日本共産党

2004年6月17日(木)「しんぶん赤旗」

憲法案の最終合意めざす

きょうからEU首脳会議

市民との距離 どう埋めるか


 【パリ=浅田信幸】欧州連合(EU)は十七、十八日、ベルギーのブリュッセルで二十五カ国に拡大後初の首脳会議(欧州理事会)を開き、欧州憲法案の最終的合意をめざします。また、十月末で任期の切れる欧州委員会委員長の後任を指名することも課題です。


 欧州憲法案はEUのあり方や基本理念について、これまでに締結された諸条約を整理し、拡大するEUが一つの機構として機能できるよう改革を盛り込み、大統領や外相ポストが新設される予定です。より目に見える、市民に身近なEUにしようとの意図です。

 欧州憲法には、西欧でたたかいとられてきた基本的諸権利の集大成といえる「基本権憲章」(二〇〇〇年採択)が全文そのまま取り入れられていることが大きな特徴です。

6月に合意めざすと明記

 武力による併合ではなく、対話を通じた国家間の統合をめざし共通する憲法を持とうとする動きは、前例のない歴史的な壮挙といえます。

 他方、欧州憲法には経済の新自由主義路線や競争社会を提唱する内容もあり、左翼や市民運動、労働組合から強い批判の声があげられています。

 最終的合意をめざした昨年末の首脳会議は、機構改革における理事会の決定方式で対立点が解消されず、合意は先送りされました。しかし、現方式の変更に強く反対していたスペインの政権が三月の総選挙で交代し、欧州憲法案採択に前向きに転じたため、同月末の首脳会議では六月に合意達成をめざすことが議長総括で明記されました。

影投げかける議会選挙結果

 憲法合意に近づいたといわれる十四日の外相理事会では、各国外相の間に前日まで行われた欧州議会選挙の結果が影を投げかけました。EU関係者が衝撃を受けているのは、全体の棄権率が54%に達し、議会存立の正当性を疑わせかねない水準に達したことです。

 また、イラク戦争に協力し参戦したことで世論の批判を浴びた政府が軒並み敗北する一方で、スペイン、ギリシャ、ルクセンブルクを除く各国の政府与党が内政問題、とくに年金や社会保障改悪などへの国民の批判で大敗を喫したことも、今後のEUの行方に影響を与えそうです。

 さらに反EUを主張する諸勢力が英国や中東欧諸国で進出、全体として七百三十二議席のうち百議席ほどを占める勢力となったことも注目されています。

 欧州憲法は首脳会議で合意された後、各国で批准手続きを進めることになります。各国指導者は、欧州憲法への世論の支持を得るという困難な課題に直面しています。EUと市民との距離をどう埋めるか―これが今後の大きな課題です。


 EUの理事会と欧州委員会 欧州連合(EU)の政治方針を決める最高決定機関が、各国首脳と欧州委員長で構成する欧州理事会(首脳会議)。各分野の政策決定機関としては閣僚級の理事会があり、外相、財務相、農相の三理事会は毎月開催されます。欧州委員会はEUの執行機関で、理事会などが決定した措置の実施、勧告、意見の作成などが主要な任務です。


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