日本共産党

2004年6月15日(火)「しんぶん赤旗」

音楽CDの還流防止措置

国会審議で明らかになったこと

アジアに限定の基準


 著作権法改正案が全会派の賛成で成立し、アジアからのレコード(音楽CDなど)の還流防止措置がとられることになりました。音楽CDの還流防止措置は、音楽家やレコード会社が求めていたもので、音楽文化の発展に寄与するものです。

 一方、消費者からは、この法改正によって、国内盤に比べて安価な欧米からの輸入盤も規制を受けるのではないかという危ぐが出されていました。衆院文部科学委員会では石井郁子議員が、この問題をさまざまな角度から質問しました。

 アジア諸国で現地製作される日本のCDは、国内盤に比べて極端に安く、日本に逆輸入されると音楽家やレコード会社の権利を圧迫しかねません。これが還流問題です。問題は、それを著作権法改正ですすめた場合、欧米からの洋盤輸入にも適用されるおそれがないかということにありました。

 石井議員は、まず欧米のレコード業界からはどういう意見がよせられているか全米レコード協会の意見書にそってただしました。政府答弁は、意見書は、アジアなど物価が安い国からの並行輸入に関する問題点についてのべたもので、欧米からのレコード輸入が阻害されることはないというものでした。

 次に石井議員は、政府は、これまで欧米からの輸入盤には適用できないと説明してきたが、条文がつくられれば欧米からの洋盤も規制せざるをえなくなる事態が発生するのではないかという問題をとりあげました。

 石井議員は、条文には、「見込まれる利益が不当に害される場合」に限るとあるが、その基準と内容を明らかにすべきだと迫りました。不当に害されたかどうかは、法案には書いてありませんが、政府の運用で対応し、最終的には裁判所の判断にゆだねられます。

 そうなると、政府の運用が立法趣旨にそった適切なものになるかどうかが大事になります。審議を通じて、不当かどうかは、小売価格でなく、定価や卸売価格で計算される著作権使用料と原盤印税=ライセンス料の差で比較されることが明らかになってきました。

 石井議員は、それなら客観的な基準を示すべきだと迫りました。その結果、日本と欧米、アジアでライセンス料の差がどれぐらいあって、どう基準を設けるかが示されたのです。現在のライセンス料の差は、日本を一〇〇とした場合、平均してアメリカ盤で八九・六、イギリス盤で一一九・〇、ドイツ盤で九九・一となっています。他方、香港盤は五五・二、台湾盤は四四・二となっており、アジアと欧米では大きな格差がありました。

 そこで石井議員は、「数値などで一定のガイドラインを示す」ことを求め、政府に「客観的な基準を定め、公表」すること、その数値も、「アジアからの還流防止には適用されるが、欧米には適用できない」ものとして設定させることを確認させたのです。こうして欧米の輸入盤は、還流防止措置の「権利を行使することはできない」と確認されました。

 それでも、欧米のライセンス料が暴落するなどの事態が生じれば、アジアからの還流防止という立法趣旨の前提は崩れます。石井議員はその点も指摘、文部科学大臣がそういう「特別なケース」には、「必要な措置を講ずる」とのべました。

 このように一つ一つ具体的な事実と道理にもとづき審議した結果、アジアからの還流防止措置という立法趣旨にそって、客観的な基準をもって運用することが明らかになりました。今回の措置が音楽文化の発展に資するよう運用させていくことが大切です。

辻慎一 党学術・文化委員会事務局次長


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