日本共産党

2004年6月19日(土)「しんぶん赤旗」

超大型店イオンがやってくる

苫小牧(北海道)と泉南(大阪)にみる

まち壊され 商店街のみ込む


 超大型店の出店ラッシュで全国各地の「まち破壊」が進もうとしています。大手スーパーのイオン(岡田元也社長)は、今後三年間に全国二十カ所で、超大型の巨艦店出店計画を持っているといわれています。北海道苫小牧市、大阪府泉南市に現場の実情を追いました。金子豊弘記者


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日用品の買い物は、最寄りの商店が頼りです=北海道苫小牧市

 「いらっしゃいませ」――。店員の元気のいい声に迎えられたのは、苫小牧市に住む千葉幸子さん(65)です。横浜市から移り住んで五年になります。毎日の買い物は、自転車で二、三分の地元商店です。道が凍り付く冬は歩いて出かけます。車のない千葉さんにとって、歩いて買い物ができる商店がなくなると日常生活が大変になります。

駐車3千550台

 流通大手のイオンは、JR苫小牧駅から東に二キロの土地に、店舗面積四万二千五百八十五平方メートルという北海道内最大規模のショッピングセンターを、来年三月に開店する計画です。延べ床面積の八万一千平方メートルは、駅から同市内を走る国道36号までの約八百メートルに並ぶ周辺商店街が、すっぽり入る広さです。出店予定地の周辺住民からは、「交通渋滞が心配」「夜十一時まで営業するため、三千五百五十台の駐車場と四百台の駐輪場が若者のたまり場になる」などの不安の声が上がっています。

 「まちが壊される」と訴えるのは、駅前でかばん屋を営む鎌田国孝さん(65)です。鎌田さんは、前苫小牧市商店街振興組合理事長で、一九九〇年代には地元の商業者の代表として、大型店出店の調整役でした。「百年かかってできたまちが、たった一店の大型店出店のために……」。悔しさで顔がこわばります。

 商店街の人たちは、三日間で十万人の人でにぎわう夏の港まつり、毎年十一月の第一日曜におこなうホッキ(貝)フェスタ、などに資金も人手も出して支えています。このままでは、担い手がいなくなり祭りの開催にも赤信号がともります。

 商店街の移り変わりを知る鎌田さんは、「六〇年代から七〇年代にかけてが商店街のピークだった。それが、生鮮商店がなくなり、靴屋も減った。紳士服店もなくなっていった。その瀬戸際のところにイオンがくる。アメリカに追随して規制緩和した結果だ」といいます。

 歴代の自民党政府は、アメリカの圧力で大型店の出店を調整してきた大店法を緩和し、九八年には廃止を決定。二〇〇〇年に施行された大店立地法は、大手流通資本に地元の住民の声を無視して出店ができるフリーハンドを与えています。

 イオン問題で日本共産党の苫小牧市議団(三人=渡辺満議員団長)は、日本共産党国会議員団が発表した政策提言「大型店の身勝手をゆるさず、地域の商店街・中小商店の値打ちがいきる『まちづくり』ルールの確立を」を持って、駅前商店街を訪問し懇談。「大型店出店にルールをつくれ、という政策に期待している」などの共感の声が寄せられました。

 日本共産党苫小牧地区委員会には、ある商店街の幹部から「共産党の政策は大変いい。この文書を十部もってきてくれ」との電話も入りました。

行政が手助け

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 大型公共事業の失敗を市民に押し付ける形になっているのが、大阪府泉南市の場合です。

 大阪府は、関西国際空港の支援基地として、りんくうタウンをつくりました。しかし、いまでも多くの土地が売れ残っています。そこで、イオンのショッピングセンターを誘致したのです。東京ドーム三個分の敷地(十四万平方メートル)に店舗を建設中。十一月の開店を目指しています。

 イオンは出店にあたり、市内中心部から直結する道路整備を要求しました。地元で「イオン道路」と呼ぶこの道路整備には総額六十五億円がかかります。いまでも五百億円を超す借金を抱える泉南市の負担は三十八億円にのぼります。

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建設中のイオンの超大型ショッピングセンター=大阪府泉南市

 イオン誘致に反対する市民運動が広がる中で、泉南市議会は昨年六月、日本共産党と他会派の共同の力で市提出の道路整備予算を廃案にしました。ところが、向井通彦市長(公明、一部保守系が与党)は市長権限で予算化しました。六十五億円の中には、向井市長が株主になっていた道路予定地の企業にたいする補償費約三十億円も含まれています。

 一方、自民・公明・民主が与党の大阪府(太田房江知事)は、りんくうタウンのイオンへの借地料を一坪(三・三平方メートル)五百円に設定しました。これは、市内の賃借料の半分以下という破格の値段です。

 市内の写真店主(58)は、「地元の商店をつぶす出店に行政が手助けするなんて、もってのほかだ」と憤りを隠さず、こうつづけました。

 「大型店の出店で雇用が生まれるというけど、既存店がつぶれると失業者が出るでしょう。プラスとマイナスで、マイナスの方が大きい。なんでもかんでも規制緩和をすればいいというものではない。ヨーロッパでもアメリカでも規制するものは規制している。国会でも大きな問題にしてほしい」


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