けて努力したい」と述べました。六カ国協議の参加各国からは「意味のある成果」(韓国外交通商省スポークスマン)などと歓迎する声があがりました。

 韓国と北朝鮮の関係でも、今月三、四両日に行われた両国の第二回軍将官級会談は偶発的な武力衝突の防止、信頼醸成のための措置に合意。軍事境界線をはさんだ双方の非難宣伝が停止され、十四日には南北海軍の艦艇同士で初のテスト交信が行われました。

 これまで、おもに経済分野で進んできた南北の協力関係が今度は軍事分野に及んできたことは、六カ国協議にも積極的な影響を与えそうです。

「凍結と補償」を論議

 六カ国協議は北朝鮮の核開発放棄と同国に対する「安全の保証」を焦点に論議を重ねてきました。第一回協議は「段階的、同時的または並行的な解決」を確認。第二回協議は、問題解決のために「調整された措置を取る」ことで合意しました。

 五月の作業部会は、第一段階として「北朝鮮の核開発凍結と、それに相応する措置」をとることを確認。潘基文・韓国外交通商相は十六日の記者会見で、第三回協議の中心議題は「核凍結と補償」だと述べました。

 十三、十四日の日米韓協議をへて、米政府高官は十五日、日本のメディアに「北朝鮮が核放棄を約束すれば、エネルギー開発のための多国間支援を検討できる」と言明しています。

 核開発の「完全かつ検証可能で後戻りのない破棄(CVID)」を求める日米韓に対し、安全の保証と経済的補償を求める北朝鮮。対立が続くなかでも、解決に向けた第一段階の措置での歩み寄りがみられます。

 対立点は核廃棄の対象と「凍結と補償」の内容です。日米韓は、寧辺の核施設の廃棄に加え、六カ国協議開催のきっかけになった高濃縮ウラン開発計画を放棄するよう求めています。一方、北朝鮮は計画の存在を否定。中国は情報の公開を米国に求めています。

 北朝鮮は、凍結の「対象、検証、期間、時点」を明確にすることに同意していますが、「CVID」については「北朝鮮をイラクのように占領しようとする論理」だと反発しています。これに対し日米韓は「CVID」という表現にはこだわらない姿勢です。

 核の平和利用も争点です。米国は「北朝鮮に平和利用目的の核開発はない」と主張。発電を理由にした核開発も認めないというものです。一方、北朝鮮と中ロは平和利用の権利まで奪うことはできないと主張。韓国は「長期的に論議すべき」だとの立場です。

 北朝鮮は米国の先制攻撃戦略を批判し、「米国が敵対視政策を放棄すれば、核兵器開発計画を放棄する」と主張しています。一方の米国は「北朝鮮を侵攻する意図はなく、北朝鮮の政権交代を追求しない」との言明を繰り返しています。

 双方の原則的な主張は、二回の協議を通じて変わっていません。しかし北朝鮮は、当初求めていた米朝不可侵条約ではない「書面による安全の保証」を受け入れる姿勢も示しています。

 米政府高官は五日、ワシントンで韓国メディアに対し、「第二回協議で韓国は非常に合理的な提案をした。それは、北朝鮮が核廃棄に同意し、包括的な核凍結を開始し、国際的な検証が始まれば、米国は暫定的な安全保証に着手するというものだ」と明らかにしました。この「暫定的な安全保証」を、北朝鮮の核廃棄の進展を見ながら「書面による安全保証」にしていくというものです。

北東アジアの平和へ

 北朝鮮の核問題は北東アジアの平和に関する目下最大の問題です。朝鮮半島の非核化が実現するなら日朝、米朝の国交正常化、北朝鮮の国際社会への参加に向けて展望が開け、北東アジアの平和と安全に大きく貢献することになります。

 六カ国協議には北東アジアの五カ国と、日韓に軍隊を駐留させる米国が参加しています。北東アジアの平和に関係するすべての国が一堂に会する唯一の国際協議の枠組みです。六カ国すべてがここで決めたことに責任を負うという点で、二国間交渉ではできない重要な役割を持っています。

 六カ国協議が北朝鮮問題で道理ある解決をみれば、合意の実行を保証する体制が必要になります。将来、北東アジアの平和を保証する国際機関に発展するかどうか―各国の今後の取り組みが注目されます。


北朝鮮核問題の年表

1974年 9月 北朝鮮、国際原子力機関(IAEA)加盟

 85年12月 北朝鮮、核不拡散条約(NPT)加盟

 92年 1月 北朝鮮、IAEA保障措置(核査察)協定締結

    2月 朝鮮半島非核化共同宣言が発効

 93年 2月 IAEA、北朝鮮に特別査察要求

    3月 北朝鮮、NPT脱退宣言(6月に留保)

 94年 6月 カーター元米大統領が訪朝

   10月 米朝枠組み合意に署名

 95年 3月 朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)発足

2000年10月 米朝共同コミュニケ発表

 02年 9月 小泉首相が訪朝。金正日総書記と首脳会談。日朝平壌宣言に署名

   10月 ケリー米国務次官補が訪朝

   12月 北朝鮮、核施設凍結解除宣言

 03年 1月10日    北朝鮮、NPT脱退宣言

    4月23−25日  米朝中3カ国協議(北京)

    8月27−29日  第1回6カ国協議

 04年 2月25日    第2回6カ国協議

    4月19−21日  金正日朝鮮労働党総書記が訪中

    5月12−15日  北京で第1回作業部会

    5月22日    小泉首相が再訪朝。金正日総書記と2度目の首脳会談

    6月21−22日  北京で作業部会

    6月23日    第3回6カ国協議開幕(予定)


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