2004年6月18日(金)「しんぶん赤旗」
イラク戦争が世界の平和の焦点となっているなか、アジアでも平和秩序づくりをめざす努力が重ねられています。その一つとして、先月末にマレーシアの首都クアラルンプールで、マレーシア戦略国際問題研究所主催のアジア太平洋円卓会議が行われ、日本共産党の森原公敏国際局次長が出席しました。円卓会議に何をみたか、森原氏に聞きました。
![]() アジア太平洋円卓会議でマレーシア戦略国際問題研究所のソピー理事長(右)と会った森原公敏氏(北原俊文記者撮影) |
―円卓会議参加は二度目ですね。今度の会議で一番強く感じられたことは何でしょう。
現在の国際問題解決の基本は、武力ではなく、平和的な話し合いにあること、それは国連憲章と国連の枠組みをつうじてこそ可能になること、そして地域的な多国間協力、地域協力の発展の方向が強調されたことです。
今では東南アジアの十カ国が加盟している東南アジア諸国連合(ASEAN)は、創立から三十七年の経験を蓄積しています。国際的な紛争も軍事力や圧力をかけることによってではなく平和的に解決するという原理が、ただの合言葉ではなく、具体的に実践に移されており、確信になっている、ということをあらためて感じました。
インドネシア外務省のウィビソノ官房長は、ASEANの発展の基礎として各国が共有しているのは「問題解決の手段としての武力行使を放棄するという意思にある」と強調しました。この発言がASEAN各国の人々だけでなく域外の人々からも歓迎、支持されていたのが印象的でした。
会議主催者のマレーシア戦略国際問題研究所のソピー理事長は会うなり、「あなた方の立場をしっかりアピールしてください。会議の成功のためにも」と歓迎してくれました。野党外交の展開の中で、日本共産党の立場と提案が、理解され、受け入れられているのを実感しました。
―国連の重要性という点では
マレーシアのアブドラ首相が会議二日目に行った基調演説で強調したのが、その国連重視の立場でした。世界は「自国の国益だけでなく、すべての国家と国民の共通の利益を基礎とする国際秩序、地域秩序」を維持することができる、そのために重要なのが「国連憲章の原則」だと指摘していました。
![]() アジア太平洋円卓会議に出席した森原公敏氏=手前(北原俊文撮影) |
そして、国連の役割が不可欠であることを世界に示しているのがイラク問題だといいつつ、その原則からはずれている国があると述べていました。米国を指しているのは明らかでした。
アブドラ首相は、国連憲章第三九条をあげて、問題が起きた場合にどういう措置をとるかを決めるのは国連であり、それ以外にないと強く語っていました。この基調演説が、文字どおり会議の太い流れを定めました。そのことをソピー理事長に話したら、わが意を得たりという表情で、そう受けとめてもらえて大変うれしい、といっていました。
―そのなかで進んでいるのが「東アジア共同体」の話ですね。
日本共産党は、東アジア全体ですすんでいる各国の自主性、多様性を尊重しながら地域の平和確立、経済・文化面での協力を発展させようという「東アジア共同体」構想などの動きの重要性をあげて、日本も「アジアの一員」としてその流れに参加しようと訴えています。会議は、こうした流れがますます大きくなっていることを示しました。
それは、ASEANの枠組みの中でずいぶん進んでいます。昨年十月の首脳会議は、安保、経済、社会文化という三つの柱で二〇二〇年までにASEAN共同体をつくることを確認し、そのうちASEAN安保共同体の構想案をインドネシアとフィリピンが準備することも決めました。ASEANの地域紛争解決の仕組みづくりは、こうした全体の流れと絡み合いながらすすんでいます。
興味深かったのは、シンガポール国際問題研究所のタイ所長が、現在の「東アジア共同体」の構想は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)への失望から生まれてきていると述べたことです。何しろAPECは米国が経済・安保で絶対的な主導権を握っている仕組みですから。
米国との関係をどうするかは、大きな問題です。米国抜きのアジア共同体はないという見方もあります。しかし、その点でソピー氏が、東アジア共同体の目的は反米組織をつくることにあるのではないが、「東アジアにとってどうなのかを決めるのは東アジア諸国だ」といい、「自由と独立ほど尊いものはない」というベトナム解放闘争を指導したホー・チ・ミン主席の言葉をさりげなく引用していたのは感概深かったです。
![]() アジア太平洋円卓会議の全体会議=5月31日、クアラルンプール(北原俊文撮影) |
―北朝鮮の代表も参加していたそうですが。
北朝鮮の軍縮平和研究所の朴副所長は、現在の緊張の原因は米国の先制攻撃戦略だと述べ、他の参加者からは、現在進んでいる六カ国協議への期待が表明されました。東南アジアから見れば、ASEAN加盟国の間で武力紛争が起きることはありえない、いまや東アジア全体の平和と安全にとって、最大の懸念は朝鮮半島ということになる。その点で、安定した北東アジアをどうつくるかということから、六カ国協議の成功、つまり交渉による問題の解決、その先にある地域的な平和の枠組みの構想について真剣な意見の交換がありました。
六カ国協議を北東アジアの安全を論議する場にするという見方は、米国のスカラピーノ・カリフォルニア大学名誉教授も語っていました。そして、日朝国交正常化に向けた両国間の対話と交渉が進めば、北東アジアは大きく変わるし、日本の役割に新しい光が当てられることになる、アジアで米国が果たす役割は今後も不可欠だが、イラク戦争で米国はその信頼性を回復できないほど傷つけている、と語っていました。
アメリカいいなりから抜け出し、国連憲章を踏まえた自主外交に転換し、アジアの一員として地域の平和・安定・繁栄に寄与する日本を構想する日本共産党の立場が、東アジアですすむ流れと共鳴していることを実感しました。
今後、「東アジア・平和への奔流」の共通タイトルで東アジアの平和と安定をめぐる重要な動きを報じます。