日本共産党

2004年6月13日(日)「しんぶん赤旗」

参院有事特での意見陳述

田中自由法曹団平和・有事法対策副本部長

(要旨)

「いつでも戦争可能」宣言


 十一日の参院イラク有事特別委員会で、自由法曹団平和・有事法対策本部の田中隆副本部長がおこなった意見陳述(要旨)は次のとおりです。

 三つの点に絞ってのべさせていただきます。

 第一点は、有事法制が発動される場面と及ぼす影響の問題です。

 政府から有事法制の発動場面が具体的に明示されることはついにありませんでした。発動の可能性が最も高いのは、米軍が北東アジアで軍事行動をとる「周辺事態」に際して、相手方の軍事的行動が(日本への)「武力攻撃事態」あるいは「予測事態」にいたる場面と考えざるを得ません。

 今回の法案は、米軍との一体化を果てしなくすすめ、臨戦態勢を構築していつでも戦争ができると宣言するものです。

 こうした軍事緊張のエスカレートを法制上組み込んだ法律を制定することが、周辺のアジア諸国との関係にもたらす影響をいま一度考えるべきではないでしょうか。

 二点目は、国民保護法制が社会に及ぼす影響の重大性です。

 この法案は、大規模な着上陸攻撃、大規模な空襲が日本の本土に加えられる場合を想定しています。しかし現在の国際情勢からしてこうした事態は考えられません。政府は“絶対ないと言い切れない”として対応体制を組み上げていますが、それはことさら危機や不安をあおることになり、政治の道筋としても危機管理のありようとしても重大な問題をはらんでいます。

 政府は五年計画で都道府県、市町村の実動演習までもっていく計画だと伝えられています。そうなれば、自治体はおろか、地域の町会、自治会、商店会、学校、病院、交通機関、医療機関等をあげて演習にかりたてざるを得なくなります。

 空中楼閣に等しい対応体制を生み出すことが、社会の不安や亀裂を拡大し、社会全体を好戦的な方向に誘導し、政治を誤らせかねません。

 三点目、法案の提出と研究や審議について申し上げます。

 この有事十案件が提出されたのは三月九日、法文だけで四十万字におよぶ膨大なものです。すべての自治体に直接関係する国民保護法案を含め、法案が国民に十分理解され、検討、研究が尽くされたか、率直に言ってはなはだ疑問と考えざるを得ません。

 修正案も、国民保護法案を修正することで、母法というべき武力攻撃事態法を改正するという、通常の法制定の過程では考えられないものです。

 このまま改正されると、武力攻撃事態法は大規模テロという犯罪の領域に属する問題までサポートすることになり、法的には、安全保障と治安の二つの領域にまたがる法制となります。治安の問題と安全保障の問題、さらに自然災害の問題を安易に同じカテゴリーで考えることは重大な誤びゅうと考えざるを得ず、犯罪捜査や災害対策にいたずらな混乱をもたらす危ぐを禁じ得ません。

 全体としてこの法案は重大な問題をはらんでおり、いまだ十分に研究、解明されたと言いがたいものです。採決、成立にいたることに私自身も、自由法曹団としても反対せざるを得ません。また日本弁護士連合会も今回の有事法案に強く反対していることを付け加えます。


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